壁を超えろ! 築地本願寺で開催された全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権
パラサポWEB / 2023年2月3日 17時32分
1月29日に開催された第23回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会。東京の築地本願寺で華やかに行われ、4つの日本新記録が生まれた。
東京パラリンピック日本代表の光瀬智洋が59kg級で日本新!男子は、西崎哲男、大堂秀樹らベテランが各階級の日本記録保持者に名を連ねる中、伸び盛りの光瀬智洋が自身の日本記録を1㎏更新して154㎏をマーク。59kg級を制した。
女子は55㎏の中村光、61㎏級の桐生寛子が日本記録に挑戦したものの、惜しくも失敗に終わった。
悔しさで顔を覆う桐生寛子「世代交代にはあと5年ほどかかりそう」、「もっと記録が出たのではないか」……大会後、日本パラ・パワーリフティング連盟の吉田進強化委員長は少し物足りなそうに話したが、ケガや病気からの復帰戦だった選手も少なくなかった。パリパラリンピック出場に向けて、ここからの奮起が期待される。
49kg級で優勝した西崎哲男はこの日一番の声援を浴びた 全日本初出場で日本新記録を樹立!全日本は、3年ぶりに有観客で行われ、前売りチケット120枚が完売する人気ぶりだった。マスク越しの声援や拍手を受けて力を発揮し、新記録を樹立したのは視覚障がいのある田中秩加香だ。
耳からの情報を頼りに競技を行う田中。新記録樹立後は会場から大きな拍手を受けた昨年3月に競技を始め、全日本は初出場。競技会は3回目だ。ほぼ観客のいなかった韓国でのアジアオセアニア選手権を経験しており、「日本語の応援は初めてで、緊張しすぎてしまうと思った」と明かしつつ、「少し心に余裕があったため、成功させることができた。観客が入っているなという実感を噛みしめています」と喜びを語った。
73kg級の田中は、第一試技で75㎏をクリアすると、第二試技で80㎏を成功させ、ベンチ台で自らの日本新記録樹立に拍手。第三試技は83kgを申請し、さらなる記録更新に挑んだが、力を使い切ったのか挙げ切れなかった。
それでも、観客にペコリと頭を下げて応え、第二試技でマークした日本女子初となる80kg台突入を素直に喜んだ。
「(80kgは)自分でも半分信じられていませんが、うれしいです」
クラウドファンディングで連盟に寄付をした支援者のロゴがプロジェクションマッピングで投影されたパラリンピックのパワーリフティングは、下肢障がい者を対象としている。生まれたときから肢体に障がいがあり、その影響から視覚障がいもある田中だが、感覚を大事にすることで重い重量を挙げられるようになった。
コロナ禍の運動不足とストレス解消がきっかけでトレーニングをはじめ、そこからトレーナーらとともに競技を志すように。当初は50kg程度挙げていたが、競技を始めるようになって、肩を寄せたり胸を反らしたりという姿勢を少しずつ耳で聞いて習得していった。
シャフトは、触ってわかる印に小指を合わせてミドルグリップで握る。重りを挙上する際、左右のバランスやしっかり胸の前で重りを止められているかどうかの感覚はまだ捉えづらいという。
「まだまだ未熟。皆さんに見ていただいて、面白いと感じてもらえるような技術を身に着けていきたいです」
田中を指導するひとりの吉田進強化委員長は、「視覚障がいがあって重りを持ち挙げるのは恐怖心があるもの。これからトップを目指す上でなにかハンデが出てくることになるだろう」としつつ、「彼女は先天的に瞬発系の白筋が多い。それに、胸が高く、腕が短い。もう、ベンチ(プレス)のために生まれてきたような体型」とその素質を絶賛する。
パリパラリンピックに向けては、本人も「可能性はわからないけど、目指したい」と前向きだ。
初の有料化が実現した全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会「パリを目指すにはやっぱ世界を見ないといけないと思っているので、いつか3桁の重量を……とは思うんですけど、あまりにも遠い記録。まずは90kgを見据えて着々とがんばります」
この日の三試技目失敗後、悔しそうな表情をのぞかせた期待の新星から、アスリートとしての覚悟を感じた。
テーマは「超える」ご本尊に手を合わせて試技に向かう80kg級の大堂秀樹
今大会は、「宗教、人種、障がいの壁を超える」がテーマ。築地本願寺の東森尚人副宗務長によると、築地本願寺で本格的な競技会が行われるのは初めてといい、選手は本尊の阿弥陀如来像の隣のベンチ台で競技を行った。
ご本尊を前に気合いを入れる88kg級の田中翔悟2020年1月に築地本願寺で3大会パラリンピック出場の三浦浩が講演した縁がつながり、大会が実現した。
ボーイスカウト&ガールスカウトにエスコートされて入場した“お寺と連盟のつなぎ役”三浦浩東森副宗務長は「このような大会の開催を通じてバリアフリー化を進めていくきっかけにしたい。よりフラットなお寺にしていきたいですね」と期待を込めた。
今回は海外選手も来日。4つのパラリンピックメダルを持つLin Tsu Hui(台湾)らが魅せた ご本尊をバックに表彰式。写真は55kg級の山本恵理(左)と中村光(右)text by Asuka Senaga
photo by X-1
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
年間スポンサー収入「0円」の競技団体も…障害者スポーツ「マイナー」に危機感 助成金頼み、窮状を打開できるか
47NEWS / 2024年11月23日 10時0分
-
妻はオリで金、夫はパラで金。LA28はアメリカ代表に注目!?
パラサポWEB / 2024年11月13日 6時32分
-
【岡山大学】夢の「インカレ団体連覇」はすぐそこに! 岡山大学ウエイトトレーニング部が関西学生秋季パワーリフティング選手権大会で団体優勝
PR TIMES / 2024年11月7日 10時45分
-
第3回NAGASEカップ陸上競技大会 開催ご報告
共同通信PRワイヤー / 2024年11月6日 18時15分
-
【PLAYBACK PARIS】パリで躍動した日本代表選手が語ったパラリンピックの可能性
パラサポWEB / 2024年10月25日 6時32分
ランキング
-
1侍ジャパンは2次ラウンド2連勝、決勝進出の条件は…23日昼の試合結果で決定の可能性も
読売新聞 / 2024年11月23日 0時20分
-
2【侍ジャパン】ベネズエラに逆転勝利で無傷の7連勝&国際大会26連勝 2大会連続決勝に大きく前進 牧が決勝満塁弾など13安打9得点
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月22日 23時2分
-
3「私は重い不安障害とADHDを患っている」 女子フィギュアで輝く裏で…人知れぬ葛藤を抱えて立つリンク
THE ANSWER / 2024年11月23日 8時13分
-
4侍ジャパン・早川 23日の台湾戦先発へ「決勝にいい弾みをつけられるような投球をしたい」
スポニチアネックス / 2024年11月23日 5時1分
-
5ベネズエラ・ロペス監督「夢であり、これぞベネズエラだという試合をやろう!」 日本戦敗戦も前を向く
スポニチアネックス / 2024年11月22日 23時44分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください