新星も輝いた! パラ陸上・世界選手権日本代表の珠玉の言葉
パラサポWEB / 2023年7月25日 8時32分
喜び、悔しさ、安堵……選手たちが発したそれぞれの言葉に込められた思いとは――。
来年のパリ2024パラリンピック出場枠を争ったパラ陸上の世界選手権。7月8日から10日間の日程でパリのシャルレティスタジアムで開催された。37選手が出場した日本代表チームは、金メダル4個を含む計11個のメダルを獲得する活躍を見せ、初出場の選手たちも躍動した。
福永凌太
(400m 金メダル、走り幅跳び 銀メダル/視覚障がいT13)
初の世界選手権で金メダリストになった福永常に落ち着いた印象の福永だが、メイン種目の400m試合前日は不安や恐怖が押し寄せて夜中1時間ごとに目が覚める緊張感を味わったという。これほどの緊張は健常者のインターハイで経験して以来。「また(トップレベルの)この場所に戻って来られたんだな」と不安もプラスに変換させた。最終日の走り幅跳びは、楽しんで試合ができたと言い、400mに続くアジア記録更新。「(視覚障がいという)ハンデがあることに対して、不自由を感じたことはこれまでないが、本当に今の体でよかったと思える大会になりました」
佐藤友祈
(1500m 金メダル、400m 銀メダル/車いすT52)
表彰式では必死に悔しさを押し殺し、笑顔をつくった佐藤自らの世界記録を更新しなければ勝てないことはわかっていた。東京パラリンピック王者の佐藤は5月のスイス遠征でベルギーの22歳、マクシム・カラバンに敗れて以来、世界選手権に向けて意識を改革し、ピークも合わせた。しかし、結果は2位。ライバルは佐藤が持っていた世界記録を更新し、佐藤は大会4連覇を逃した。翌日、プロ選手としてなんとか笑顔を作って表彰台に上がった。最後は「絶対に金メダルを奪い返す」と言い残してスタジアムを後にした佐藤。パリで味わった屈辱は、パリで晴らすつもりだ。
齋藤由希子
(砲丸投げ 銅メダル/上肢障がいF46)
東京パラリンピックで女子F46クラスの砲丸投げは実施されず、一時はやり投げに転向。パリは本来の種目でメダル獲得を目指す「久しぶりの日本代表。体が思うように動かなかった。でも、目標の(パリパラリンピック出場枠獲得ラインである)4位以内は達成できたので100点です」。トレードマークの笑顔をゆがめながら、前を向いて語った。昨年3月に出産し、急ピッチで仕上げてきた。自らが持っていた世界記録をアメリカ選手に更新されたが「勝負は来年。私が狙っているのは産後のベスト」と気持ちをブラさず、尻上がりに記録を伸ばした。1歳の愛娘を家族に託して初めての海外遠征。「2番を獲れなかった悔しさ、子どもを置いてきたこと、いろいろな思いがある」と涙を浮かべた齋藤。最後は「(表彰式でメダルと共に贈られる)ぬいぐるみを持って帰れるのはよかったかな」と笑った。
唐澤剣也
(5000m 金メダル、1500m 銀メダル/視覚障がいT11)
金メダルを含む2個のメダルを獲得した唐澤は日本代表のエースだ5000mで序盤、4番手につけていた唐澤は、会心のラストスパート。ホームストレートで首位を走っていたブラジル選手を抜いて1着でフィニッシュした。東京パラリンピックでは銀メダルだった。「金メダルを獲りたいという気持ちで走り切った」と話した。映像や写真には残らない記者が質問する報道エリアでも、メッセージ入りの日の丸を掲げていたのが印象的だった。「本当にたくさんの方に応援していただいて、これ(旗)にもメッセージをたくさんいただいているんです。そういった応援を背負って最後は気持ちで押し込みました」。これからは追われる立場になる。「負けないように、来年も金メダル獲れるようにがんばりたいと思います」
山本篤
(走り幅跳び 8位/義足T63)
6大会連続メダルを目指した走り幅跳びの山本6大会連続のメダル獲得ならず。そのニュースはテレビなどで伝えられた。いまメダルなしに終わったことがニュースとして報道されるのは、パラスポーツ界のレジェンドである山本くらいかもしれない。記録は自己ベストから程遠い5m87で8位。今シーズンはケガの影響で出遅れたが、大舞台にはなんとか間に合わせる山本だけに期待があった。痛みの残るなか、6本の試技を「いろいろ試しながらやったんですけど、難しかった」と振り返った。現地では現役引退の可能性も示唆したが、帰国後自らのSNSで「悪いところを治して出直す」とコメントしている。
生馬知季
(100m 6位、400m 8位、ユニバーサルリレー 金メダル/車いすT54)
決勝は予選とメンバーを変え、澤田優蘭(塩川竜平ガイド)、辻沙絵、松本武尊、生馬知季(写真右)でつないだ今季100mの日本新をマークするなど好調の生馬。個人種目で世界の厳しさを痛感したものの、ユニバーサルリレーでは最後に馬力を発揮した。4走を担当する生馬は、予選のフィニッシュ直前でカナダ選手に刺された。しかし、日本チームはチャンスがつながり、決勝へ。「決勝でなんとか2チーム抜くことができてよかった。予選は不本意な走りをしてしまったので……」。見事なタッチワークを披露して2着でフィニッシュした日本。1着のカナダが失格となり、繰り上がりで金メダルが決まった。「リレーがうまくいくか怖かったけど、3、4走のタッチは問題ない」という3走の松本武尊の言葉に「信じてました」と生馬。4年前のドバイ大会での失格を乗り越えて、笑顔の金メダル授与となった。
text by Asuka Senaga
photo by X-1
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