車いすバスケットボール・鳥海連志、プロ転向で広がる無限の可能性
パラサポWEB / 2023年10月13日 18時55分
「覚悟をもってプレーする」。車いすバスケットボールのスター選手、鳥海連志がプロ転向を宣言。「パラスポーツのシンボルのような選手になりたい」と語った。
ことし3月にWOWOWを退社。9月から新たにアシックスと所属契約を結び「アシックスの一員として、そしてプロアスリートとして、今後よりパフォーマンスを向上させ、いろいろな影響を与えられるプレーヤー、人間になっていきたい」と決意を新たにした。
華やかなスポットライトを浴びて記者会見に登場した 輝きを放つ鳥海のスター性アシックスがプロのパラアスリートと契約を結ぶのは初めて。同社の廣田康人社長は所属契約をした理由のひとつに「東京パラリンピックで活躍したスター性」を挙げ、「鳥海選手が持つ感性や発想、さまざまな活動にも注目している」と期待を寄せた。
プロ転向にあたり「スポーツ以外についてもチャレンジしたい思いがある」と力説した鳥海。アシックスから一方的にサポートを受けるだけではなく、商品開発のフィードバックなどをすでに始めていると明かし、ファッションの分野に踏み込む野心を見せた。
左から記者会見に出席した甲田常務執行役員、鳥海、廣田社長記者会見に登壇した甲田知子常務執行役員は「海外選手とのマッチアップなど、ライフスタイル系のコミュニケーションに登場していただくのも楽しいかも」とコメント。パラスポーツでは国枝慎吾氏が所属契約を結んでいたユニクロの広告に度々登場しているが、鳥海もアシックス社の広告やカタログを飾るモデルとして活躍の場を広げるか、期待せずにはいられない。
アシックスとのプロ契約を発表。鳥海は社員食堂も使えるようになるとか鳥海の名が一気に浸透したのは2021年の東京パラリンピック。車いすバスケットボール日本代表戦士は、銀メダルを獲得した表彰台でもアシックスの日本代表公式スポーツウエアを着用していたが、アシックス社との縁はそれだけではない。
同社のブランド、オニツカタイガーのシューズを愛用していた父の影響もあり、プライベートでもオニツカタイガーをよく履いているという。
「これからは今までにしてこなかったアメカジにもチャレンジしていきたいし、より洗練されたウエアを着用できるのは楽しみです」鳥海はこう明かす。
「父から誕生日などにプレゼントされたときから履くようになりました。スタイリッシュであり、ド派手でガツンとしたシューズなど、インパクトがあるところが好きです」
かねてより、義足のシルエットが出るようなズボンなど足元に目が向くファッションにこだわりがあると話している鳥海。この日はオニツカタイガーの新作スーツを着用したこともあり、記者発表では義足を露出する場面はなかったが、「僕は義足というもの対して、障がい者という先入観ではなくて、かっこいいという言葉がまず出てくるようなスタイリングをしたいと思っています」
「本当は短いズボンで義足を見せたかった?」との質問には「皆さんに見てもらう場では、どうしても少年くさくなるので……。今日はカチっとしたときにハマる新作を着用しました」 覚悟の裏にあった先人の存在感プロ転向にあたり、影響を受けた人物がいる。ことし1月に現役を引退した車いすテニスの国枝氏だ。
「パラスポーツ界でプロといえば国枝さん。あれだけ長い期間、プロとして活動することはすごいことだと思うと同時に、国枝さんの流れに乗って、今、車いすテニスでは若い選手がプロ宣言をしている。車いすバスケットボールでもプロを目指す選手がこれからどんどん出てきて欲しい思いもあるし、僕自身がプロとしてどれだけ成績を残していけるか、チャレンジだと思っています」。
その国枝氏と食事に行き、先人の話も参考にした。
「どれだけのプレッシャーがあり大変なのか、国枝さんならではの話を聞いて、やはり体験してみないとわからないと思った。そして、自分がプロになる覚悟を強くしました」
3x3の大会「Push Up」を主催するなど活動の範囲は広い車いすバスケットボールでは、香西宏昭に続いて2人目のプロ選手になる。
「(日本では近年、企業が障がい者雇用の一環として選手を雇う)アスリート雇用が浸透し、(香西選手以降の)プロ選手がなかなか出てこなかったのではと思う。アスリート雇用も一つの形だ」としたうえで、自身がプロ転向を決断した理由について「競技環境に専念できることは変わらないんですが、プレーだけではなく、どんな発言をしていくか、どんな行動をとっていくかを含めてさらに成長したいというのが一番の理由。プロの方が、より自分らしく、多角的にアプローチできると考えました」
パリパラリンピック前年のことし、24歳でプロに転向した鳥海 目標はパラリンピックで連続メダル獲得車いすバスケットボールの日本代表はパリ2024パラリンピックの出場権をまだ獲得していない。来年のアジアオセアニアチャンピオンシップス(タイ)、世界最終予選(フランス)で出場権獲得を目指す。
最後は「パリでもメダルを獲得できるように日本代表チームを引っ張っていきたい」と言葉に力を込めた。
text by Asuka Senaga
photo by Atsushi Mihara
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