「マスコミとの付き合い方を教えます」 業界歴約30年のプロが伝授 新刊『PRのススメ』著者インタビュー
OVO [オーヴォ] / 2025年2月7日 12時35分
「売れそうな商品やサービスを開発したけれど、それをどうやって宣伝すればいいの?」「マスコミは敷居が高そうで、PRしたいのだけど、どうすればいいの?」などと悩んでいる企業の経営者は多いのではないか。
交流サイト(SNS)全盛の時代といわれる中、新聞、テレビ、ラジオといった既存のメディアがしっかりとした取材を経て発信するニュースは、情報の信頼性でみれば、まだまだ高い。しかも、新聞、テレビが取り上げることで、ネットニュースにも波及し、拡散されることで、反響も期待できる。
ただ、広告代理店などとの取引ができる大企業は別として、それ以外の企業にとっては、どのようにマスコミにアプローチしていいのか、なかなか方法が思い浮かばない。
その具体的な解決策を、PR業界歴約30年の阿部重郎プレイブ代表取締役がこのほど刊行した『PRのススメ―小さな会社こそ、社長が広報をしよう』(自由国民社、税込み1760円)で解説した。阿部さんに新著に込めた思いを聞いた。
▼「ノウハウを伝えたい」
——そもそもPRとは何ですか。
「PR業界で仕事をして、約30年になります。この間に得た経験、知識などを基にパブリシティーについてのノウハウを伝えたいと思いました。では、パブリシティーとは何か。それは、新聞、テレビ、ラジオなどのマスコミに対し、お客さまの商品やサービスなどの情報を提供し〝無料〟で記事やコンテンツにしてもらうという宣伝手法といえます。記事化されたり、テレビで取り上げられたりすることで、顧客企業の売り上げアップに貢献するとともに、ブランド価値の向上につながります」
——書籍化の狙いは。
「パブリシティーとは『マスコミに情報提供して、お金を払わずに無料で取り上げてもらう』ことですが、長年、この業界に身を置いて、周りを見渡すと、パブリシティーについて、わかりやすく、深掘りした本があまりないと感じ、それでは自分が書いてみようと思いました」
——無料で取り上げてもらえるということは企業にとってはすごくメリットが大きいと思いますが、そんな中でも難しさはありますか。
「もちろん、ありますね。お客さまからいただいた情報をあれこれと工夫しながら提供しても、メディアがほとんど取り上げてくれないことがあるからです。正直に言えば、私がこれまで携わってきた商品やサービスでも、ちょっと取り上げてもらえなさそうだ、難しそうだ、という案件はありました」
「当然のことですが、企業の担当者の方は自社の商品、サービスをものすごくいいものだとプライドをお持ちです。ただ、そのプライドがあることにより、客観的に商品、サービスを見ることができないこともあります。私たちが客観的に見たときに、あまりニュース性が高くなさそうだ、マスコミの方が取り上げなさそうだ、といった場合も出てきます。そのような時は、申し訳ないのですが、お引き受けを断ることもあります」
▼「3億円以上の価値に」
——パブリシティーの面白さはどんなところにありますか。
「私たちのアイデア一つで、とても多くのメディアに取り上げてもらえる可能性があるところです。以前、アベノミクスの効果で、日経平均株価(225種)が上昇したというニュースが連日報道されたとき、ある立ち食いずしチェーン店企業のPRの仕事をいただきまた。株価が上がった翌日には、中トロを『30人にプレゼントします』という企画を顧客に提案し、実施していただきました」
「『株価上昇で中トロプレゼント企画』を打ち出したときは、テレビ計20番組以上で紹介をしていただきました。広告価値に換算しますと、3億円以上の価値がありました。そういうアイデアを考え、提案し、顧客に採用いただき、実施する。その結果、マスコミにさまざまな形で取り上げられる可能性があるところ、ここが一番面白いです」
——このほか、うまくいった商品、サービスを教えてください。
「シリコーン製の傘専用アクセサリー『レインポップ』は印象に残っています。これは、傘の柄の先端に装着し、どこでも引っかけることができるというグッズです。ユニークな新商品として、ある年の11月初旬から動き出しましたが、翌年2月まで、テレビには取り上げてもらえませんでした。ところが日経MJで3月初旬、記事化され、その後は大手新聞、テレビなどに次々と紹介されていきました。今から振り返ると、ユニークな新商品という切り口ではなく、梅雨時期前のレイングッズ特集の一つとして注目されたのでは、と思います。この商品は2011年の発売から5年間で累計100万個を販売しました」
——企画を考える上で、どんなことを心がけていますか。
「一生懸命に企画を考えても、メディアに取り上げられないときもあります。なぜ、取り上げられなかったかを常に振り返るようにしています。孫子の兵法ではありませんが『敵を知り己を知れば・・・』にならい、日頃からメディアをよく見ておくことが大事ではないでしょうか。メディア側はどういうニュースを好むのかを知ることが不可欠です。新聞の場合、なぜこの記事は1面に掲載されるのだろうとか、なぜヤフートピックスに取り上げられているのかなど、そういう観点でニュースを見る癖をつけるようにしています」
▼「PR業界の人には読んでほしくない(笑)」
——「PRのススメ」では、プレスリリースの書き方などが具体的に説明してありました。リリースの書き方のコツを教えてください。
「リリースのタイトルが最も重要となります。マスコミの方には、1日何百通、何千通というニュースリリースがいろいろな企業・団体から届きます。そのような中、記者の多くは、リリースのタイトルしかほとんど見ていないのが実情です。ですので、リリースのタイトルを短く書くこと、これがコツの一つになります」
「『ニュースは一言で』と言われています。ヤフートピックスは15.5文字以内ですし、あるテレビ局の廊下を歩いていますと、テロップは16文字以内にしようっていう張り紙を見かけることがありました。つまり、『ニュースは一言で』というセオリーはマスコミの方は留意されていますので、リリースはいかにタイトルを短くして、情報が伝えられるかを最優先に考えて、書くべきだと思います」
——新著をどんな方に読んでもらいたいですか。
「これまでパブリシティーを試みたことがない全国の中小企業の社長さん、そして、企業のPR宣伝担当の方に読んでほしい。PR関連の同業他社の人からは、『阿部、そこまでノウハウを話しちゃったんだ』と怒られそうですので、業界の人にはあまり読んでほしくないですね(笑)」
——代表取締役をされている、「プレイブ」はどんな会社ですか。
「弊社はパブリシティーを得意とする会社になります。ご存じのように、PR会社にも機能別でみて、いろいろあります。専門系のPR会社と総合系のPR会社に大別できます。専門系は医療、化粧品、映画、ファッション、自動車などの分野を得意とします。弊社はそれら以外を扱う、総合系のPR会社になります」
—— PR会社を選ぶポイントは。
「PRという言葉は、広い概念です。そこに広告が含まれているとかいないとか、TikTok、YouTube、InstagramなどSNSで、インフルエンサーに情報提供をして取り上げてもらうこともPRに含まれます。そのような中で、中小企業の経営者であれば、ご自分がどういうPRをしたいのかをまず、考えていただきたいと思います。新聞、テレビなどのマスコミに取り上げてもらいたいのであれば、そのパブリシティーをやっている会社をホームページなどで探し、お願いすることになります」
——読者に向けてメッセージをいただけますか。
「パブリシティーは、自分がマスコミに情報を提供して、マスコミの方がニュース価値を判断して取り上げてもらうという活動になります。顧客に企画を提案し、実施したらとても反響があった、売り上げが伸びたという成功体験は、わくわくドキドキ、とても楽しいものだといえます。ですので、1人でも多くの方にそのパブリシティーの楽しさを知っていただければと思います」
【著者プロフィル】あべ・しげお
PR 会社「プレイブ株式会社」代表取締役。1972年生まれ、新潟県出身。㈱オズマピーアールに入社。3 年後に共同ピーアール㈱に転職。計12年間、大手PR会社で経験を積む。2007年に独立し、プレイブ株式会社を立ち上げた。これまでの顧客は、本田技研工業、住友ゴム工業、明治、りそな銀行など500社を超える。
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