【アジアパラ】強豪を撃破! パリパラリンピック内定の八木克勝は進化を求め続ける
パラサポWEB / 2023年10月26日 15時10分
進化を求め続けてきた男が、大きな切符を手にした。
杭州アジアパラ競技大会・卓球シングルスの決勝が10月25日に行われ、男子クラス7で八木克勝が優勝し、パリ2024パラリンピックの出場権を獲得した。2021年に実施された東京2020パラリンピックに続いて2大会連続出場を決めた八木は「まずは、パリ内定ということで嬉しいです。パリは、まだまだ先ですが、予選リーグを突破してメダルを狙えるところまで行ければいいなとは思っています」と東京パラリンピックで届かなかったメダル獲得に意欲を示した。
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今季絶好調の勢いを、そのまま発揮した。象徴的だったのは、準決勝だ。相手は、東京パラリンピック王者の閻碩(中国)。バックハンドで台上に球を置き、相手がつないできた球をフォアで攻める戦いが効いた。第1ゲームは9-7から10オールに追いつかれたが、14-12で振り切った。第2ゲーム、第3ゲームともに11-9と競り合いを制して3-0。大きな雄たけびを上げながらのジャンプで、会心の手応えを表現した。
左の強打を駆使する難敵をストレートで退けた八木の勢いは止まらず、決勝では、東京パラリンピックの予選ラウンドで敗れた廖克力(中国)もストレートで撃破。「今季は2勝0敗。3-2、3-1で勝っているけど、今回3-0で勝てたのは、ちょっとビックリ」と振り返る会心の内容だった。優勝を決めると、両腕を突き上げ、スタンドから声援を送った仲間たちに応えた。
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八木は、先天的に両腕に障がいがあり、ひじから先が短い。左右に振られる球に追いつくために、鍛えた足腰で動き回る。相手の強打も全身で受け止めるように正面に回って力を補う。球が来るであろうポジションに少し早く入り続ける必要がある。勇気を持って欠点を補う戦いぶりに「僕は(障がいで)手が短いので、一歩勇気を持って頑張ってやっている。何か、人生がちょっと苦しいなと思っている人がいたら、八木が(短い)手を伸ばして頑張っているから、自分も頑張ってみようと思ってくれる人がいたらいい」とメッセージを込めて球を打つ卓球選手だ。
昨年、Tリーグのチームを持つ琉球アスティーダとマネジメント契約を締結。健常者の日本代表で活躍する吉村真晴や松下大星を参考にファンへの接し方を学び、SNSでの発信も始めた。この日は、準決勝と決勝の2試合があったが、試合の合間にも結果を報告するなどサービス精神旺盛。元来SNSは好きではないと言うが、パラスポーツの魅力を発信できるようになるために取り組み始めた。
東京からプレーが進化! パリに向けてさらなる進化を模索中![](https://parasapo-wp-prd.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/wp/wp-content/uploads/2023/10/26115952/a7b1ce548c933a099936e93a8ba35251.jpg)
八木の特徴は、進化を求め続ける姿勢にある。東京パラリンピックに出場したときとは、プレーも変わっている。以前は、表面を長い粒が覆う「粒高」ラバーをバックハンドで使用。球が跳ねずに制御しやすく、来た球の逆回転で返せる特徴があった。しかし、今は、表面にざらつきがあり、回転をかけにくいが、相手がかけてきた回転も消しやすく無回転返球になりやすい「アンチ」ラバーに変更。コントロールが難しくなり、なかなか成績は向上しなかったが、約1年の試行錯誤を経て打ち方が定まってきた。今季は、わずか1敗と好調をキープ。不規則な回転になるアンチラバーでの返球からチャンスを作り、相手が攻めずにつないできた球を打ち込むスタイルを確立した。
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今後は、相手が八木の戦い方に慣れて来る可能性もあるが、現状に満足せず、さらなる進化を狙う。八木は「反転(ラリー中にラケットの握りを変えてフォア側とバック側のラバーを入れ替えて打つ)を入れて、相手をビックリさせるプレーを考えています。フォアでもアンチを使うし、バックでも裏(ラバー)を使うみたいな」と新たな戦い方のイメージを描いていた。進化を求め、勇気を持って挑戦し続けた先、2度目のパラリンピックで八木はどんな姿を見せるのか、楽しみだ。
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edited by TEAM A
text by Takaya Hirano
photo by Takamitsu Mifune
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