夏休み自由研究におすすめのスポーツノートって?
パラサポWEB / 2023年7月31日 11時0分
小学生の子どもを持つ親にとって、夏休みの自由研究のテーマ探しは悩みどころ。テーマに迷っているのであれば、トップアスリートが実践している “スポーツノート”はいかがでしょうか。スポーツノートは、子どもの「速く走れるようになりたい」、「もっとサッカーが上手くなりたい」といった前向きな気持ちを後押しするだけでなく、今後、人生を切り開いていく上でも大きなヒントになるそう。
そこで今回は、松岡修造氏が主宰する『修造チャレンジ』でメンタルサポートの責任者としても活躍する佐藤雅幸氏(専修大学教授・同大学スポーツ研究所顧問)に、スポーツノートのメリットと小学生高学年におすすめのスポーツノートの作り方について伺いました。ぜひ参考にしてみてください。
成功しているアスリートはみんなノートを持っている!メジャーリーガーの大谷翔平選手やフィギュアスケート金メダリストの羽生結弦選手、さらには将棋の藤井聡太棋士など一流と呼ばれる人の多くは、小学生の頃からノートをつける習慣があったそう。また、サッカー元日本代表の中村俊輔選手も、著書『夢を叶えるサッカーノート』の中で、17歳から目標や課題、自分に問いかける言葉、自己評価などを赤裸々に綴り、ノートを足掛かりに数々の目標を達成してきたと明かしています。
なぜ、成功しているアスリートは皆ノートをつけているのでしょうか。
スポーツノートを推奨する佐藤教授は、夢や目標だけでなく、日々の運動に関するスケジュールやトレーニング内容、感想などを記録し続けることで、成功しやすくなると言います。
「これまでに、ゴルフ、テニス、スキーなど様々なアスリートのメンタルサポートをしてきましたが、良い成績を残す選手はほぼ間違いなくノートを持っていました。そして、特に頑張っても成果が出ないときやパフォーマンスが落ちたと感じたときにノートを上手に活用するんですよ」(佐藤雅幸氏 以下同)
佐藤教授によると、アスリートにとってスポーツノートは成長記録であると同時に、コーチやブレーンとしての役割を担っているそう。つまり、自分を分析したり、困った時に助けを求めたりできる最も身近な存在がスポーツノートなのです。
書くだけで技術もメンタルもレベルアップ!? スポーツノートのメリットノートに記録することが成功につながるとは、具体的にどのような仕組みなのでしょうか。スポーツノートの役割やメリットについて、佐藤教授に教えてもらいました。
「スポーツノートはスポーツ心理学に基づいたメソッド。記録し続けることで次第に学びや気づきを得られるようになるものです。例えば、どんなトップアスリートでも常に右肩上がりというわけではなく、大小さまざまな波を経験していますが、うまくいかないときに慌てたり無茶をしたりすると混迷を深めることになりかねません。でも、日々のデータを記録しておくと自身のトレンド(上昇傾向や下降傾向)を把握できるので、『今はうまくいかなくても心配ない』と前向きに捉えられるようになるんです。
さらに、その時々の素直な感情や思考も記録しておけば、ノートを見返すだけで自然と自分に向き合える。自分を客観視することは、技術を磨いたり頭の中を整理整頓したりする上でとても大切なんです」
ノートをより効果的に活用するためには、目標だけでなく心と体の状態も記録して可視化する必要があるよう。ノートの内容が濃くなるほど、自ずと技術やメンタル面がレベルアップして、成功につながりやすくなると教授は言います。
では、小学生がスポーツノートをつけたときにメンタル面でどのような変化が期待できるのでしょうか。具体的な例をご紹介します。
頭の中を整理整頓できるようになる行動や感情を書き出すことで頭の中が整理整頓され、自分でも気づかなかった本音や本質が見えるように。この『記録と整理整頓』を繰り返すうちに、自分の考えを文章化・言語化する力も身についていきます。
自分の状態を俯瞰で見られるようになる自分のことを客観的かつ多角的に分析する必要があるため、メタ認知能力(もう一人の自分の目線で自分を認知する力)が自然と高まります。
夢や目標に向かって果敢にチャレンジできる失敗したときにどんな状態でどんな気持ちだったかを記録し、問題点を分析することで、成功のヒントを得られるようになります。
夏休みの自由研究用:スポーツノートのやり方子どもの「できるようになりたい」を叶えよう!
ところで、スポーツノートには何を書けばいいのでしょうか。なんと、自由なんだそう。自分で好きなように内容を決めることができます。
ただ、それでは始めにくいので、今回は小学5・6年生の夏休みの自由研究を想定したスポーツノートの作り方を佐藤教授にご指南いただきました。
最初に決めるのは、ノートをつける期間。一週間程度の実施でも研究結果が得られます。期間が決まったら、ゴールとなる目標を設定し、その目標を達成するために必要なプロセス(手順)を逆算的に決めていきます。
「ここで重要なのは、親が決めたことをやらせるのではなく、子どもが自ら目標やプロセスを決めること。もし、子どもが悩んでいるようなら、何気なくヒントやアドバイスを与えて、自分で発見・決定したように演出してあげるのもいいかもしれません。
トレーニングも難しいものじゃなくていいんです。例えば、これまでの練習や取り組みを振り返ってみるとやっているつもりでやってないことが意外とあったりするのでそれを試してみるとか、すごく単純な練習をしてみるとか、それくらいでも十分。ときには、憧れの選手の映像を観ながらイメージトレーニングをしてもいいですね。同時に自分の映像も撮影して、見比べて分析してみると、イメージ(感覚)と現実のズレを正すこともできます」
期間中は、トレーニングの内容だけでなく、日付、天気、気温、体調、睡眠時間、トレーニング前の気分や疲労度、トレーニングの時間など、あらかじめ決めておいた項目を毎日必ず記入します。一見すると目標達成には関係ないように思える項目でも、気分や体調に影響を与えている可能性があるものは記録しておくと良いそうです。
そして一日の最後に、上手くできたこととできなかったこと、トレーニング後に感じたことなどを書き込み、どうしたらもっとよくなるかを分析します。
「このときに大切なのは、自分を俯瞰して分析すること。先生や尊敬する人、信頼できる友だちだったら自分にどんなアドバイスをしてくれるかを想像すると書きやすいと思います」
自由研究の最終日は、ノートの記録全体を見返して、トレーニング内容や気分の移り変わり、目標が達成できたか、今後はどうしたいかなど、総評を書き込みましょう。
すぐに始められる! 自由研究用スポーツノートの作り方
■ 最初に決めておくこと
① 実施期間
小学生の自由研究なら一週間がおすすめ。夏休み中にやり遂げられる日数を設定します。
② 最終目標
スポーツノートの目的は目標達成ではないので、お子さんの意見を尊重してください。
③ プロセス
目標を達成するためにやるべきことを具体的に書き出します。いくつあってもOK!
④ 基本データの項目
何を記録するかは自由。無理のない範囲でできるだけたくさんのデータを集めましょう。(例:日付、天気、気温、体調、睡眠時間、トレーニング前の気分や疲労度、トレーニングの時間など)
■ ノートに書くこと✔︎ 基本データ
✔︎ トレーニングの内容(何をどのくらいやったか)
✔︎ トレーニングの感想(ネガティブなことでも感じたまま吐き出す)
✔︎ 一日の評価と分析
✔︎ 総評 ※最終日のみ
〜大人のサポート〜
内発的な動機付けで子どもの潜在能力が芽を出す
子どもはスポーツノートに取り組むことで、能力や技術を高めながら心を育んでいきます。そんなとき、大人はどんなサポートをしたら良いのでしょうか。
スポーツ心理学者として数多くの子どもと接してきた佐藤教授は、過剰に口や手を出さず、自らの力で成長できる環境をつくることを勧めます。
「子どもは、どんな子でも潜在的な能力が備わっています。もしかしたら、まだ掘り起こされてないものがたくさんあるかもしれない。
子どもの能力を引き出すために大人が機会を与えてやることも大切ですが、まずは子どもの中にある素材にフォーカスしてほしいんです。なぜなら、能力を伸ばすには、本人の興味や関心から生まれる意欲(=内発的動機)が必要だから。
理想は、子どもが自発的に行動すること。難しいときは自発的であるように思わせてやるといいでしょう。例えば、良さそうな本があったら読むように促すのではなく、子どもがよく座る場所の近くにさり気なく置いておいて、子どもが自ら手に取るようにするとか。親が生徒になって、『これ、教えて』と質問したりクイズを出してもらったりして、子どもが先生になるような場面をつくるのもいい。子どもには水をやって栄養をやってのびのびと育ってもらう、そういうイメージですね」
子どもに任せていると、「何をやっているの!」、「全然ダメじゃん」と言いたくなることがありますが、日増しに心と体が変化する成長期の子どもにとって失敗や迷いはつきものだそう。
「子どもは急激に背が伸びたり体つきが変わったりして、それまでできていたことが突然できなくなったりするもの。でも、それは仕方のないことで、スランプとは違います。それに、オーバートレーニングになるくらいなら練習を休んでいいし、多少の不安や緊張なら抱えていたっていいんです。
やってほしくないのは、いいことにしか目を向けないこと。失敗や不安の中に隠されている成功のヒントを見落とさないようにしてあげてください」
今、子どもの心や体がどのように機能しているのか、そのメカニズムを理解して受け止める。そうやって親が冷静でいれば、多感な時期に差し掛かった子どもも安心して成長できるのかもしれません。
スポーツノートは誰のためでもなく自分のために書くものです。記録する内容も自由に決められるので、年齢や体力、得意・不得意に関係なく、小学生でも安心して始めることができます。ノートをつけながら自分と向き合い、心と体の変化を知ることは、子どもにとっても見守る親にとっても、大きな発見やきっかけになるはず。もしかしたら、今まではどうせ無理だと諦めていたことにも、前向きに取り組めるようになるかもしません。
この夏、お子さんと一緒にスポーツノートを始めてみてはいかがでしょうか。
【教えてくれた人】佐藤雅幸さん
1956年生まれ、山形県酒田市出身。日本体育大学大学院体育学研究科修士課程修了。国内外の研究所でスポーツ心理学を研究。専修大学経済学部教授・同スポーツ研究所顧問。
<参考図書>『ジュニア選手のための夢をかなえる「スポーツノート」活用術
トップアスリートが実践するパフォーマンス向上ポイント』
佐藤雅幸/株式会社メイツユニバーサルコンテンツ
text by Uiko Kurihara(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock
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