コロナ禍の東京2020大会で新たに生まれたボランティアの役割って?
パラサポWEB / 2022年6月29日 8時32分
「マスク越しでも笑顔が感じられた」と海外選手から感謝の声が上がった東京2020大会のボランティア。新型コロナウイルス感染症の拡大により、大きな影響を受けたのは言うまでもないが、一部無観客の大会でボランティアはどんな役割を見出したのか。大会組織委員会でボランティアのコンセプトや教材づくりに取り組んだ文教大学人間科学部・二宮雅也教授(日本財団ボランティアセンター参与)のコメントを交えて振り返りたい。
無観客開催により役割を失ったボランティアも東京2020大会が新型コロナ流行の影響で1年延期になり、参加を辞退したボランティアが続出しただけでなく、多くのボランティアがいろんな形で活動の変更を余儀なくされた。
もちろん国内にも参加を見送った人は少なくない。昨年末、日本財団ボランティアサポートセンター(現:日本財団ボランティアセンター、日本財団ボラセン)が発表した「東京2020大会 大会ボランティア、 都市ボランティアに関するアンケート調査結果」によると、ボランティアに参加しなかった人の中には「活動自体がなくなった」「役割や会場が変更になった後、活動日についての連絡がなかった」と回答する人もいた。これも残念だったと言わざるを得ない。
また、調査結果からも新型コロナによる混乱が読み取れる。大会ボランティア(※)は「案内」「式典」「運転など移動サポート」などの部門にわけられるが、とくに観客や選手がケガなどをした場合に搬送サポートをする「ヘルスケア」について、アンケートでの満足度も低かったという。配置転換により、実際には別の役割を担当したボランティアが多かったからだ。
※東京2020大会のボランティアは、大会組織委員会が運営主体である「大会ボランティア」、関係自治体が運営する「都市ボランティア」に分けられた。
さらに、大会直前の2021年7月に行ったアンケートでは、ボランティアの6割程度が活動することを不安に思っていることがわかった。背景には、当時のメディアからの批判などもあった。
そんななかで開幕を迎えた東京大会。オリンピックもパラリンピックも日本代表選手団が大活躍したこともあり、大会は盛り上がりを見せていく。
ここでは、各都市、各会場で存在感を見せたボランティアの活動のうち、コロナ禍ならではの取り組みを紹介したい。
小学生が育てたアサガオのケア
パラサポWEB取材班も会場で見かけたのが、アサガオの水やりをしているボランティアだ。すべての競技会場をアサガオで彩るフラワーレーンプロジェクトには約300校の小学生が参加。その一つひとつに添えられたメッセージカードが大会中、選手や関係者を元気づけた。ボランティアは、そのアサガオが太陽の光を浴びられるよう、小まめに鉢の場所を入れ替えたり、雨風をしのげる場所に鉢を非難させたりしていたという。
東京大会では新型コロナ対策として、ゴールボールなどの球技では試合前後や試合中にコート外に出たボールを消毒する必要もあった。ボランティア自身も感染しないように手袋をするなど工夫しながら進められた。
来日した選手たちを空港でもてなす――過去のオリンピック・パラリンピックでよく目にした光景だ。しかし、これまで当たり前だったことも、コロナ禍では難しかった。そこで、海外選手が来日したり出国したりする際、画面の中にボランティアに入ってもらい、選手たちと遠隔で交流するという取り組みが生まれた。
写真のような遠隔で操作できるロボット2体を成田空港に配置し、ロボットの顔の上にあるカメラが選手を認識。その後、オンライン会議システム(zoom)でつないだ画面の中にいるボランティアと交流するという仕組みだ。
成田空港で行った活動の様子 🄫The Nippon Foundation Volunteer Center約70,000 人(うちパラリンピックは24,514人)の大会ボランティア、約12,000人の都市ボランティアが参加した東京大会。
コロナ禍で限定的にならざるを得なかった活動があった中、振り返れば様々な交流があった。
一方、ボランティアからは役割や待遇について不満の声も挙がり、満足感の得られる活動内容を構築できなかった反省点もある。
ボラセンでは、東京大会で活躍したボランティアが、今後も様々なボランティア活動に参加できるよう、障がいのある方も含めてみんなが参加しやすいボランティア環境をつくっていく活動を進めているという。
東京大会に続き、コロナ禍で開催された北京冬季大会でもその活躍が絶賛されたボランティア。これからも世界規模のスポーツ大会で存在感を発揮することだろう。
※本記事は、「第39回パラリンピック研究会ワークショップ 東京2020大会を支えたボランティアの様相」より構成しました。
text by TEAM A
key visual by Takashi Okui
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