開催国・日本がメダル10個を獲得したパラバドミントン世界選手権。東京パラからつなげるムーブメント
パラサポWEB / 2022年11月9日 7時30分
2年に1度開催されるパラバドミントンの世界選手権「ヒューリック・ダイハツ BWFパラバドミントン世界選手権2022」が11月1日から6日間にわたって開催された。会場となった東京・国立代々木競技場第一体育館は昨年、東京2020パラリンピックで同競技がパラリンピックデビューした記念すべき舞台。無観客だった東京大会と違って有観客で開催されるとあって、今回の世界選手権を選手たちも心待ちにしていた。
22種目で世界チャンピオンを争った今大会は、世界52の国と地域から、298選手が参加。15人が13種目に出場した日本代表は3個の金メダルを含む10個のメダルを獲得した。「予想の範囲の結果」とは、日本パラバドミントン連盟の平野一美理事長。いよいよ来年からパリ2024パラリンピック出場権をかけたポイントレースが始まる。今大会の結果を弾みに「ひとりでも多くの日本代表をパリに送り込みたい」と意気込んだ。
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東京大会以降、パラリンピック競技として国内で初めて開催された世界選手権。入場料は無料で、都民を対象に初心者向け解説付観戦招待を行うなどの取り組みがあった。パラバドミントンには多数の障がいクラスがあり、クラスや個々の障がいによってさまざまな戦略の違いがある。その戦い方を知ることで観戦をより楽しむことができるため、まずはルールや選手などの基本を知ってもらい、次の観戦機会につなげたいという狙いだろう。解説はパラリンピック銀メダリストが担当し、イヤホンを通じて解説を聞きながら観戦した人から「わかりやすい」と好評だった。
また、平日を中心に、学校単位による観戦プロジェクトも実施。6日間を通じて、小中高計45校に通う約3000人が生観戦した。
八王子市の中学校のバドミントン部一行は、最もハイレベルな男子SU5シングルスの試合を観戦。中学2年の女子生徒は「いつも私はバックハンドでレシーブをしていたけれど、バックハンドでアタックをしている選手を見て勉強になった」と話してくれた。
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バドミントンは東京パラリンピックで9個のメダルを獲得し、比較的多く報道されていた印象で、東京大会以降、パラスポーツに興味を持つようになった新たなファンが応援に訪れると期待したが、大会を通じて最大収容人数12,934人の体育館の一般観客席は空席が目立った。
大会実行委員長の平野理事長は、こう説明する。
「私たちの努力が足りないのはわかっているが、大会運営で時間や資金、人が取られる中、観客を増やそうというところまで手が回らないのが実情」
同様の事情は他の競技団体からもよく聞くこと。それでも、「すべてパーフェクトにはいかないが、(パラスポーツの国際大会を)まず開催することが大事。(日本開催を)ぜひ広げてもらいたい」と呼びかけた。
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なお、車いす席で観戦していた、都内在住の車いすバスケットボール選手は「これまでパラスポーツの会場には家族や関係者しかいなかった。東京大会以降、全体的に観客が増えたように感じる」とコメント。さまざまなハードルはあるにせよ、パラスポーツ普及の観点において、日本で国際大会が行われる意義はあるといえそうだ。
東京パラリンピックと同じ3個の金メダル日本選手の活躍に話を戻そう。男子シングルスでは東京パラリンピックで金メダルを獲得した梶原大暉、里見紗李奈らが順当に勝ち上がり、大会を最終日まで盛り上げた。
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シングルス2連覇となった里見(WH1)も、初優勝の梶原(WH2)も、決勝でストレート勝ち。報道エリアで「プレッシャーから解放されてほっとした」(里見)、「(今シーズン負け知らずで)いつ負けるか不安で少しつらかった」(梶原)と振り返り、それぞれ重圧と戦っていたことを明かした。
なお里見は続く山崎悠麻とのダブルスでトルコとベルギーの選手のペアに快勝。単複2冠に輝き、表彰台ではとびきりの笑顔を見せた。
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女子ダブルス(WH1-WH2)は予選から攻撃的なローテーションに挑戦する姿勢を見せて相手を惑わせた。準決勝の韓国ペアとの対戦では、1ゲームを先取した後、WH1の里見が集中的に狙われて苦しい展開に。珍しく「気持ちがぐっと落ちた」と明かした。
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そんなときに力になったのが観客席の「ゆまさり」コール。里見にとって、すぐ隣の山崎からの掛け声と応援の声はそのまま前を向く原動力になった。
「ひとりで立て直すことは難しかった。応援の声が心強かった」と里見。ホームアドバンテージを活かして勝ち進んだ。
ペアの山崎は、大会中に右肩を痛めてシングルスは不本意なベスト4に終わったが、ダブルスでは気持ちを切り替え世界選手権で自身初となる金メダル獲得。「観客席がにぎやかで、本当に楽しかった。(本来であれば)東京パラでこの応援がもらえたと思うと残念だと感じるくらい、ありがたかった」と応援に感謝した。
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また、女子シングルス(SL4)の藤野遼は、東京パラリンピック5位の悔しさを胸に今大会に臨んだ。決勝でノルウェー選手に1―2で敗れたが「やりきった」と清々しい表情を見せ、強化してきたフットワークに自信をつけた。
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東京パラリンピックに出場していない選手も躍動した。男子シングルス(WH1)では、初出場の西村啓汰が世界ランキング2位の長身のドイツ選手を退け、ベスト4入り。2013年の優勝以来、ファイナルから遠ざかっていた女子シングルス(SU5)の豊田まみ子は準優勝し、カムバックを印象付けた。
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今大会を盛り上げた大学生たちの存在も忘れてはならない。大会を通して複数の大学の応援団とチアリーダーが入れ替わり客席に入り、来場者がハリセンで手拍子しやすいように音頭をとった。2019年の東京2020テストイベントで渋谷区が大学応援団の催しを主催する団体に声をかけたのがきっかけで、今大会も実現。週末のメダルマッチで応援を担当した、亜細亜学園体育会應援指導部の牛山菜乃葉主将の「観客の人数に関係なく、盛り上げるのが私たちの役割」という言葉通り、観客は少なくとも会場には一体感が生まれていた。事実、先述した「ゆまさり」コールは日本選手を後押しした。
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text by Asuka Senaga
photo by X-1
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