根っからのアウトドア派! パラアルペンスキー金メダリストの本格キャンプに潜入!
パラサポWEB / 2022年11月18日 7時0分
雄大な白銀の大パノラマを一望しながら、高速で斜面を滑り降りる――そんなパラアルペンスキーの世界でパラリンピックの金メダルを3個獲得しているのが狩野亮選手です。プライベートでも自然の中で過ごすことが大好きだという狩野選手。「キャンプが趣味」という噂を聞きつけた編集部は、北海道の人気スポットで自然を満喫する金メダリストのキャンプに潜入! 車いすアスリートのリフレッシュ方法を覗いてきました!
狩野 亮(かのう・あきら)|アルペンスキーアルペンスキーで5大会連続パラリンピックに出場。2010年のバンクーバー冬季大会(スーパー大回転)、2014年のソチ冬季大会(滑降・スーパー大回転)金メダリスト。2022-23シーズンより日本代表を退き、楽しみでスキーを続けながら、競技の普及活動に邁進する。
――北海道の有名な観光地としても知られる支笏湖畔。美笛キャンプ場はロケーションが最高なキャンプ場ですね。キャンプにはよく行くのですか?
狩野亮選手(以下、狩野):以前は、毎年2回くらいキャンプをしていましたね。でも、約3年前に子どもが生まれてからはお休みしていたので、今回が久しぶりです。
アクセスがよく、雄大な自然を感じられる抜群のロケーションです――アルペンスキーは自然を相手にするスポーツですが、狩野選手はシーズンオフも自然の中で過ごすのがお好きなんですね。
狩野:はい。僕は北海道網走市出身なんですが、実家には釣り竿もあって、知床で釣りをしたりもします。子どもの頃からアウトドア派ですね。自然の中って自由を感じますけど、車いす生活だとよりそれを感じられるんじゃないかな。
狩野選手がキャンプ場を選ぶときに重要視しているのは、車を横づけできることだそうです。美笛キャンプ場はバリアフリートイレもありました――さすがは海外を転戦してきたパラスキーヤー! アクティブですね。とはいえ、日本のキャンプ場とか観光地とかで、車いすユーザーに遭遇する機会ってまだまだ少ないような……。
狩野:確かに、僕もキャンプ場で車いすユーザーを見かけることはめったにないかな。競技でさまざまな国に行って学んだことなんですが、時と場合によっては人の手を借りるといいと思うんです。例えば釣りでボートに乗るときは、人の手を借りなきゃ乗れませんから。
テントの組み立ては、妻・みどりさんを狩野選手がサポート。協力し合って約30分で完成! 狩野選手だけでもできないし、みどりさんだけでも組み立てできません――キャンプ歴は長いんですか?
狩野:幼い頃は、両親と兄、それから近所の人とキャンプに行きましたね。僕は小学3年生で事故に遭い、小学5年生でチェアスキーに出会って、その後の約18年、海外を転戦する生活。しばらくキャンプからは離れていましたが、スキーでニュージーランドに行ったときに、ワーキングホリデー中だった妻のみどりと出会いました。妻も1歳から登山をしていたというほどの山好きで。それがきっかけでキャンプを再開したんです。
――印象に残っているキャンプを教えてください!
鳥の声を聴いたり、湖に流れる静かな水の音に耳を澄ませたり、非日常を味わえるからリフレッシュしたい人にもオススメです狩野:僕は2010年と2014年のパラリンピックで金メダルを獲り、2018年の平昌大会では3連覇を目指していたのですが、かないませんでした。でも「走り切った!」という達成感を強く感じたんです。そのため、このあたりで一度ゆっくり休もうと、平昌大会後、2週間かけて、美瑛、富良野、阿寒湖、帯広などを巡りました。倶知安の旭ヶ丘総合公園キャンプ場では、朝起きたら目の前に羊蹄山が広がっていて。北海道の大自然を全身で感じたことでリフレッシュし、また走り出そうという気持ちになれました。
――オススメの過ごし方は?
狩野:ご当地のものを食べたりするのが楽しかったですね。妻も、山菜を採りに行ったりしていましたよ。キャンプは時間の使い方が自由です。自然の中で遊ぶのもいいですし、珈琲を飲んでぼーっと物思いにふけるものいいですよね。
3歳の息子は初キャンプ! 以前、狩野選手がキャンプで隣り合わせになった「友人」と水鉄砲で遊んでいました――ストイックなイメージの狩野選手の違った一面が垣間見られました。
荷物を車に取りに行く狩野選手。料理も、準備も、率先してやるそうです――ところで、狩野選手にとってキャンプに欠かせない必需品ってありますか?
狩野:ありますよ。「おいしい食事」です。今日のメインのジンギスカンは、前日から仕込んできました。隠し味に、リンゴやメープルを入れています。焼肉のたれは妻の手作りです。
――そんなわけで食事の準備開始。率先して、玉ねぎを切り、ナスを切る狩野選手。競技で鍛えた上腕三頭筋(!)で火起こしもしていました。
普段は、和食が多いという狩野家。「主人は魚介担当かな。いつも協力し合って食事を作っています」とはみどりさん――ジンギスカンとソーセージに加え、ナス、玉ねぎ、アスパラも焼きます。畑で採れたばかりの山わさびも登場し、おいしい食事を囲んで話も弾みます。
自然の中で炭火焼なんて贅沢です。ジンギスカンも「甘くて美味しい」と大好評でした この日、キャンプデビューした息子もたくさん食べました――話題は、多岐にわたります。狩野選手の父親が公務員を早期退職して蕎麦屋を経営していること、熟練のキャンプ仲間と出会った思い出話、そして8歳で事故に遭ったときのこと……。キャンプ場での時間は、ゆっくりと流れます。
次第にスキーの話題に。キャンプで出会った友人は「テレビで特集されていて驚きました」狩野:自然の中にいると落ち着くんです。
――狩野選手のキャンプはバンガローに泊まるわけではなく、テントに泊まる本格派。車いすでどうやって泊まるのでしょう?
大きなテントだから、車いすの移乗もテントの下で行うことができるんです狩野:僕は普段からうつ伏せで寝るんですが、地面が硬いと褥そう(床ずれ)になる恐れがあるので、とにかくマットをたくさん敷いた上で寝袋を使います。
ここでアスリートがよく遠征に持っていくマットレスが登場。蛇腹に折りたためるマットも車に積みやすくて便利です狩野:日が落ちたら就寝して、朝も早起き。ゆっくり楽しめます。実は明日も、車で他の場所に移動して、友人家族とキャンプをします! いろいろなロケーションが楽しめる北海道は最高ですね。
朝起きてからテントの外の景色を眺めるのもキャンプの醍醐味です競技中とはまるで違う、息子を優しく見守る父親の表情を見せつつ、パラリンピックについて穏やかな話しぶりで振り返った狩野選手。日本代表を退いたから今だからこそ、金メダリストとして長く背負っていたプレッシャーを垣間見たような気がします。狩野選手、これからもアウトドアの楽しさを伝えていってくださいね!
text by TEAM A
photo by Hiroaki Yoda
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