野球経験ゼロで時速150kmの速球を打った驚きの方法
パラサポWEB / 2023年6月23日 7時0分
本を読む速度には個人差がある。読むのが遅いと、つい億劫になって読書が嫌いになってしまったりする。身に覚えがある人もいるのではないだろうか。この“読む速度”を速くすること=速読が、実はスポーツのパフォーマンスに関係しているのだという。プロのアスリートはもちろん、さまざまな学校や団体・企業から引く手あまたの速読脳トレコンサルタント・呉真由美氏に、そのノウハウを伺った。
速読とは、脳の回転がよくなっている状態を作り出すこと読むことと、プレーすることは、一見まるで関係ないように思える。読む速度が速くなると、スポーツのパフォーマンスがアップするとはいったいどういうことなのだろうか。
「まず、誤解のないように申し上げておきたいのですが、私の提唱する“呉メソッド速読脳トレ”は、ただ単に速く読めるようにするトレーニングではないんです。脳を速く読める状態にする。速く読める状態になっているから、スポーツのパフォーマンスもあがる。ですから、脳が調子のよい時を作り出すトレーニングだと考えてください」
と語る呉氏は、脳を活性化させることにより、野球やソフトボールの経験が全くないのに、時速150kmの速球を打つことができるという。もちろん、技術があるわけではないので“打った”というより“当てた”という表現の方が正しいのだそうだが、それにしてもこの話を聞くだけで、速読脳トレの効果に期待が高まる。
多くのプロアスリートからの信頼も厚い速読脳トレコンサルタントの呉真由美氏「たとえば仕事でも、調子の良いときってどんどんはかどりますよね? それがスポーツの時だと、サッカーの場合であればドリブルで自分の進むラインが見えるとか、シュートの際に相手の隙が見えて決まるとか。日常でも自分に危険が迫った時に、周囲の動きがとてもゆっくりとスローモーションで見えるような時間があります。それは、危険を回避するにはどうしたらいいか、脳が高速に回転して考えるからなんです。その状態を自分で自由に作り出すことができれば良いんですが、なかなか脳は思い通りにいきません。そんな脳の回転が速くなっている状態にすること。それを測るのが、一定の時間に読める文字量です。速読とは、自分の力=脳力をいかに活かせるようになっているかを測るバロメーターでもあるのです」
つい先日、呉氏はある高校のテニス部の合宿に呼ばれ、速読脳トレの指導をしたそうだ。午前中は通常の練習、午後呉氏の指導を受け、夕食後にまた練習。夜になると暗いし、疲れも出ているはずで、決して良い状況とは言えない。それなのに、生徒たちは昼間よりよく動けるようになり、ラリーが続くから楽しいと言って、練習をなかなかやめなかったのだそう。
「これは、彼らが若いからではありません。みんな元々持っている能力なんです。たとえば、パソコンはスペック以上の作業をさせようとするとフリーズしますよね? でも、脳はフリーズしません。むしろトレーニングをすればするほど、どんどんパフォーマンスを上げていきます。私が言う能力の使い方というのは、トレーニングというより考え方で、持っている能力を最大限に使いましょうということ。せっかく高い性能のパソコンを持っているのだったら、メールだけに使うのではなく、余すところなく活用した方が良いのと同じです」
視野を広げ、一文字ずつ読まずに、より多くの文字を目に入れるのがポイント速読脳トレがスポーツパフォーマンスに及ぼす影響についての考え方はよくわかった。では、実際にはどのようなトレーニングをしていけばいいのだろうか。
「たとえば、街中でふと目に入った看板の文字や、電車の中吊り広告などを一文字ずつ読みますか? 読まないですよね? でも、それらを私たちは一瞬で理解しています。でも、読書となるとみんな一文字ずつ読み始めてしまいます。それは親や学校の先生に“読み飛ばさないできちんと読みなさい”と言われて育ったからでしょう。本は一文字ずつゆっくり読むものだという習慣や思い込みが、すっかり身についてしまっているんだと思います」
目から入ってきた文字情報を一瞬にしてまとめて処理・理解する能力を持っているのに、読書となると一文字ずつ読み始める。脳は「なぜこんなにゆっくり文字を読んでいるのだろう」と物足りなさを感じているのだという。呉氏は「大排気量エンジンを搭載した車で、ギアをローに入れて走っているようなものだ」という比喩で語ったが、まさにその通りなのだろう。
呉氏の提唱する速読脳トレのポイントは以下の6つ。
1.現在の読書速度を計測6秒間の読書量を計り、その数値を10倍して1分間の読書量を割り出す。
2.目のストレッチ情報の入ってくる目=レンズを磨く
3.文字を読まずに速く見る最初に測った文字量の3倍を目指して速く見ることができるようにする
4.視野を広げる顔の両側に両手を出し、少しずつ手前に引きながら、手が見えるギリギリの位置で止める。さらに1cmほど手を引いて完全に見えない位置に持っていき、その見えない手を見ようと視野を広げるように意識する。
5.画面を流れる文字を眺める6.もう一度読書速度を測る
(5に関しては、呉氏の著書『即効! スポーツ速読完全マスターブック』に記載のQRコードで流れる文字の動画を見ることができる)
「私がみなさんによく言うのは“集中しちゃダメ”ということなんです。集中すると周りが見えなくなります。そうではなくて、無理せずに良い状態を作る方法を身につけるということなんです。“速く読んで内容がわかるんですか?”と聞かれることがありますが、速度と内容の理解は関係ありません。仕事ひとつとっても、脳が良い状態で自然に速いスピードではかどっているときは、ミスが少なかったりします。逆に調子が悪いときは、時間が余計にかかってミスが多い。それに、ややこしい言い回し、ややこしいカタカナ語などは、ゆっくり読んでも、読んだそばから忘れていきます。速いと精度が落ちるというのは思い込みでしかないのです」
読書が苦手なのは、脳力と読む速さが乖離しているから?呉氏がこのような速読脳トレのメソッドに辿り着いたきっかけは、自身の速読への挑戦と挫折だったという。
「本を読むのが大好きで、とにかくたくさん読みたいと思って高校生の時に通信教育で速読を学びました。でも、結局速読できるようにならなくて挫折してしまったんです。あとから考えてみると、私は通信教育の本に書かれていることが理解できなかったんですね。最初100文字読んだとします。“速く見てください”と書いてあったので、次は105文字読みました。でも、本が望んでいたのは、“もっと速く”だったんです」
その後呉氏は、速読とは速く読むことではなく、脳の回転を上げた結果だということに気づき、独自のメソッドを構築していった。
「通信教育は、どうしても独学になりがちで、自分の考えが入ってきてしまうので難しいのだなと思いました。ですから、私はこの速読脳トレに関しては、細かいトレーニング方法をいろいろ教えるのではなく、脳の力を十分に発揮するという“考え方”を理解してもらうことが大事だと考えています。考え方さえ身につければ、継続して脳のパフォーマンスを上げようとすることはできますから」
最近、本を読む人が少なくなり、本が売れないと言われる。呉氏がある子ども向けのイベントに呼ばれた際、午前中に“本を読むのが嫌いな人は?”と尋ねると、真っ先に手を挙げた男の子がいたのだそう。ところが午後のイベントに、その子が“面白かったから”と言って友人を連れてまたやってきたという。
「本を読むのが面倒くさいとか、苦手とか言う人がいます。でも、そういう方の中には、頭の回転が速くて読む速度がそれに追いつかないからつまらなくなってやめてしまう人もいるのではないでしょうか。本来持っている能力と読む速さが乖離しているから。私は本を読むことでいろいろな考え方を学ぶことができました。今、社会ではいろいろな事件や問題が起こっていますが、人が1年に1冊でも良いから本を読むことによって世の中は変わっていくのではないでしょうか。私が挫折を乗り越えてもう一度“速読”に出会った時、ライフワークが見つかったと思ったんです。私の目的は速読脳トレによる世界平和。ひとりでも多くの人にこの速読のメソッドでスポーツの楽しさはもちろんのこと、読書の楽しさも知ってもらいたいですね」
呉氏が、野球やソフトボールの経験が全くないのに、時速150kmの速球を打つことができるという話には、そんなことが本当にあるのだろうかと、正直信じられないような気分だった。しかし、肝心な局面では脳が高速に回転して、普段は見えないものが見えるという経験は、誰にでも多少はあるものだ。そう考えれば、誰もが持っているのに使いこなせていない脳の力を速読によって目覚めさせるのは十分に可能だと思える。それをスポーツに活かすことができれば物理的な視野が広がり、さらには氏が言うように読書に親しむことで、心の視野も大きく広がりそうだ。
text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock
PROFILE 呉真由美
脳開コンサルタント協会会長、速読脳トレコンサルタント。「誰にでもできる頑張らない速読」をモットーに全国でセミナーを開催。受講生は、小学生から社会人まで、スポーツ選手、医師、芸術家など多岐にわたり、北海道から九州まで受講生も多数。速読トレーニングを受ければ誰でも150kmの速球が打てるとテレビで話題になり、コーチを務める小中学生のサッカーやフットサルチームを全国優勝に導いた。『スポーツ速読完全マスターBOOK』(扶桑社)はベストセラーに。『呉真由美流 脳を活性化する速読メソッド』(PHP研究所)、『だから速読できへんねん! 脳のブレーキを解き放て』(生産性出版)など著書多数。
<参考図書>『不親切教師のススメ』
呉真由美著『スポーツ速読完全マスターBOOK 改訂版!』/扶桑社
「速読脳トレ」とは、脳を活性化することによって「脳が本を早く読める状態にする」こと。脳が活性化すれば視野が広がり、誰でも時速150kmの球を目で捉え、ゴールの隙を突き、ラリーしながら相手の位置を把握できる。つまりスポーツのパフォーマンスが劇的に向上する。そんな「速読脳トレ」の考え方と方法が学べる1冊。トレーニング動画にアクセスできるQRコード付き。
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