メダリスト、二刀流……パラスポーツ界の実力者たちが参戦! 自転車ロード・全日本選手権
パラサポWEB / 2022年7月1日 7時31分
6月23日から26日まで開催された、自転車競技・ロードレースの全日本選手権大会。前回の全日本に続き、広島空港に隣接する中央森林公園サイクリングコースを舞台に開催された。
同時開催の「2022全日本パラサイクリング選手権・ロード大会」は24日、個人タイムトライアル(12km)が行われ、各カテゴリーの日本一を争った。
実力者の藤田がライバル対決を制す13人が出走したパラサイクリングは、男子C1-5(自転車競技)の藤田征樹(C3)が一番手でスタートしてそのまま先頭を譲ることなく、一番でフィニッシュした。
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時折、強い風が吹いたが、ベテランは落ち着いていた。大粒の雨が降ったり、太陽が照りつけたり、12㎞を走る中で天気も目まぐるしく変化。「雨は少しひやっとしたが、路面が濡れる前に止んでくれたので、影響はなかった」と振り返り、昨年からタイムを約16秒短縮する18分34秒29でフィニッシュ。難コースのポイントを暗記して挑んだだけに、「もう少しタイムを伸ばしたかった思いはある」と悔しさをのぞかせた。
それでも、右足一本で自転車を漕ぐ川本翔大との勝負に勝ち、連覇したことに話が及ぶと、笑顔が広がった。「勝負に勝つことが今大会で大事なことだった。川本選手のタイムもよく、(係数をかけたタイムでは)僅かな差だったけれど、2連覇できてうれしいです」
勝負にこだわるのは、7月のワールドカップ、8月の世界選手権を見据えているからだ。
「世界戦のロードレースでは最後のスプリント勝負でヨーロッパ勢に負けている。メダルに絡めるよう準備をしたい」と力を込めた。
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さらに、東京パラリンピックのロードで2つの金メダルを獲得した杉浦佳子(C3)も、“パラサイクリングの顔”として自身の進化をアピール。昨年からタイムを約54秒縮め、連覇を「5」まで伸ばした。
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国内では敵なしの杉浦だが、フィニッシュ後、「怖かったよー-!」と叫び、正直な気持ちを吐露した。
中央森林公園のコースは、アップダウンに富み、道幅も狭く急カーブもあるテクニカルなコースだ。そのため、コーナーでもスピードをいかに落とさずに走るかがタイム短縮のカギとなる。
前日に試走したコースレイアウトを頭に浮かべ、恐怖と戦いながら難コースを攻め終えた安ど感は相当なものだったに違いない。
「コーチに言われていたことをコンプリートできた。タイムを見たコーチに『よしっ』と言ってもらい、練習の成果がタイムに現れたことが自分としてもうれしいです」
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新しいタイムトライアル用バイクに慣れる目的もあった今大会を笑顔で終え、8月の世界選手権(ポルトガル)に向ける準備は順調に進んでいるように見えた。
活況を見せたハンドサイクルカテゴリーそして今回、藤田と杉浦が手放しで喜んだのが、ハンドサイクルに乗る、下肢に障がいのある選手たちの参戦だ。日本はパラリンピックでメダルこそ獲得しているが、パラサイクリングはマイナー競技。車いすラグビーのリオパラリンピック銅メダリスト・官野一彦(H2)、東京パラリンピックで2個の金メダルを獲得した陸上競技の佐藤友祈(H2)ら実績のある選手が出場し、活気あふれる大会になった。
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「機材を揃えなければできない競技だが、(ハンドサイクル以外のカテゴリーも含めて)興味を持った人はぜひ挑戦してほしい。今大会はいろんなバックグラウンドの選手が参加してくれてうれしかった」と藤田も話すほどだ。
そのハンドサイクルカテゴリーは障がいの程度によりH1~H5に分けられるが、今回はその程度により係数が加算されたタイムで優勝を争った。
出走は4人。前回優勝の田中祥隆(H3)を抑え、ハンドサイクルカテゴリーを制したのは、パラリンピックのマラソンで3度入賞の実績を誇る洞ノ上浩太(H5)だった。
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車いすマラソン歴20年の洞ノ上は、約12年前にクロストレーニング用の機材としてハンドサイクルを購入した。H5は障がいの軽いクラスで腹筋や背筋も使って漕ぐ。海外の有名選手が乗る、体を起こした状態で乗るタイプは日本ではほぼ見ないが、バイクトレーニングを始めたころから(陸上競技の)車いすレーサーと同じように正座をした状態で座るタイプを使用しているそうだ。
陸上競技ではタイヤを駆動させるためのプッシュする動作が主だが、その際に使う背中の筋肉を刺激することができ、クロストレーニングに効果的だと洞ノ上は言う。さらに、心拍数を鍛えられる上、レーサーでは感じられない速度を出すこともできる。
長く陸上競技のためにハンドバイクに乗ってきた洞ノ上。しかし、今年は本大会を含め3レースに出場している。理由を聞くと、パリは(陸上競技と自転車の)2つで狙っていく、というのだ。
7月には自転車では初めての国際大会出場を予定している。
「全日本のレースは、タイムには満足していないが、エネルギー切れを起こすことなく、最後まで走れたのはよかったかな。でも、国内にとどまっているばかりでは速くなれない。世界に出ていき、ハンドサイクルのポジションなど数字だけでは見えないものを学んで帰ってきたい」
今大会の優勝を弾みに、国際大会に向かう。
佐藤も二刀流を表明同じ陸上競技から、トラック種目の金メダリストで、パリパラリンピック連覇を狙う佐藤の参戦も、関係者を驚かせた。
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初レースは3位。陸上競技シーズンの最中だが、約20回ハンドサイクルに乗り、「二刀流」の新しいキャリアをスタートさせた。
「アップダウンのある山道のコースは初めての経験。コースに対応したギアチェンジなどの操作がまだまだ(スムーズではなかった)。たくさん乗ることで慣れていけば、いいタイム出せるのではないかという感覚がある」と手ごたえを口にした。
やるからには金メダルを目指すのが佐藤のモットーだ。優勝者に与えられるジャージを見て「かっこいいと思った。来年は獲りに行く」とコメント。この日をスタート地点とし、一つずつ、階段を上っていく。
text by Asuka Senaga
photo by X-1
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