全日本障害者クロスカントリースキーで優勝した川除と阿部。それぞれのシーズンが本格スタート
パラサポWEB / 2024年1月10日 9時25分
年明け恒例の「全日本障害者クロスカントリースキー競技大会」が、北海道・旭川の富沢クロスカントリースキーコースで開催された。ここでは北京2022冬季パラリンピック金メダリストであり、昨シーズンのワールドカップ総合王者の川除大輝、8ヵ月前に第一子を出産し、4大会連続のパラリンピック出場を目指す阿部友里香の“新たなスタート”をレポートする。
今シーズン初レースのクラシカル5kmを優勝で飾った川除 年間王者の新しいシーズンが幕開け6日に行われたクラシカル5km。障がいクラス・カテゴリーをコンバインド(合併)して争うが、予想されたとおり、日本チームのエース川除が得意のクラシカルで堂々の優勝を果たし、今シーズン初レースを飾った。
これまでは海外のレースを戦う合間に全日本があったが、2023-2024シーズンはまだ大きな大会がない。そんな中での幕開けは「いつもはワールドカップが初戦で緊張するが、今回はそうではなかったのでよかったかなと思う」と語り、リラックスした表情を見せた。
1月下旬のイタリア大会がワールドカップの初戦になる。
「(昨シーズン、ワールドカップ総合王者に輝き)皆さんから連覇を期待されていると思うが、メダルの色は何でもいい」と欲張らない。ワールドカップの急な日程変更などに対応しながら、全力で戦い抜く決意を固めている。
多くの課題を口にしたフリーでも「下りから平地へのつなぎやカーブはテンポよく滑ることができた」川除は翌日のフリー10kmも制して2冠を果たした。だが、本人は「平地はいい滑りができたと思うが、上りはまだまだ全然ダメ」と辛口評価。フリーは改善点が多いようで、上りの終盤で加速しきれなかったことで下りのスピードにつながらなかった、と振り返った。
社会人1年目。学生時代、年末年始といえば合宿だったが、今年はコーチの計らいで、地元の富山に帰省していた。その矢先の能登半島地震。「自宅の周りはあまり被害はなかったが、大きな揺れを感じた。余震も多くて心配な気持ちで旭川に移動した」と話した。
今大会の後は再び富山に戻り、健常者のレースに出場してワールドカップに備えるつもりだという。
ワールドカップでは「フリーでもメダルに食い込みたい」と語る川除「SNSには海外の選手が自国の大会で調整している姿が流れてきます。自分も頑張らないと、と刺激をもらいながら過ごしています。そんな中、イタリアのワールドカップに向けて、自分がどれぐらいの力で臨めるかという不安も少しある。やはり緊張するのかな。リラックスして臨めたらなと思います」
産後初のレースで優勝!そんな川除と同じ日立ソリューションズ所属で、合宿などで同じ釜の飯を食う阿部も、クラシカル5km(女子)で優勝。2023年4月に母になった阿部にとって産後初のレースを優勝で飾った。
「完走できてよかったです。走ってみないとわからなったけれど、思っていたよりも走ることができた」と安どの表情を浮かべた。
産後初のレースに挑んだ阿部日本障害者スキー連盟の長濱一年クロスカントリースキー・チーフコーチも「7月からチームに合流した阿部選手がここまで走れるなんて。びっくりしました」と評価した。
生後8ヵ月の愛娘を実家に預けて挑んだ2シーズンぶりのレースは「意外と緊張しました」。
阿部は続ける。
「周回コースの最終周ではさすがに心肺機能の低下を感じました。それに平地の多いコースなので、やはり腹筋など体幹周りがまだ弱くて(ストックの)押しにくさがありました」
ブランクの影響を感じながらも、今シーズンの目標である3月のワールドカップ(カナダ)に向けて「指標が定まった」と収穫を語る。
阿部は「平地は腕にきました」と話したが、産後初レースを見事走破した「短期目標を立てて、徐々にステップアップしていきたいです」
カラっとした口ぶりで語るが、2026年3月開催のミラノ・コルティナダンペッツォ冬季パラリンピック出場までのプランは順調に進んでいると言っていいだろう。
阿部のカムバックは、日本チームに明るい材料を提供した。
レース後、笑顔で写真に応じてくれた川除(左)と阿部text by TEAM A
photo by X-1
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