2025年秋誕生!トヨタが作る新スポーツ体験
パラサポWEB / 2023年2月1日 6時15分
2022年8月、トヨタグループ3社が、東京・お台場の“メガウェブ”跡地に次世代アリーナ「TOKYO A-ARENA(仮称)」をつくると発表しました。オリンピック・パラリンピックのワールドワイドパートナーを務めるなど、スポーツを通じた社会発展に取り組むトヨタが目指すアリーナとはどんなものなのでしょうか。プロジェクト始動から間もない今だからこそ描かれる、理想のアリーナのかたちについてお話を伺いました。
これまでの試合観戦とはまったく違う体験を生み出すアリーナ左から林邦彦氏(トヨタアルバルク東京株式会社社長)、豊田章男氏(トヨタ自動車株式会社社長)、山村知秀氏(トヨタ不動産株式会社社長)
トヨタ自動車、トヨタ不動産、トヨタアルバルク東京の3社は、2025年秋のアリーナ開業を目指し、TOKYO A-ARENA PROJECTを推進すると発表しました。B.LEAGUE所属のプロバスケットボールチーム、アルバルク東京のホームアリーナになると同時に、多様な人がスポーツをより身近に感じられる場所になるといいます。
まずは、アリーナプランニング担当であるトヨタアルバルク東京の林洋輔さんに、プロジェクト始動の経緯について教えてもらいました。
「2026-27シーズンからB.LEAGUEの構成が変わり、B1クラブライセンス基準のひとつに自分たちでスケジュールを一定程度コントロールできる5000席以上のアリーナを確保しないといけないという内容の条件が加わりました。しかし、現在、アルバルク東京は条件を満たせるホームアリーナを確保していないため、この機にトヨタグループとしてアリーナを作るということになったんです。3社のフォーメーションを簡単に説明すると、トヨタ自動車が所有する土地にトヨタ不動産がアリーナを建てて、トヨタアルバルク東京が運営していくというかたちになります」(林さん)
TOKYO A-ARENA PROJECTのビジョンムービー「現在、我々以外にも多くのクラブチームが公共の体育館を借りてプレーしていますが、アリーナと体育館には大きな違いがあると思うんです。それは、誰のための施設であるかということ。定義があるわけではないので私個人の意見になりますが、体育館はスポーツをプレーする人のための施設である一方、アリーナはプレーする人だけじゃなくて観る人のための施設でもあるんですよね。
例えば、センタービジョンや音響、照明など、選手と観客が一体となって盛り上がれる演出を借りている体育館で実践しようとすると金銭的にも空間的にも限界がありますし、VIPのお客様をおもてなしする十分なホスピタリティを提供することもできません。このような差があることで、同じ試合であってもアリーナと体育館では全く違う体験になってしまうんです。そういった意味でもTOKYO A-ARENAは“体験をつくる”プロジェクトでもあると感じています」(林さん)
スポーツが好きな人もそうでない人も「楽しい」と思える場にそうした“体験をつくる”といったエンターテインメント的な要素を付け加えることで、スポーツを楽しむ人の数が増えるのではないかと林さんは言います。
「これまでのスポーツ観戦はごく一部のファンの楽しみでしたが、日本のスポーツシーンをさらに盛り上げていくためには、新たな観戦文化を広く根付かせなければならないと感じています。
そのひとつの方法が、スポーツが好きな人もそうでもない人も「なんだか楽しい」、「また来たい」と感じてもらえるような体験をつくることです。試合中の演出だけなく、試合前やハーフタイムに飲み物や食べ物を楽しんでもらえたり、家族や友人とパーティーをしたりと、非日常的な体験を提供したいと思っています。まだ設計段階なので、具体的なことはお伝えできませんが、五感で楽しめる空間になる予定です。
また、障がいのある方や小さなお子様も含め、すべての人にスポーツの魅力を届け、そして楽しんでもらう『次世代スポーツエクスペリエンス』に我々は取り組んでいきます」(林さん)
次世代アリーナを構成する3つの重要テーマトヨタアルバルク東京株式会社アリーナプランニング部部長の林洋輔さん。「米国在住時にさまざまなアリーナを訪れ、スポーツ観戦の楽しさを知りました。日本にも新しい観戦文化をつくっていきたいです」と語ります
TOKYO A-ARENA PROJECTは、“可能性にかけていこう”というコンセプトのもと、様々なパートナーの協力を得ながら、スポーツやモビリティ、サスティナビリティといった領域を中心に、様々な可能性を集積させ、さらには、その可能性が解き放たれる場所となることを目指すそう。
「我々は、アリーナの重点テーマとして3つを掲げています。まずは、先ほど説明した『次世代スポーツエクスペリエンス』。アルバルク東京がホームゲームで使うだけでなく、eスポーツやパラスポーツなども含めた様々なスポーツにおいて、アスリートと観戦する人を多角的にサポートする予定です。スポーツの聖地と言ったらちょっとおこがましいですけど、可能性が広がる場になればと考えています。
次に『未来型モビリティサービス』。今回アリーナを建設する場所はトヨタ自動車の体験型テーマパーク“メガウェブ”の跡地なので、その流れを一部継承して、トヨタが有するモビリティ技術の発信拠点のような場所にもする予定です。
最後のテーマは『持続型ライフスタイルデザイン』。何十年も残るような大きな施設ですので、建てて終わりではなくソフトもハードもアップデートし続けなければなりません。環境配慮などの社会的課題に取り組み、世代が変わっても地域の皆様に愛されるようなアリーナを目指します」(林さん)
トヨタが描く、アリーナを通じて実現する社会とは敷地面積約27,000㎡、収容客数約1万人の大きな施設となるTOKYO A-ARENAでは、“可能性にかけていこう”というコンセプトに基づき、パラスポーツや子どもの大会なども積極的に誘致するそう。そこには、一部のトップアスリートやトップパフォーマーだけが使うアリーナにしてはならないというトヨタ自動車の意向があるといいます。
トヨタといえばパラスポーツの振興などにも取り組んでいますが、なぜモビリティーカンパニーがパラスポーツをサポートするのでしょうか。その理由について、トヨタ自動車の岸田多加司さん(スポーツ強化・地域貢献部)に話を伺いました。
「トヨタでは、“スポーツを通じた平和で差別のない社会づくり”と“モビリティを通じた持続可能な社会づくり”の実現を目指し、アスリートを通じた障がいのある方への偏見をなくす活動支援やスポーツを通じた子どもの教育などに取り組んでいます。
パラスポーツは“チャレンジ”、“ネバーギブアップ”、“チームワーク”、“リスペクト”といったスポーツの持つ力を特に体現しているものであり、見ている人へ勇気や活力を与えてくれるものだと感じています。ひとりでも多くの方々がパラスポーツに触れ、アスリートの凄さを感じていただき、一人ひとりの個性を尊重できる社会づくりに繋がればと思います」(岸田さん)
現在、パラスポーツの試合が1万人規模のアリーナで開催されることは限られていますが、TOKYO A-ARENAがオープンする2025年秋以降、パラスポーツを取り巻く環境は一変しているかもしれません。
「観る人もする人も、純粋にスポーツを楽しむ人たちのあいだには分け隔てがないんですよね。たとえ壁のある関係性だったとしても、自然とひとつになれるという力がすごくある。我々の責務は、その力を活かせる場=TOKYO A-ARENAを提供することなんだと感じています」(林さん)
現在、TOKYO A-ARENA PROJECTでは、プロジェクトメンバーやパートナーとなる企業・団体を募集中とのこと。「こんなアリーナをつくりたい」、「スポーツの力をもっと活用したい」という企業・団体の方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
TOKYO A-ARENA PROJECT https://www.alvark-tokyo.jp/a_arena/
text by Uiko Kurihara(Parasapo Lab)
写真提供:TOKYO A-ARENA PROJECT
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