「オレは小田凱人だ!」グランドスラム初優勝&最年少17歳の世界ランキング1位で“凱”旋会見
パラサポWEB / 2023年6月21日 15時42分
全仏オープン(車いすの部)男子シングルスで初優勝した小田凱人が6月20日に“凱”旋帰国。世界ランキングも最年少17歳で1位になり、瞬く間にパラスポーツ界のスターになった小田が喜びの声を語った。
本人はもちろん、登壇した関係者やスポンサー、そして質問する記者も笑顔満開の記者会見になった。小田は「皆さん、こんにちは、世界ランキング1位の小田凱人です」と日焼けした顔に満面の笑みを浮かべながら挨拶。カメラの数や反響の大きさに「度肝を抜かれました」と驚きつつ、充実感をにじませた。
羽田空港の到着ロビーでスポンサーらに出迎えられたあと、車いすで会見場に現れた小田「夢や目標は常に口に出す」と言う小田の主な一問一答を紹介したい。
最年少となる17歳1ヵ月2日で世界ランキング1位に到達した小田 ライバルとの直接対決を制して世界一に――6月10日、全仏オープン車いすの部の男子シングルス決勝が行われ、小田は世界ランキング1位のアルフィー・ヒューウェット(イギリス)と対戦。セットカウント2対0のストレートで勝利し、初優勝とともに世界ランキング1位を決めた。優勝の瞬間は?
「決勝戦のマッチポイントは、緊張というか感動というか……。今まで感じられないくらい手が震えていましたし、心臓が飛び出るんじゃないかなという感覚を今もすごく覚えている。ただ、達成した後は『すぐにでも(次のグランドスラムである、)ウィンブルドンでタイトルを取りたい』『何度も経験したい』『より多く(タイトルを)獲得したい』気持ちが大きいです」
初めて手にしたグランドスラムのプレートを手にフォトセッションに応じ、笑顔がこぼれた ――決勝の相手、アルフィー・ヒューウェット選手について。「アルフィー選手との試合は、やはり特別な思いがある。相当なライバル意識はありますし、おそらく今後、何十回と戦う可能性があるんじゃないかな。今は、第1シードと第2シードなので、当たるのは決勝戦になる。強敵だし、手ごわい相手。ウィンブルドンは彼のホームになるのでパワーを持っていると思う。ただ、(全仏で)勝った試合は鮮明に覚えているので、そのときの自分を思い出しながらプレーできれば、(ウィンブルドンでも)チャンスがあると思います」
小田をマネジメントするトップアスリートグループの貝吹健本部長、所属スポンサーである東海理化の二之夕裕美社長、岐阜インターナショナルテニスクラブの熊田浩也コーチが同席した ――車いすテニス・男子シングルスの世界ランキングで日本の選手が1位となるのは、ことし1月に引退したレジェンド国枝慎吾さん以来2人目。憧れでもある国枝さんとどんな言葉を交わしたか?「国枝さんが決勝戦の解説をされていたので会話をする機会があった。これまでずっと追ってきた国枝さんが(世界ランキング1位のまま)引退し、イギリス選手が1位になったので、すぐに僕が取り返すというか、日本人が世界の1位だというモチベーションもあった。国枝さんに実況解説してもらい、ひとつの思い出になった。国枝さんには(出発前に)練習をお願いして、いろんなアドバイスをもらった。それを実戦で出すことができたし、『よかった』と褒めてもらえて本当にうれしいです」
「過去最高のカメラ」に迎えられ、「世界ランキング1位の実感が湧きました」 新しい時代を築く!「それだけの力が僕にはある」――国枝さんの後継者と言われることは?
「(後継者と言われて)正直、プレッシャーがあります。海外でも『ネクストシンゴ』と言われ、うれしいですけど、常に『俺は小田凱人なんだ』という感情が少しあって。小田凱人として自分も見てほしいし、“車いすテニスの小田凱人”という伝わり方をしてほしい。やはりそれだけの力が僕にはあると思うので、それは意識していきたいし、結果を残さないとダメだなという責任感もある。これまで国枝さんが積み上げてきたものがありますが、自分は新しい道で作り上げられたらいいかなと思います」
――10歳から車いすを始めて、7年で世界1位を達成。このスピードで夢をかなえたことについて。「7年前から目標だった夢というのは、何ひとつ変わってない。そのころからグランドスラムの優勝と世界ランキング1位というのは常にモットーにしながらがんばっていた。当時から、『世界一になれる』と思って行動していましたし、『世界一ならこういうプレーをするだろう』『こういう活動をするだろう』というのを常に想像しながらやっていた。ようやく目指していたところにたどり着いた。7歳の自分に声をかけるなら『自分らしさを大切にがんばって』と話すと思います」
――周囲のサポートで影響を受けたことは?「両親の教育は、僕の今のメンタリティや試合の運び方にすごく影響していると思う。両親からは、以前から常に『お前ならできる』と言われ、できなければ『なんでできないんだ』というような教育方針だった。そうやって育てられたことで、自分も『できないわけがない』という考えになっていきました」
全仏で優勝した直後、両親にビデオ通話で報告。「お前ならできると思った」と声をかけられたという ――パリ2024パラリンピックと同じ会場(ローランギャロス)でグランドスラムを制した。「やはりパリはすごく意識している。決勝戦はセンターコートでプレーできたというのも意味のあること。パラリンピックと同じ会場ということについて、試合中は意識していなかったが、頭の片隅には常にある。同じ会場でできたことは、少し有利なのではないか。パリパラリンピックに関しては近くなってくればもっと実感が湧くと思います」
「これまでのべストを決勝でささげて結果を出すことができた」と達成感を漂わせた パラリンピックの舞台を意識――年間グランドスラム、(四大大会とパラリンピックを制する)年間ゴールデンスラムへの意識は?
「年間グランドスラムについて、今はそれほど意識していない。次の大会をしっかり取ることが年間グランドスラムにつながると思う。ただ、パラリンピックは4年に1度、貴重な舞台。パラスポーツなのでパラリンピックの舞台が一番、僕の中で意識している部分でもある。それを何度取れるかこれからも意識したい。どこまで行けるかすごく楽しみなところです」
スポンサー企業の皆さんも花束を持って記者会見に駆けつけた 全仏でグランドスラムを獲得した翌日、パリのシンボルである凱旋門を初めて訪問した。名前の「ときと」の由来になった凱旋門は「かっこよかった」と言い、スマホの待ち受けにしている。縁を感じずにはいられないパリパラリンピックは来年、18歳で迎える。小田はパラリンピックの金メダルを胸に、名前の通りの“凱”旋帰国を果たすことができるか。この日のような笑顔をまた見たい。
ずっと目標にしてきたタイトル&世界ランキング1位。「始まったばかりなので、まだまだ夢をかなえていきます」text by Asuka Senaga
photo by Hiroaki Yoda
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