エスコンフィールド、バリアフリーはどう?
パラサポWEB / 2023年8月7日 7時0分
「世界がまだ見ぬボールパーク」をキャッチコピーにオープンした、北海道日本ハムファイターズの新球場エスコンフィールドHOKKAIDOと、その周辺を含めた北海道ボールパークFビレッジ。開業以来、野球ファン以外からも大きな注目を集めています。
今回はそんなエスコンフィールドを、自称「日本で一番、スタジアムで野球観戦している車いすユーザー」のブッキーこと伊吹祐輔さんが訪問。バリアフリー、アクセシビリティの面から新球場をレポートします!
1.エスコンフィールドへのアクセスまず気になるのは、球場へのアクセス。2日間の取材での球場の行き帰りの中で、シャトルバス、徒歩、車の3つの方法を試してみました。
1.1 シャトルバスでは?Fビレッジに向かうシャトルバスは、JR北広島駅、JR新札幌駅、JR野幌駅、新千歳空港の4か所から出ています。今回はJR北広島駅から乗車してみました。
JR北広島駅から運行されているシャトルバスでは、案内係のスタッフさん、運転手さんがまるで「車いすユーザーが利用するのが当たり前」といった感じで、テキパキと乗り降りに対応していただきました。
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そして、バスに揺られること約5分で到着。降りると、直線的なフレームの外観と、自然光を取り入れる一面のガラス壁、そして、巨大なボトルが目を引くCoca-Cola GATE(1塁側ゲート)がすぐ目の前に! 駅からここまで何のトラブルもなく、実にスムーズでしたから、これなら車いすユーザーも何の心配もなくシャトルバスを利用できそうです。
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ただ、JR新札幌駅とJR野幌駅発着のシャトルバスでは車いすユーザーは乗車できないとのこと(2023年6月時点)。今後、どの駅からでも車いすでシャトルバスに乗れるようになるといいですね。
1.2 徒歩では?エスコンフィールド~JR北広島駅間を徒歩で行くという選択肢もあります。取材班も初日の駅までの帰り道を徒歩で移動してみたところ、これが結構大変……。
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駅に到着するまで約30分という時間、距離もさることながら、平坦ではなくアップダウンの勾配が続く道が多いため、駅に着いたころにはさすがのブッキーさんもヘトヘトになってしまいました。よほど体力に自信のある車いすユーザーでなければ難しいかもしれません。
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車でのエスコンフィールドへの移動ですが、車いすユーザー専用の駐車場は1塁側、3塁側エリアにそれぞれ1カ所ずつ、入場ゲートから近い場所に設けられています。また1塁側は段差のない平坦な道、3塁側にはスロープの導線があるなど、入場ゲートまでの距離も含めてアクセスしやすく工夫されています。
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ただし、試合が行われる日に車いす専用駐車場を利用する場合、一般駐車場と同じく、北海道日本ハムファイターズ公式オンラインチケットサイト『Fチケ』、あるいは『ローチケ』で事前に駐車券を購入する必要があります(試合のない日は事前購入不要)。週末や人気カードの日はすぐに完売してしまうことも。早めのスケジューリングが望ましいかもしれません。
2.エスコンフィールド内のバリアフリートラブルもなくスムーズに移動を終えて、さあ、いよいよ待ちに待ったエスコンフィールド内へ――。
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入場ゲートをくぐり、真っ先にその目に飛び込んできたのは鮮やかな緑がまぶしい天然芝のフィールドと、そこで躍動する選手たち。大げさではなく、そんな光景がパッと目の前に広がりました。ブッキーさんも引き寄せられるように、よりフィールドを見下ろせる地点へと移動すると「いやあ、すごく近いねぇ」とニッコリ。もうこの時点で興奮を隠せません!
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なぜ、球場内に入ってすぐにそのような体験ができたのでしょうか?
その秘密は、エスコンフィールドの目玉の1つである「360度回遊型コンコース」にありました。文字通り、スタジアム内をぐるりと1周できるコンコースはとにかく幅が広く、天井も高いため開放感がタップリ。そして、注目したいのはその広さだけではなく、目線を遮るものがほとんどないこと。そのため、コンコースを移動する間は360度どこからでもシームレスにフィールドを望むことができるというわけです。
しかも、それは立って歩いている人や背の高い人だからできることではなく、ブッキーさんの目にも入場してすぐにフィールドが飛び込んできたように、車いすユーザーや小さなお子さんのような目線の低い人たちにも同様の体験ができるよう設計されていました。まさに、どこからでもバリアフリーな観戦体験ができる球場というわけです。
そういった球場づくりによってか、コンコースを歩いていると、家族連れ、カップル、若者、老夫婦など多様な方々とすれ違います。車いすユーザーも多く、「ここはパラスポーツの競技会場かなと思うくらいでした」とブッキーさんが目を丸くして驚いていたほどでした。
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左手側ではフィールドや世界最大級の大型ビジョンをチラ見しつつ、ファンの声や熱気を肌で感じながら、右手側にはメニュー豊富なフードエリア、様々なグッズが並ぶオフィシャルショップ、そして、ダルビッシュ有投手・大谷翔平選手の巨大ウォールアートと、目・耳・鼻など五感で楽しめるスポットが盛りだくさん。野球を見なくても、ただ歩いて移動しているだけで楽しい――そんな空間が広がっていました。
2.2 好きな場所から観戦できる車いす席ひと通り散策を終え、車いす席に到着。エスコンフィールドの車いす席は、1F FIELD LEVEL・2F MAIN LEVELを中心に、1塁側・3塁側・外野・バックネット後方とさまざまな場所に合計154席と、数も豊富。エスコンフィールドの座席数は約30,000席(入場券での立ち見の来場者を除く)であり、車いす席の比率は約0.5%。これは日本の野球場の中ではトップクラスの数字です。ごく限られた席からの観戦ではなく、これらの中から自分の好きな席を選べるのは嬉しいですよね。
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今回、観戦したのは2F MAIN LEVELのライトスタンド。もちろん、この席からも視線を遮るものはなく、フィールド全体を見渡せます。それでいて選手を近くに感じる臨場感も得られる設計になっているので、野球観戦を全力で楽しむことができました。
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また、この車いす席の嬉しいポイントのひとつが、同行者に用意された座席。車いすユーザーは、介助をする人と一緒に行動することもありますし、家族や友人と一緒に観戦することももちろんあります。その際に、車いすを使わない人はパイプいすに座ることが多いですが、エスコンフィールドで使用されているのはファイターズマークがプリントされた、座面・背もたれともにクッション性が抜群のいす。これなら同行者も疲れることなく長時間でも快適な観戦ができそうです。
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多目的トイレも各階に設置されています。一般の観客が使用できるエリアには、1F FIELD LEVELに4ヵ所、2F MAIN LEVELに4ヵ所、3F STAR LEVELに2ヵ所あるため、車いす席からの距離も遠くなく、安心して長時間の観戦にも臨めそうです。また、一般客が利用できるエレベーターは19基あり、「あの階の、あのお店のご飯が食べたい!」となっても、気軽に移動できます。
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障がいのある人が楽しめるよう工夫されていたエスコンフィールド。車いすユーザー以外の人も気軽に誘いたくなるような仕組みづくりがなされています。
3.1 子ども連れに嬉しいベビーカー置き場Fビレッジでは多数の車いすユーザーを見かけましたが、親子連れの姿もたくさん。野球観戦で座席にいるときにベビーカーを置いておける場所が、各階に3か所以上、全部で12か所あります。また、おむつ交換や授乳ができるベビールームも各階に設置されており、小さな子どもと一緒に家族で球場を訪れる方は頼りにできそうです。
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障がいのある人や高齢の方を始め、さまざまな理由で歩くのに不安をもつ人のためにFビレッジが提供しているのが、免許不要で走行できる近距離モビリティ「WHILL」。一見すると電動車いすのようですが、障がいのある人でなくとも利用可能です。乗り心地の良さはもちろん、手元で直感的に操作できるので初めての人でも簡単に移動に使うことができます。
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この「WHILL」は、球場内では車いす席を購入した人向けに、その家族や同行者も含めて事前予約の無料オプションとして提供。また、球場外のFビレッジ移動周遊サービスとしては事前予約なし、どなたでも無料でレンタルすることが可能となっています。また、試合のない日にも無料でレンタルすることができ、担当者によると既に多くの方が活用しており、台数が足りなくなるくらい毎日稼働しているとのこと。要望を受けて既に増車していますが、状況を見ながらさらなるサービス拡大のために配置台数を増やしていくそうです。
外出して長い距離を歩くのに不安がある……。そんな方も、少し気楽に球場に来られるかもしれません。
3.2 球場の外も充実!自分なりの楽しみ方を見つけようエスコンフィールドだけはでない、Fビレッジの何よりの魅力が周辺施設です。地域特産品やアウトドア専門テナントなどが入っている情報発信基地「THE LODGE(ザ・ロッジ)」、季節ごとに北海道の自然を楽しめる「F VILLAGE GARDEN」をはじめ、親子で遊べる「F PLAY FIELD」や小さな子ども向けに多様な遊具が用意されている広さ1900㎡の「リポビタンキッズPLAYLOT by BørneLund」、テントや用具がなくても気軽にキャンプ体験ができる「ALLPAR(オルパ)」など、野球を見なくても1日楽しく過ごせてしまうほどに、様々な施設が充実しています。
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球場の外では、元気いっぱいに遊ぶ子どもたちや、ベンチでひと休みされている方など、皆さん思い思いの過ごし方をされていました。エスコンフィールドの外にも多目的トイレは2ヵ所設置されており、高低差がある場所もスロープで移動できるようになっていたりと、車いすユーザーも周辺施設を楽しめるようになっています。試合のない天気のいい日に、周辺施設だけ楽しむ、なんてこともよさそうです。
さまざまな楽しみ方とバリアフリーの仕組みづくりがなされたエスコンフィールドは、ブッキーさんの心にも強く残ったようです。
「野球を観るのはもちろんですが、野球以外のことでこれだけ楽しめるのって、本当にすごいですよ。だから、自分以外の野球に特に興味がない誰かと行っても楽しめることが想像できるんですよね。僕は一人でも球場に行きますし、一人でも楽しめるけど、やっぱりみんなと一緒に行きたいじゃないですか。エスコンフィールドは『誰もが楽しめる球場』を目指して作り上げている途中だと思いますが、自然とそうなっていきそうな期待感がありますよね。同じ空間にいながら、それぞれが楽しいと思う時間を過ごせるボールパーク。これからも応援したくなりますね」
球場に来たからといって野球観戦だけにとらわれず、訪れた人がそれぞれのスタイルで楽しい時間を過ごせる場所・空間。取材を通して、そうした球場の姿と、課題がないわけではなくとも、多様な人が楽しめるように運営・設計においてさまざまな工夫がされていることが感じられました。
エスコンフィールドを含む北海道ボールパークFビレッジは、これが完成形ではありません。障がいのある人もない人も、子どもも大人も高齢者も、何のバリアを感じることなく楽しく過ごせる空間へ――この先、どのような発展・進化を遂げ、新たなバリアフリーを発信する『街』となっていくのか、これからも期待です!
text by Atsuhiro Morinaga
edited by Parasapo
photo by Haruo Wanibe
※本記事は2023年7月時点での情報を元に執筆しています。最新情報は北海道日本ハムファイターズや北海道ボールパークFビレッジの公式WEBサイトなどをご確認ください。
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