メタバースで東京マラソンに参加しよう!
パラサポWEB / 2023年3月2日 7時0分
一般市民が参加できる日本最大級の東京マラソンが今年も3月5日に開催されるが、その前後にメタバース上で行われる「東京マラソンバーチャルEXPO 2023」(2月17日(金)〜3月17日(金)の期間限定開催)をご存知だろうか? その名の通り、リアルのEXPOと同時に、仮想空間で開催されるもので、今年3回目を迎える。今、全世界的に注目を集めるメタバースを体験できるということだが、果たしてここでは何が体験できるのだろうか?
自分の分身のアバターが仮想空間で走り、応援し、コミュニケーションを取るスマホアプリ「REV WORLDS」の「東京マラソンバーチャルEXPO 2023イベント会場」にて開催中 Ⓒ東京マラソン財団
東京マラソンバーチャルEXPO 2023の会場となるのは、スマートフォン向け仮想都市空間サービス「REV WORLDS/レヴ ワールズ」上の仮想都市に作られた都庁前のエリア。そこにはミニチュアマラソンコースやスタートの合図をするスタート台、目標タイムを表示して記念撮影する場所のほか、パートナー企業や一般企業がブースを出展している。
ここにアクセスすると、どんな楽しみ方ができるのか、いくつかご紹介しよう。
3Dモデルで再現されたミニチュアマラソンコースでは、自分のアバターでコースを探索することができる。今回からはゲーム要素が追加され、同じ空間にいる人とタイムを競ったりすることができるようになった Ⓒ東京マラソン財団 通常、一般人は入ることのできないスタート台で、都知事しかできないスタートの合図を自分のアバターでできる。まるでレースを主催している気分が味わえるかも!? Ⓒ東京マラソン財団 パラアスリートが使用する陸上競技用の車いす(レーサー)に乗って、ミニチュアマラソンコースはもちろんのこと会場内を走行することができる Ⓒ東京マラソン財団 会場内の各ブースで手に入れたウェアや期間限定のデジタルアイテムで、自由にアバターを着せ替え Ⓒ東京マラソン財団今回、東京マラソンバーチャルEXPOの概要について解説いただいたのは、凸版印刷スポーツビジネスデザイン室の三浦一宏氏。なぜ印刷会社がメタバース? と思う方もいるかもしれない。同社は情報を加工する印刷の技術を発展させてDX事業を展開。その技術を利用して、このEXPOのポイントとなるスマートフォン向け仮想都市空間サービス「REV WORLDS/レヴ ワールズ」上の仮想都市で展開されるバーチャルコンテンツの企画・運営をしているのだ。
凸版印刷スポーツビジネスデザイン室の三浦一宏氏「約2年前、凸版印刷の技術を活用して、リアルとバーチャルをシームレスに繋ぐメタバースで何か事業を展開できないかと思っていたところ、東京マラソンのリアルなEXPOが開催されるということを聞きました。是非うちも連携させていただきたいと申し出て、バーチャルEXPOが始まったというのが経緯です。今“メタバース”はバズワードになっていますし、メタバース上で開催できれば、東京マラソンがどんなものか知らなかった人、ランニングやマラソンとは縁のなかった人も興味をもっていただけるのではないかと考えました」(三浦氏)
三浦氏の言う通り、メタバースは人の行動空間をリアルからバーチャルへと大きく広げる、まさに無限の可能性を秘めた技術だ。東京マラソンバーチャルEXPOという仮想空間に、自分の分身のアバターを置くことによって、ミニチュアマラソンコースを本物のアスリートのようなスピードで走ったり、レーサー(陸上競技用車いす)に乗り、リアルでは出会わないような人と出会い、アバター同士でコミュニケーションも取れる。
「凸版印刷は、東京2020オリンピック・パラリンピックではオフィシャルパートナー契約をしていて、今もパラスポーツにも関心があります。ですから、障がいがあるためになかなか外に出られない方でも十分楽しめるような空間作り、さまざまな背景を持つ人同士が接点を持てるような場を作ることも意義のあることと考え、どんな人でも気軽に訪れることができるように設計しています」(三浦氏)
みんなが集い、情報共有することで、ランニングを楽しむ人の裾野を広げるⒸ東京マラソン財団
メタバースはたしかにすごい技術だが、どのように利用すれば人の生活をより豊かにできるかは、まだまだこれからの課題だという側面がある。その点、この東京マラソンバーチャルEXPOで目指していることは、ひとつの答えになるかも知れない。
「我々が注力していきたいと思っているのは、仮想空間に訪れてもらうことはもちろんなんですが、そこで人と人とのコミュニケーションを作り出すことです。1ヵ月間という期間限定のイベントではありますが、東京マラソンというコンテンツを基軸に人と人とがつながる。それは友人同士でも、たまたま同じ時間に訪れている人同士でもいいんですが、出会ってお喋りをして情報交換をするとか、コミュニケーションのトリガーになっていくといいなと思っています」
Ⓒ東京マラソン財団そのコミュニケーションの場として今回新設されたのが、ランナーやボランティア向けの共創エリア“コミュニティパーク”だ。既存のランコミュニティと連携してバーチャルならではの体験提供や情報発信を行うほか、ランニング系メディアを運営している1milegroupの協力を得てさまざまなイベント開催も予定されている。
「ランナーのみなさんはいろいろな情報を共有するのが好きな方々が多い印象を持っています。たとえば東京マラソンだと、この地点でこういう傾向があるよといったことをSNSで発信するとか。ですので、こういう場がバーチャルで共有できるのはすごく良い取り組みだと思っています」
と語るのは一般財団法人東京マラソン財団 マーケティング本部 広報部の石黒誠氏だ。ランナーはもちろんのこと、大会をサポートするボランティアも、ボランティア精神を理解し意識が高く東京マラソンのみならずオリンピックなど横の繋がりが厚いことも特徴なのだそう。
「ボランティアの方々は、大会当日に行く場所を割り当てられるので自分がどこで活動するのかをシェアする場所がないんですね。ですので、このコミュニティパークにはユーザーが集まって情報を発信したり語り合うことができるコミュニティボードというスペースを用意しました。また、ボランティアさんは受け持ちの場所によって当日着用するウェアのデザインが違うのですが、そのウェアもこのバーチャル上なら誰でも取得することができ、アバターに着せて楽しむことができます。実際に大会に参加しなくても、ボランティアになったつもりで選手を応援する気持ちを共有できるので、是非体験していただきたいですね」(三浦氏)
東京マラソンで走るには、応募をして抽選に当たらなければいけないが、一時期は何十倍という倍率になり、マラソン人口の多さに驚かされた。それはコミュニティの多さにも繋がっている。このバーチャルEXPOでは、そんなコミュニティ紹介も手厚い。コミュニティロゴが配置されたポロシャツやデジタルウェアを獲得できるショップもあり、自分のアバターに着せてカスタマイズもできる。
今後はセミナー会場を用意して、メタバース上でランニングコミュニティの方々にトークセッションをしてもらうとか、さまざまなイベントの開催も計画中だそう。欲を言うなら大会当日、サッカーのパブリックビューイングのように人々がここに集まってきて、ランナーの走りを見学・応援できると楽しいと思うのだが、放映権の問題で叶わないのだそう。
「我々がこのEXPOの開催期間を大会の前後2週間に設定しているのは意図があって、大会前には協賛企業が発信するなどして気分を盛り上げ、大会後はここで感想を言い合ったりする場にしたいということなんです。こういうイベントは終わると一気にバンッと消えてしまう部分があって、残念だと思うんです。今後はこういった場を常設にしていければ、また次の大会に繋げることもできるので、いろいろ計画中です」(三浦氏)
※「コミュニティパーク」は「東京マラソンバーチャルEXPO 2023」期間終了後も常設エリアとして継続予定
前出の石黒氏は、このバーチャルEXPOをランニングライフスタイルの裾野を広げるひとつのきっかけにしたいと語る。
「コロナ禍をきっかけにリアルな体験が難しい時期はあったんですが、このようなバーチャル空間が注目され、凸版さんの技術で新しいサービスが生まれたのはとてもよかったと思います。熱心なランナーさんは自分で情報を取りに行く傾向が強いんですが、今後は初心者の方もこのメタバースをきっかけに入りやすい裾野を広げるという意味でも、優良なサービスがたくさん用意されていると思います。今後も継続して、ランナー人口を増やしていきたいですね」(石黒氏)
ランナーの裾野を広げるという意味では、この仮想空間ではどんな人もミニチュアマラソンコースなどでランニングを楽しむことができるので、より積極的に楽しむ人が増えそうだ。東京マラソン開催までもう少し。この空間を探索しながら楽しみに待ちたい。
“メタバース”という単語は頻繁に耳にするが、頭ではわかるものの、果たしてどれだけの楽しみがあるのか。一度体験したら満足してそれっきりになるのではないかという思いが、正直なところあった。しかし、このバーチャルEXPOには時間や場所の制約を受けず、継続的に集まってコミュニケーションを取る場所が用意されているのが、一番の特色でありメリットだと感じた。メタバースはまだまだできることはあるが、ハードの技術が追いついていない部分があるそうだ。より多くの人が集まってメタバースへの期待を醸成していけば、ハードの壁も近いうちにクリアできるのではないだろうか。今後も期待していきたい。
text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
写真提供:一般財団法人東京マラソン財団
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