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座る時間が長いほど、死亡リスクが増える傾向

パラサポWEB / 2023年5月8日 7時0分

日本人は「世界でもっとも○○している時間が長い」というデータがあるのですが、「○○」には何が入るかわかりますか? そう問いかけるのは、「体内の小さな炎症が原因で、別の場所に大きな病気を引き起こす」という理論の病巣疾患の名医、今井一彰医師。その今井氏が提唱する、座りすぎのリスクと、あらゆる不調の原因ともなる「体内の炎症」をゼロにして健康で長生きする方法をご紹介しよう。

予想以上に高い、座りすぎのリスク

先程の問いかけの答え、「○○」に入るのは「座っている」時間。世界20カ国で、平日の座っている時間を調べたところ、日本はサウジアラビアと並んで「1日7時間」と最長だったという。座る時間が長いとどんなリスクがあるのか? たとえばオーストラリアの成人男女を対象としたある調査では、座る時間が長くなるほど、死亡リスクが増えるという結果が出ているそうだ。

京都府立医科大学の6万人を超える日本人を7.7年追跡したデータを用いた研究でも、生活習慣病の有無にかかわらず、日中、座っている時間が2時間増えるごとに死亡リスクは15%増えるという結果に。さらに余暇の身体活動量を増やしても座りすぎのリスクを完全に抑制できないという結果が出ています。

(今井一彰著『名医が教える 炎症ゼロ習慣』から抜粋。以下同)

今井氏は、体の中の「炎症」が体を老化させ、病気にするという理論から、多くの患者の原因不明の体調不良を治療してきた。たとえば、新型コロナウイルスの後遺症として、メンタルの落ち込みやうつ症状などで来院する患者の98%にのどの炎症が見られるが、そのうちの半分以上の人は、のどが痛い、イガイガするなどの自覚症状がないそうだ。しかし、のどの炎症を治療すると、みるみる体調が戻ったという。炎症による不調はのどだけに限らず、体内のあらゆる箇所に「隠れ炎症」として潜んでいて、さまざまな不調、老化、病気などの原因になる。そして、この炎症の原因のひとつが「座りすぎ」なのだ。

運動は最高の「抗炎症薬」

今井医師によると、「風邪で、のどが赤くなって、つばを飲み込むと痛い」「ハチに刺されたところが、赤く腫れてズキズキ痛む」といった一般的な炎症は一時的なもの。ところが、体の同じ部分で長い期間炎症が続くと、さまざまな病気を引き起こしたり、老化を促進したりしてしまうのだそうだ。そんな炎症を抑える効果があると言われるのが運動。

国立がん研究センターの研究が、がんに関する国内の疫学研究結果を集めて、がんに対する効果について科学的な検証をした結果、運動には大腸がんや乳がんの発症リスクを低くする効果があることが示されています。また、身体活動量が多いほど、がん全体の発症リスクが低くなるという結果も出ているのです

この他にも、運動は、糖尿病などの生活習慣病やうつ病などの心の不調の改善にも効果を発揮するのだそう。こうした病気を予防し、健康で若々しく長生きをしたいならば、座る時間を短くして、体を動かす時間を増やすことが大切だと、今井医師は運動の重要性を説く。

炎症効果のあるオススメの運動

座りすぎが健康によくないとはいえ、デスクワークをしている人はいきなり「今日から座る時間を半分にする」というわけにはいかない。そこでまずは、30分座ったら3~5分歩く、あるいはストレッチをするなど、座りっぱなしである状況を改善してみてはどうだろう。また、電車などでは座らずに立つ、在宅ワークをしている人はスタンディングデスクを導入するなど、積極的に座る時間を減らしていこう。

さらに今井医師がオススメするのが運動。今井医師は自身の著書の中で次の3つの運動を紹介している。

1日たった4分の「HIITトレーニング」

HIITは、「High Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)」の略で、負荷の強い運動と小休憩を繰り返すトレーニングのこと。負荷が強いといっても、運動時間はたったの4分なので、運動をする時間がないという人には最適。

(HIITの例) 1)「20秒間」運動

まっすぐ立ち、片足を前に大きく踏み出してひざを90度に曲げ、もとに戻る。これを左右交互に繰り返す。

「10秒間」休憩

息を整える。体から力を抜いてリラックス

2)「20秒間」運動

腰を落としてから、両手を上に伸ばしながら大きくジャンプし、着地しながら腰をしずめ、またジャンプするを繰り返す。

「10秒間」休憩 3)「20秒間」運動

両手を床について、足を伸ばして、腕立て伏せの体勢になる。そこから、右ひざを左ひじに近づけ、もとに戻し、今度は左ひざを右のひじに近づけて、もとに戻す。これを繰り返す。

「10秒間」休憩 4)「20秒間」運動

腕立て伏せの体勢でダッシュをするようにもも上げをする。

「10秒間」休憩 5)1~4をもう1度繰り返す。

(今井一彰著『名医が教える 炎症ゼロ習慣』より)

通勤中にも実践できる「インターバル速歩」

次に紹介するのはインターバル速歩。これは「早歩き」と「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すウォーキング法。

ふつうの速度で歩くよりも速く歩いたほうが、運動強度が上がり、筋肉への刺激になります。ゆっくり歩きとの交互なので、疲れすぎず、体力に自信がない人にも始めやすいのがポイントです。

目安としては、早歩きを3分したら、ゆっくり歩きを3分。これを1セットとして5セット(30分間)を週4回以上が理想的。通勤時間などを利用して実践してみてはどうだろう。

筋トレの王様「スクワット」

最後にご紹介するのはスクワット。元気な高齢の芸能人などが毎日かかさず行っているという話が話題になったこともある、とても身近な運動だ。

スクワットは「筋トレの王様」「エクササイズの王様」などと呼ばれ、体の中でもっとも大きな太ももの前側の筋肉をはじめ、体の筋肉の大半がある下半身の筋肉をまんべんなく鍛えることができます。

ただし、間違ったやり方をすると効果が半減するだけでなく、腰や膝をいためる原因にもなるので、注意が必要だ。

【正しいスクワットの基本】

足を肩幅くらいに開いて、つま先をやや外側に向ける。足の裏全体に体重をのせ、背中が丸まらないようにして、太ももと床が平行になるまでゆっくりと腰を落とす。

ひざが多少、つま先より前に出てもOK。回数は、自分がきついと感じるまでが目安。


新型コロナウイルスの流行以降、リモートワークが普及、多くの飲食店がテイクアウトを始めるなど、私たちは家にいながらにして、仕事も美味しいものを食べることも、買い物もできるようになった。そうやって生活が便利になる一方で、座りっぱなしの時間がますます長くなり、運動量も減って、むしろ健康リスクは高まったとも言える。健康は日々の積み重ね。将来、後悔しないためにも、自分の生活を振り返り、できることからはじめてみてはいかがだろうか。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)

photo by Shutterstock

<参考図書>『名医が教える 炎症ゼロ習慣』

今井一彰(著)/飛鳥新社

長引く疲れや不調、原因不明のメンタル低下、シワ、シミ、たるみなど顔の疲れ……こうした悩みの原因は、もしかしたら体の炎症かもしれません。サイレントキラーと呼ばれ、体中を攻撃する炎症が引き起こすさまざまな病気を診察してきた名医・今井一彰医師が、その知見をもとに、食事から呼吸法、運動など、炎症を消す&予防する50の習慣を紹介した人気の書籍。

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