3年ぶりの日本パラバレーボール選手権大会は、千葉パイレーツが笑顔の5連覇
パラサポWEB / 2022年12月13日 13時28分
12月11日、12日の2日間、シッティングバレーボール国内クラブチームの日本一を決める「日本パラバレーボール選手権大会2022」が、東京・武蔵野市の武蔵野総合体育館で開催された。
男子は決勝でライバル対決が実現も……男子の決勝は火花散る対決となった。5連覇のかかる<千葉パイレーツ>と7月に開催された「夏パラバレーボール選手権大会」を制した<台東スマイル>のカードだ。
両者はこう話す。
「優勝したことのない大会は日本選手権だけ。ライバルに勝って優勝することを目指していた」(台東スマイル・佐々木一成)
「僕自身、平日の練習をともにしている選手ばかり。手の内がばれているから、厳しい戦いになると思った」(千葉パイレーツ・田澤隼)
試合の序盤、リードしたのは<台東スマイル>。だが、パラバレーボール界随一の大所帯を誇る<千葉パイレーツ>はチーム力だけでなく、個の力も強い。東京大会後の男子日本代表をけん引する田澤のサービスエースで得点を連取して逆転すると、その後も同日本代表の皆川鉄雄やパラリンピックに3度出場したベテラン加藤昌彦の強打がさく裂する。
東京大会の前と比べてトレーニング量を3倍にしているという田澤。目で見てわかるほど筋力アップした一方の<台東スマイル>もラリーをつなげて応戦し、第1セットでデュースに持ち込むが24対26で先取されると、第2セットも攻撃のテンポの速い<千葉パイレーツ>の勢いを止められず。
その結果、<千葉パイレーツ>が2対0(3セットマッチ)で宿敵を倒し、3年ぶりに開催された日本選手権で頂点に輝いた。
田澤主将率いる千葉パイレーツには、加藤(写真4番)ら役者が揃うキャプテンの田澤は「なんとか勝ててよかった」とコメントし、こう続けた。
「つなぎがうまくハマったと思う。千葉パイレーツは代表経験のある選手が複数いて攻撃の基盤はあるけれど、その分、連携が難しいところがあった。夏に台東スマイルに負けて以降、チームで話し合い、約束事を決めて臨んだのが結果につながった。自分自身は、週末の代表活動と練習日が重なるため、チーム練習に参加できないことも多いなか、他のメンバーが約束事をチーム内に浸透させてくれた。そこに、代表組が合わせるようにした」
皆川もパリパラリンピックを目指す代表の一員。今大会後は、さらなる筋力アップに励むつもりだ実際に、日本代表の皆川は「自分のミスによる失点をなくそうと心がけた」と振り返り、威勢のいい声でチームを盛り上げながらも、丁寧にプレーしたことを明かした。
「相手が一枚上手だった。いいライバル関係です」。<台東スマイル>の佐々木は悔しさを胸にしまって勝者を称えた。
「ゼロからチームを立て直し、次は(年間3つの大会を制す)3冠を目指したい」と台東スマイルの佐々木(写真の14番)<千葉パイレーツ>は来年、6連覇を目指す。
「勝ち続けることが一番大事。他のチームも強くなっていくと思うが、連覇が途絶えないように頑張ります」
そう決意を述べて、田澤は会場を後にした。
5チーム参加の女子も強豪が「連覇」1日のみの開催で5チームが出場した女子は東京プラネッツ女組が制した
女子は、東京パラリンピック日本代表の小方心緒吏らを擁する<東京プラネッツ女組>が、準決勝で<千葉レディースパイレーツ>、決勝で<京都おたべーず花子>をそれぞれストレートで下し、6連覇。キャプテンの波田みかは「試合中も笑顔溢れるのが東京プラネッツ女組。コロナ禍でチーム練習はなくなったが、やっぱりみんなでバレーをすることは楽しい。最後の試合まで、楽しみながら勝ち切ることができてよかった」と喜んだ。
全日本ではセッターを務める波田。「これまで自分が一番若手だったが、来年の国際大会では引っ張っていけるように頑張りたい」 ベテランも若手も躍動今大会は新型コロナウイルス感染症対策により、通常3面のコートを2面で使い、グループ分けした予選リーグを行わず、初日からトーナメント形式で大会が進んだ。当然ながら「もっと試合をしたかった」という声もあったが、記者が話を聞いた選手の全員が「楽しかった」とコメントしており、試合でプレーすることの尊さを実感させられた。
パワー溢れるスパイクを決めたSoul(魂)の柳<大阪アタッカーズ>の飯倉喜博も「楽しかった」と話してくれたひとりだ。チームは2回戦で東京大会の男子日本代表キャプテン・柳昂志を擁する<Soul(魂)>にフルセットの末、敗れたが、激しい攻防戦を見せた。
「敗退は残念だが、手応えがあった。来年は決勝まで残りたい」と飯倉。その手応えのひとつは、若手の伸びしろにあるのだろう。東京大会後に日本代表になった川波潤は、アタックでもブロックでも存在感を発揮。今大会では、視野の広さや判断力を磨いた。
20歳のとき交通事故で右足を切断した川波。スパイク力を武器にするべく練習に励んでいるというバレーボール経験はないが、長居障害者スポーツセンターで勤務するチームの選手に誘われたのがシッティングバレーボールを始めたきっかけだという。
「いつの間にかハマっていました(笑)東京大会直前にチームの練習に参加したら、日本代表選手たちがハイレベルなプレーをしていて。刺激されたのを覚えています」
長年、代表最年少だった29歳の田澤も期待を寄せる25歳の新鋭は、すでに11月、世界選手権デビューを果たしている。その世界選手権でも思い切ってプレーしたという川波は、国内での試合経験をステップにし、来年、再び日本代表として世界に挑戦するつもりだ。
また、右脚を切断した入院中にパラバレーに出会い、1年前にチームに加入したという奥田実加も、日本選手権初出場。「最初は緊張したが、サーブが決まってうれしかった」と話し、初めての試合で収穫を手にした。
「みんなでボールをつなぎ、称え合うのがこの競技の楽しさ」と奥田。パラリンピックを見据え、基本練習を積み重ねているところだ「日本選手権から、こういう若手が出てきてくれれば」。飯倉は若手の奮起に目を細めた。
text by Asuka Senaga
photo by X-1
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