国枝慎吾と中西麻耶が、楽しみながらチャレンジする大切さを伝授!
パラサポWEB / 2022年11月24日 17時30分
トップパラアスリートとリアルで交流する貴重な機会が実現した。スポーツ日和となった11月12日、トップアスリートとともに競技にチャレンジできる「第1回 +CHALLENGEイベント」が開催。参加パラアスリートは、車いすテニスの国枝慎吾と、陸上競技の中西麻耶。車いすユーザーなど障がいのある約10人を含む計68人(中学生以下34人、高校生以上34人)と観覧者が千葉県柏市の吉田記念テニス研修センターに集まり、ともに楽しんだ。
国枝と中西の登場に興奮!「+CHALLENGEイベント」は、国枝&中西と、堀米雄斗(スケートボード)、野中生萌(スポーツクライミング)の4選手が、NECとともに立ち上げた共同プロジェクト「NEC+CHALLENGE PROJECT」の一環として開催されたもので、この日は、国枝と中西のパラリンピアンコンビが登場した。
会場となった吉田記念テニス研修センターは、国枝をはじめ国内のトップ車いすテニスプレーヤーを多数輩出している名門テニスクラブ。開閉会式と車いすテニスの競技体験場となった屋根付きコートは、イベント開催前から参加者とその付き添いの保護者らの熱気でむんむん。国枝と中西が登場すると、拍手と笑顔でいっぱいになった。
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参加者は競技経験を問わず広く集まったのだが、場所柄なのか、日ごろ、テニスをしている人たちも多かった様子。テニス経験者はやはり国枝や車いすテニスに興味津々で、イベントの冒頭に設けられた子ども対象の質問コーナーでは、「(車いすテニス世界マスターズを史上最年少16歳で制した)小田凱人選手についてどう思いますか」など、車いすテニスを知っているからこその質問が飛び出したのには驚かされた。
一方、テレビなどのメディアに登場することもある中西も、笑顔と軽妙なトークで会場を沸かせ、参加者を一気にイベントに引き込む。イベントの合間には、参加者たちがサインや写真撮影を求めて国枝と中西の前にずらりと並んだ様子からも、2人がパラと健常という枠を超えた存在になっていることが十二分にうかがえた。
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競技体験は、車いすテニスと陸上の2本立てで行われ、参加者は2グループに分かれて、それぞれの競技を約1時間ずつ楽しんだ。
車いすテニス体験では、車いすに乗り、まっすぐ漕いでターンするというチェアワークの基本練習からスタート。これはすんなりできた人が多かったが、次のステップとして片手でラケットを持ちながら漕ぐ段階になると途端に難しくなったようで、なかなか前に進まない人が続出。
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「テニスラケットは親指以外の4本の指で持ちます。親指とラケットのグリップのヘリを使いながら車いすを漕ぐといいですよ」「ボールを打つことを考えると、リムを触る回数はできるだけ少なくし(て、ラケットを持つ手が自由に使えるようにし)た方がいいです。僕は体のひねりだけで進みます」など、国枝が説明しながら華麗なチェアワークを披露。これだけでもいかにトップ選手が練習を積み重ねているかがよくわかる。
さらに、「ラケットを持って車いすを漕ぎながらボールを打ち返す」となると、至難の業だ。まず、ボールを打ち返すための適切な位置に車いすを動かすことが難しい。なんとかボールをラケットに当ててもコントロールするには至らず、あっちこっちに飛んで行ってしまう。「定位置から前進して、出てきたボールを打つ。定位置に戻り、もう一度、前進して打つ」という練習では、国枝から「戻るときは相手を見ながら」といったアドバイスが飛んでいたが、車いすを漕ぐこととボールを打ち返すことで精いっぱいの人がほとんど。大人の参加者から「とくに2本目が難しー!」という叫びのような、でも楽し気な声が聞こえてきた。パラスポーツのイベントサポートなどをしている上智大学4年の斎藤ましろさんは、「自分でプレーするのは初めてで、こんなに難しいものなのかと。でも、周りの方たちに聞いたりしながらなんとかできるようにしていく過程も含めて楽しかった」と目を輝かせていた。
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先の試合でひじを痛めたため、この日はボールを打たない予定だった国枝が、お手本を披露する場面もあった。キレのあるチェワークと鋭く力強い打球はさすがだった。
「体験することで、車いすテニスの難しさや面白さを知っていただけたのではないでしょうか。ぜひ今後も車いすテニスに注目していただけるとうれしいです」という国枝の言葉で締めくくられた。
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テニスコートの隣の芝生広場では、中西による走り方教室が行われた。
「体を思い通りに動かせるようになるために、頭も使うメニューをします。頭も体も疲れますよ」(中西)
との言葉に、参加者の期待が高まるのが感じられる。
メニューは、3~4チームに分かれてのチーム戦形式で行われた。
一つ目と二つ目は、地面に並べたフープを使ったゲームだ。フープの中を両足でジャンプしながら進んだり、フープの中に置かれたテニスボールを順番に移動させたり。普段はなかなか行わないような動きをしているようで、息があがりがちな参加者もちらほら。車いすユーザーは、フープの横を移動してゲームに参加。お互いに応援しながら競い合うことで、自然とチームに一体感が生まれていく。
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三つめは、4個×5列に並べられた5色のコーンの順番を入れ替え、同色の列を5つ完成させるというもの。移動してよいコーンは、1回につき2個までのため、効率よく完成させるためには、パズルを解くときのように頭を使う必要がある。チーム戦なので、スピードも大切だ。しかし、芝生の上では車いすが進みにくい。そのため、あるチームでは、自然発生的に同じチームの健常の子が車いすを押してサポートするシーンも。健常もパラも関係なく、一つのチームとして共に戦い勝ちを目指す、ということが自然と体現されていた。
最後は、陸上競技の練習で行われるマーク走。
「歩幅を一定に保つ練習です。速く走ろうとすると歩幅が大きくなりがちなのですが、効率よく走るためには、歩幅を広げ過ぎないことが大切なんです」(中西)
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スピードに乗ってからも歩幅をキープするため、「腕をしっかり振って、足をさばいて」とアドバイス。このとき、車いすユーザーは別チームを作り、コーンの間を蛇行するスラローム走として行った。中学校では陸上部に所属しており、この夏から吉田テニス研修センターで車いすテニスを習い始めた本田遥士くん(中2)は、「陸上にもこんな楽しい練習方法があるんだと思った」と、まさに目からうろこの体験となったようだった。
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どの参加者も、普段はやらないような動きにチャレンジしてクタクタになりつつも、充実の表情を見せていたのが印象的だった。修了式では、2チームに分かれて、それぞれ国枝と中西から終了証を手渡しされたのも、いい思い出になったに違いない。何より、障がいのある人とない人が当たり前に交じり合う光景に、東京大会のレガシーを強く感じるいいイベントだった。
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text by TEAM A
photo by Atsushi Mihara
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