激しいライバル対決でパリレースが白熱! 梶原&里見が連勝記録を伸ばしたパラバドミントン国際大会
パラサポWEB / 2023年11月15日 10時24分
11月7日から東京・国立代々木競技場第一体育館で「ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2023」が開催された。
パラバドミントンは、パリ2024パラリンピック出場をかけたポイントレースの真っ最中。10月の杭州アジアパラ競技大会に続き、今大会も激しいライバル争いが繰り広げられた。
連勝記録を伸ばして笑顔を見せる里見は、パリパラリンピックの金メダル候補だ12日に行われた各種目のファイナル。その舞台に進出した日本勢のうち、勝利で飾ったのは、2021年に開催された東京パラリンピックで金メダルを獲得した里見紗李奈(WH1)、梶原大暉(WH2)だ。連勝街道を突き進む車いすの2大エースは、「(昨年の国際大会では、いつ負けるか不安だったが)いまは負けたくない気持ちが強い」(梶原)、「ひっそりと記録を伸ばす」(里見)と話しており、それぞれ勝負にこだわる姿勢を貫く。
2人の連覇はどこまで続くのか。もはや負けたほうがニュースになるのではないかと思わせる強さを誇るが、その一方で食らいつく相手を退ける苦労や必死さも垣間見える大会だった。
93連勝も反省と課題を挙げた梶原今大会で連勝記録を「93」に伸ばした梶原は、ダブルスのペアである村山浩がコンディション調整を優先させてアジアパラから大会に出場していないため、シングルのみにフォーカスした。
今大会で連勝記録を更新した梶原予選ラウンドは日頃練習しているクリアとカットの打ち分けを試すなどして順調に突破。準決勝でドイツ選手にストレート勝ちしたものの、15点取られるゲームもあり、「完璧を求めすぎるあまり、周りが全く見えていなかった」「冷静だったら調整できたショットを意固地になって続けてしまった」と冷静さを欠いたことを反省した。
そして決勝は、準決勝で松本卓巳を試合時間35分で下した香港選手と、1時間9分の熱戦を展開。ホームの声援を受けた梶原は、21‐15、21‐15のストレートで初優勝を決めた。
表彰台の中央に上がった梶原体力には自信がある。「攻め急がない」をひとつのテーマに掲げ、我慢比べの展開になった。だが、王者は動じなかった。最後は「後ろに張りつかせて前に落とす展開にできたかな」と落ち着いた表情で振り返った。
目下の目標は世界選手権シングルス2連覇。パリに向けては「勝ち続けられるよう、練習を頑張りたい」と話すにとどめた。
21歳の梶原は、巧みなチェアワークで穴のないディフェンスを披露した 決勝でライバルを下した里見一方、前日に「明日は絶対、勝ちたい」と話していた里見は、シングルス決勝で(連勝が始まる前、)最後に負けた相手、尹夢璐(中国)を21-11、21-19で下した。
アジアパラでは勝利したものの「体がボロボロになった」という尹夢璐との一戦も「今回はしんどくなかった」と里見。持ち味の力強いクリアで「(相手の)顎を上げさせてから前方に鋭いショットを落とす、攻撃的なプレーができた」と納得の表情で振り返った。
「記録を伸ばした気持ちがすごく強かったので、優勝できてホッとしています」と安どの笑顔を見せた女王が「すごくうれしい」と付け加えた言葉からは、プレッシャーと戦う苦しみと解放感がにじみ出ていた。
自身のドロップの好調さは前日のダブルス時に、確認できたこと。里見はダブルスの敗戦も糧にした里見がもうひとつパリランキングでトップの位置にいるのが、女子ダブルスWH1-2だ。しかし、里見・山崎悠麻ペアは中国ペアと対戦した準決勝でストレート負けを喫し、決勝進出はならなかった。
今大会は銅メダルの里見(左)・山崎組は世界選手権で巻き返しを狙うダブルスの練習が不足する中、「(大会前に)2人で動画を見て話しただけで、あれだけ競ることができた」(里見)、「手ごたえを感じた。(想定外に集中砲火を浴び)もうちょっと対応できたらよかったという悔しさもあるけど、まあこれからなので」(山崎)と前を向く。
女子ダブルスWH1-2の決勝は脅威を増している中国対決に「向こうが強いというより、こちらにコンビネーションや基本的なエラーがある。対策すれば簡単に負ける展開にはならない」と草井篤監督も話しており、今後2人はダブルスの強化に力を入れていくことを明かした。
立位のエース、藤野は準優勝パリパラリンピック出場濃厚の藤野は、表彰台で笑顔を見せた
現在、パリランキング2位でパリパラリンピック出場濃厚の藤野遼(SL4)は決勝で中国選手と対戦。「当たって砕けろ」の精神で挑めたという試合は、風の影響もあった第1ゲームで押されると、そのままストレート負け。
「(合宿などで打ち合う)梶原選手よりも厳しいカット、球質、そして日本人にはない配球に苦しめられました」
昨年、同会場で行われた世界選手権に続き、銀メダルに終わったが、「決勝の舞台は楽しかった」と振り返り、清々しい顔で会場を後にした。表彰台を狙うパリパラリンピックの前哨戦になる世界選手権には、ウエイトトレーニングで身体の土台を強化してから臨む。
なお、ダブルスでは伸び盛りの男子WH1-2の西村啓汰・松本卓巳組が準優勝。日本にとって明るい材料になった。
パリランキング9位から上昇を目指す混合ダブルスSL3-SU5の伊藤則子・今井大湧組はベスト16だった※世界ランキングは11月7日時点
text by Asuka Senaga
photo by X-1
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