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災害時の知識をゲーム感覚で学べる「防災模試」

パラサポWEB / 2023年7月28日 6時30分

日本は地震の多い国だが、最近では夏の水害も深刻化している。いつ起きるか分からない災害には普段からの備え、いざという時に的確な判断ができる防災知識が重要だ。ヤフーが行っているヤフー防災模試は、ゲーム感覚で楽しく防災について学ぶことのできる優良コンテンツ。スポーツとコラボすることによって、ファンを中心とした人々に防災意識を高めてもらおうというイベントが大きな盛り上がりを見せた。それはいったいどういうものなのか。ヤフーの担当者に話を伺った。

スマホで模試を受けて防災力を判定。ゲーム感覚で防災知識を学べる
ヤフー防災模試は、このようにシンプルな画面で、誰でも気軽に取り組みやすい

ヤフーの行っている“ヤフー防災模試”とは、地震や台風、豪雨などの災害時に役立つ知識を皆に身につけてほしいという思いから生まれたスマートフォン向けのコンテンツだ。模試を受ける方法は簡単。スマホで“防災模試”を検索して表示。出題される問いに対して選択肢の中から正しいと思う答えをタップして選び回答していくと、最後に判定が出る。筆者も10個の問題が出る「速習編」をやってみたところ、意外に難しい。偏差値47の“気配り上手な防災おかん”という診断が出てしまった……。点数の低さに正直ガッカリはしたが、これなら楽しく知識を学ぶことができるという実感があった。この速習編の他、「地震編」「台風・豪雨編」があり、合計60個ほどの問いが用意されている。最初にニックネームなどを登録しておき、少し時間をおいてから再挑戦すると、以前の結果と比べることができるのも、よく考えられた仕組みだ。

ヤフーは、この模試の他にも、東日本大震災が起きた3月11日には、「3.11」と検索すると1件につき10円がYahoo! JAPANおよびパートナー企業から東北復興に携わる団体へ寄付されるチャリティー企画など、防災・減災に積極的に取り組んでいるというイメージがある。

「ヤフーが防災・減災に取り組んでいるのには、2つの理由があります。1つはメディアとして。まだインターネットというメディアが市民権を得ていなかった1990年代後半に、“テレビを見て助かった”という人がいる一方で、“ネットを見ていて助からなかった”という人が出ることは、メディアとして絶対に避けなければいけないと、当時の社長が強く言っていたんです。そこで、一人でも多くの人の役に立つよう、Yahoo!天気・災害というサービスやアプリなどを開発してきました。もう1つは以前からよく言われる“企業としての社会的責任”です。我々の事業が成り立つためには、情報技術社会を発展させなければなりません。それには社会の土台をきちんとすること。社会の課題に取り組むことが重要だという思いで、ヤフーは防災・減災に取り組んでいるのです」

そう語ってくれたのは、同社の災害支援推進室の室長・安田健志氏だ。有事・平時を問わず防災や減災に取り組み、発災時にはもちろん必要な情報が必要な人に届くよう注力している。そんな中、防災・減災の啓発のために生まれたのが“ヤフー防災模試”だ。最初は、2018年の3月11日に合わせて期間限定で始まったが、現在は常設コンテンツとして、いつでも挑戦することができるようになっている。

クラブチームとヤフーに共通する、地域の安心安全を実現したいという思い

ヤフーがこの防災模試を利用して、JリーグやB.LEAGUEといったスポーツチームとコラボして開催したのが「ソナエルJapan杯」「そなえてバスケ杯〜ファン防災アクション〜(※)」だ。何をするかというと、「ヤフー防災模試」を各リーグやクラブのファン・サポーターが受験。その点数や、Twitterでの告知活動に応じて応援するクラブに勝ち点が付与され、勝ち点が最も高いクラブが優勝となる。「ソナエルJapan杯~」は、21年に続いて2回目、「そなえてバスケ杯〜ファン防災アクション~」は今年初開催となった。

(※)「そなえてバスケ杯~ファン防災アクション~」は、B.LEAGUEの社会的責任活動であるB.LEAGUE Hope(B.Hope)が、B.LEAGUEパートナーである日本郵便のサポートのもと、バスケットボールを通じた防災意識向上を目指し2023年に実施した「そなえてバスケ supported by 日本郵便」の一環として開催された。

試合会場では、ブースが設けられて来客者に防災模試受験をアピールしたり、イベントには、“V・ファーレン長崎”のマスコットキャラ・ヴィヴィくんも登場(2022年実施の「ソナエルJapan杯」より)

ヤフーとJリーグはどうしてコラボすることになったのだろうか。

「Jリーグには、もともとクラブとサポーターの皆さんが、そのクラブの基盤となっている地域の安心・安全を実現したいという思いがあるんです。その思いのもと、社会と連携して取り組んでいる“シャレン!”という活動があって、そこに参画しているある企業の方が防災模試に注目してくださいました。その方の呼びかけによって始まったのが、『ソナエルJapan杯』です。Jリーグの皆さんの強い思いと、ヤフーの災害の被害を最小化したいという思いで作り出された防災模試というコンテンツが出会って生まれたイベントと言って良いかと思います」

と、安田氏と同じく同社の災害支援推進室で防災模試の担当を務める竹口氏が、誕生の経緯を説明してくれた。Jリーグの思いと、ヤフーのコンテンツが目指すものが一致して生まれたイベント。蓋を開けてみると、当事者も最初は思ってもいなかった“効果”を生み出したのだそうだ。

「このクラブ同士の戦いは、ファンの防災模試の点数に加えて、ファン・サポーターがどれだけTwitterで防災・災害への備えについてツイートするかも点に加算されます。応援クラブの対象ツイートのリツイートや、防災グッズの購入など、防災に関わる行動を“#防災ワンアクション”と“#クラブ名”をつけてTwitterに投稿すると勝ち点1を獲得するといった具合です。すると、やっぱり勝負ですから、何としても勝ちたいと思うサポーターは“みんな、もっと熱心にやろうよ!”というような発信をして周囲を鼓舞します。つまり、応援の気持ちひとつで連帯感を生み出すことができる。そのような連帯感は、災害の時にもとても重要なんです。クラブを勝たせるために防災模試で競い合う気持ちが生み出す一体感は、いざ災害が起きたというときには大いに活かされるのではないかという気づきに繫がりました」(安田氏)

選手もファンもみんなで盛り上げる気持ちが防災意識の向上へ
「そなえてバスケ杯〜ファン防災アクション〜」開催中の仙台89ERSの試合会場の天井ビジョンにはこんな演出も ©︎B.LEAGUE

この「ソナエルJapan杯」「そなえてバスケ杯〜ファン防災アクション〜」の期間中には、クラブやチームによっては試合会場にブースを設けたり、試合会場の上方にあるビジョンで観客に企画への参加を誘導するなど、この企画の告知への協力もあったという。まさに各クラブ、チーム、そしてそれを応援するファンが一体になり企画を盛り上げた。ただ、スタートするまではどこまでできるのか不安があったと語るのは竹口氏と共にヤフー防災模試を担当する武田氏だ。

広島ドラゴンフライズのホームゲーム会場で設けられた「そなえてバスケ杯〜ファン防災アクション〜」のブース。観客はここに来て防災模試を受験することができる ©︎HIROSHIMADRAGONFLIES

「企画を開催するに当たっては、まずリーグに説明をして、そこから各クラブに広めていただくという形をとっていきました。クラブとしては試合興行が最優先ですし、イベントのためのブースを立てるのにはコストが掛かります。どこまでクラブの皆さんを巻き込んで良いのか、正直最初は難しいなと思いましたが、皆さんとても協力的で助けられました。普段からSNSでの発信が得意だったり、防災意識の高いクラブはSNSの施策も積極的に取り組んでくださいました。子どもたちのスクールを運営しているクラブは、子どもたちも一緒に模試にチャレンジしてくれたり。結果的にそういう積極的なクラブは点数が良かったですね」

選手の中には、Twitterで頻繁に呟き、インフルエンサー的な役割を持っている人もいる。そういう選手が自分の体験を交えた投稿をしてくれると、ファンのリプライも多く盛り上がる。それはスタジアムで応援しているときと同じで、隣に座った見知らぬ人でも、同じクラブ、チームを応援しているというだけで声を掛け合い、一緒に喜んだり悔しがったりできる。それがいざというとき、起きてはほしくないけれども災害が起きたときにきっと役立つであろうことは想像に難くない。ヤフーの皆さんも「この取り組みは、防災意識の向上にとてもフィットした取り組みであることが分かった」と口を揃えた。

スポーツ業界だけではなく、広く活用が進む防災模試
「ソナエルJapan杯」「そなえてバスケ杯〜ファン防災アクション〜」を開催するに当たって、裏方的な役割、縁の下の力持ちを担ったのはヤフー防災模試の技術責任者であるエンジニアの柿崎氏だ

「私は普段は、ヤフー防災模試を始めとする社会貢献関連の取り組みの技術面を見ています。今回のイベントでは防災模試やTwitter投稿による点数の集計を担当しました。集計を間違えるとイベントそのものが終わってしまうので、とても緊張しながら作りましたし、開催期間中はいろいろ対応に追われて眠れなくなるんじゃないかと思いましたが、結局眠れました(笑)。今までこういう取り組みは、一度作ったらなかなかエンドユーザーの反応というのは自分の目では確認できないんですね。でも、今回は実際に使っていただいているシーンを何度も見て不思議な気持ちになりましたし、防災についてのツイートがいっぱい流れてきて、中には防災模試がとても勉強になったという感想も多く、社会に対して良いことができたなと実感することができました」

これは、冒頭で安田氏が語ったヤフーの“企業としての社会的責任”を果たす上でも、社員一人一人のモチベーションに繋がるようなユーザーの反応が得られたということだろう。今後は、各リーグと連携の継続を検討することはもちろんのこと、その他のスポーツにも広げていきたいと皆さんは語る。スポーツ以外では、ある会社が顧客向けだけでなく、社員の意識を高める、啓蒙するために使いたいということで問い合わせが来ているそうだ。

「保険会社は、災害で被害が発生するとお客様への保険金支払いという本業に直結します。契約しているお客様は、被害の補償はできるだけ保険金で賄いたいという気持ちがありますから、スポーツリーグとは違う意識の持ち方になるかも知れません。いずれにせよ、防災に注目されることではあるので、前向きに取り組みたいと思っています」(安田氏)


ヤフー防災模試は「速習編」「地震編」「台風・豪雨編」のすべてを受けると合計60問ほど。いきなり全部はかなりハードルが高いが、知っていそうで知らなかったことを学べるのは思いのほか楽しい。この日お話を伺ったメンバーには、お子さんにもやらせているという声もあった。“防災”というと何だか堅苦しいが、楽しく学びチーム同士で競い合ううちに、意識を高められれば、その時のための大きな備えになるに違いない。

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)

photo by Shutterstock

資料提供:ヤフー株式会社

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