大学生知名度No.1パラアスリートはあの人?
パラサポWEB / 2024年5月25日 7時0分
「大学生って、パラスポーツのことをどれくらい知ってるんだろう?」
現役⼤学⽣がパラスポーツの魅⼒を発信する共創プロジェクト『パラスポデザインカレッジ(以下PDC)』がこの春、同世代の大学生を対象にパラスポーツの意識調査を実施。その結果や調査の様子をもとに、パラスポーツの面白さや楽しさをPRする動画コンテンツを作成しました。
東京2020パラリンピック開催前後の数年間を小中高で過ごした若い世代は、授業などでパラスポーツのことを見たり知ったりする機会があった人も多いはず。今の大学生たちはパラスポーツやパラアスリートのことをどれくらい知っているのでしょうか。気になる大学生のリアル・パラスポーツ事情に、PDCの調査から迫ります!
パラスポデザインカレッジ(PDC)とは
サントリーホールディングス株式会社とインターネットメディアのスポーツブルが連携し、大学生が若年層向けにパラスポーツの魅力を伝えていくプロジェクトとして2021年10月にスタート。メンバーはすべて大学生で構成されており、これまでSNSでの発信や、車いすバスケットボール天皇杯でイベントブースを企画運営、車いすバスケットボールの体験会の実施、大学生ならではの目線で紹介する車いすバスケットボールの選手名鑑など様々な企画にチャレンジ。若者ならではの感性とスキルを活かして、パラスポーツの魅力を届けるべく活動しています。
パラスポデザインカレッジWEBサイト:https://sportsbull.jp/paraspo-design-college/
大学も学年も違うメンバーがパラスポーツを合言葉に集うパラスポデザインカレッジ。多忙な学生生活の合間を縫って、意欲的に活動しています
今回の調査を実施したのは、PDCの3期生の皆さん。2023年10月から1年間の活動となっていて、今回の企画は2024年2月にスタートし、およそ4カ月かけて取り組みました。「パラスポーツで調査PR」というお題をもらった際は疑問だらけだったそうですが、そこはさすが頭の柔らかい大学生。自分たちでアイデアを出しながらつくり上げていきました。
それぞれの得意なことや視点を活かしながらアイデアを練っていきますphoto by parasapo調査はWEBアンケートと街頭でのインタビューの2つの方法で実施。100名以上の大学生が回答したその結果は?
パラスポーツを知ったきっかけは?まずは大学生たちのパラスポーツとの出会いから。パラスポーツのことを知ったのはどんなきっかけだったのでしょうか。さっそく結果を見てみましょう。
Q1の「初めてパラスポーツに触れた時期」は「小学生」がトップ!仮に回答者が大学1年生・19歳だとすると、2012年度~2017年度を小学校で過ごしていたことになります。
Q2の「パラスポーツを知ったきっかけ」では「テレビ」「学校」がワンツーで入る結果に。東京2020オリンピック・パラリンピックの開催が決まってから、パラスポーツがニュースやCMで取り上げられる機会が増えたと感じている方は多いかと思いますが、それらが今の大学生たちのパラスポーツを知るきっかけにつながっていたのかもしれませんね。
知っているパラスポーツの競技は?では、大学生に認知度の高いパラスポーツの競技は何なのでしょうか。
調査では、車いすバスケットボールが1位。続く車いすラグビー、車いすテニスと、東京パラリンピックでも日本代表がメダルを獲得した車いすの競技が上位に入っています。続いてブラインドフットボール(ブラインドサッカー)、パラ水泳、ボッチャが入る結果に。
競技に関しては、PRコンテンツ作成のため街頭インタビューでもこんな質問をしていました。
Q:ボッチャ/ゴールボールの絵を書いてください!
オリンピックにはない、パラリンピックのみの競技であるボッチャとゴールボール。突然こんなお題を出されても、読者の皆さんはちゃんと描くことができますか? では、大学生たちの“作品”を見てみましょう。パラスポデザインカレッジのSNSに動画が掲載されています!(Xのアカウント:https://x.com/ParaspoDC)
https://x.com/ParaspoDC/status/1792551653931192429 https://x.com/ParaspoDC/status/1793253156857713052正解もあれば、思わずフフッと笑みが出てしまうような珍回答も出たこのお題。知っている人もいれば知らない人もいる、と反応が分かれていた印象を受けます。
インタビューにチャレンジしたPDCメンバーにお話を聞くと、
「『全然分からないよ』というわけではなく、『ここまで出かかっているんだけど』という反応が多く、皆さん全く知らないというよりは、(正解まで)あともうひと踏ん張りみたいなところまではパラスポーツの認知度が進んでいるのかなと思いました」
「(絵を書くのと合わせて)話を聞いてみると、ルールまで知っている人は少なくても、こんな競技、というイメージを持っている人は多いのだなと感じました」
「ボッチャというお題に対してゴールボールを描いたり、別のパラスポーツを書いたり、自分が知っているパラスポーツを描いてくれた人が多かったと思います。競技名と競技が完全には一致していなくても、皆さんどこかでパラスポーツに触れているんだなという印象を感じました」
という声が。おぼろげながらパラスポーツについてイメージをもっている大学生はそれなりにいるようだ、という肌感覚をもったようですね。
Q:この用具を使う競技は何でしょうか?
パラスポーツの競技用車いす、パラ水泳のタッピングバーなどの写真を大学生に見てもらい、何の競技に使うのか答えてもらうというこのお題。皆さんどれくらい知っていたのでしょうか?
https://x.com/ParaspoDC/status/1792895841038225445PDCメンバーに感想を聞くと、知っている人と知らない人の差が大きかったという声が。しかし、知らなかった人からポジティブな反応もあったようです。
「車いすラグビー、車いすバスケ、パラ陸上の車いすの特徴を伝えた時に『すごく面白い』『もっと教えてほしい』という反応が返ってきたんです。興味をもってもらえたのかなと。こういうことをもっと発信していけば、今後もっと楽しい観戦方法を提供できるのではと思いました」
「パラ陸上の車いすを初めて見たという人が『すごくかっこいい』ということを言ってくれて、そうしたビジュアル面からもアプローチできたら面白いかなと思いました」
やはり「最強」はあの人⁈ 大学生知名度No.1のパラアスリートは……調査は軸を移してパラアスリートに関する質問へ。大学生で知っているパラアスリートがいる人はどれくらいいるのでしょうか。
回答した大学生のうち、約7割がパラアスリートと聞いて思い浮かべる選手がいるという結果に! では、最も知られているのは誰なのか。気になる結果は……
1位は一目瞭然、「国枝慎吾」! 車いすテニスで生涯ゴールデンスラムを達成したレジェンドは、調査でも「最強」という結果に。知ったきっかけとして「英語の教科書に載っていた」という声があり、調べると確かに、国枝さんが登場する英語の教科書が見つかりました。
2位は車いすバスケットボールの「鳥海連志」選手。東京2020パラリンピックでは銀メダル獲得に大いに貢献し、その活躍が注目を集めました。3位はパラ水泳の「木村敬一」選手。東京2020パラリンピックで悲願の金メダルを活躍した実力者は、ここ数年テレビのバラエティ番組にもしばしば出演しています。
実は調査をする前に「1位は国枝さんでは?」という仮説がPDCメンバーからも出ていましたが、その通りとなりました。
「毎回、国枝慎吾さんの名前が挙がっていたのですが、ニュースで見たというよりは英語の教科書で知ったという人が多かったです。私が使っていた教科書でも出ていたので、その時の印象が強いんだなと感じました」
「私が調査した時も国枝さんが一番多かったです。同じ車いすテニスの小田凱人選手の名前を挙げる人もいましたね」
「『車いすバスケのあの選手』というところまでは出てくるけど、名前までは出てこないこともあって、個人競技と団体競技の違いもあるかなと思いました。それにしても英語の教科書パワーはすごい!(笑)」
Q2の「パラスポーツを知ったきっかけ」で「学校」が2位だったように、学校の授業がパラスポーツに触れる機会のひとつとなっていることが感じられます。学習の一環で触れると、より強く印象に残るのかもしれませんね。
世の中にもっとパラスポーツを広めるには?最後に問いかけたのは、パラスポデザインカレッジの目標ともつながるこの質問。イマドキの大学生たちの答えは……
「学校教育のカリキュラムに入れる」という回答が3割超で1位に。2位は「テレビ番組やCMで露出を増やす」が入っています。Q2は「テレビ」「学校」がパラスポーツを知ったきっかけだった大学生が多いという結果でしたから、自分たちの「きっかけ」と同じ方法をイメージした方が多かったのでしょうか。
そして回答者の意見で多かったのが、「健常者でも楽しめるスポーツということをアピールすべき!」ということだったそう。パラスポーツには、競技用車いすに乗ったり、アイシェードをつければ健常者でもプレーできる競技もありますし、障がいの有無や年齢などに関わらず楽しめるユニバーサルスポーツとして注目される競技(ボッチャなど)もあります。自分でもプレーできるんだ!という驚きや、プレーしてわかる競技の面白さを感じてもらうことがひとつの方法なのかもしれません。
面識のない大学生たちに声を掛けてインタビューする実地調査に「足を止めてもらうのも難しかった」「リハーサルでは取材OKの前提でやっていたけど、人を呼び止めるのが一番苦労した」と苦労しながらも、カタチにしたパラスポデザインカレッジのみなさん。パラサポWEB編集部が同行した取材でも、いざインタビューに成功すると、そこは同じ世代の大学生同士、すぐに打ち解けてワイワイとパラスポーツを話題に盛り上がっていました。動画コンテンツからもそんな楽しい雰囲気が伝わってきますよね。
インタビューを通して見えてきた、大学生とパラスポーツとのさまざまな接点。PDCメンバーにとって新しい発見がたくさんありましたphoto by Karin Hirokawaそして、パラスポーツに関する意識調査を行い、大学生たちの生の声を聞いたことでPDCメンバーにとっても大きな刺激と勉強になった様子。
「認知度の幅が大きいことを知ることができて良かったです。パラスポーツの認知度の差は何で分かれるんだろうという疑問が調査、取材を通して残ったのですが、それは実際に話を聞くことができたからこそ出てきたもの。今後は認知度の差についても考えていきたいです」
「意外と多かったのが、SNSのおすすめでパラスポーツを知ったという人。スルーせずに見てくれているんだなと知ることができたのは今回の調査で良かったことだと思いますし、自分たちの新たな気づきになりました」
「思ったよりも知らない人が少なかったというか、認知度の差はあれど、パラスポーツのことが頭の片隅にある人が多かったです」
「取材した人に『どうしたらパラスポーツの認知が広まると思いますか?』と聞いてみたら、大会がいつ・どこで開催されているのか分からないと言われたんです。そもそも情報が届いていないという新しい発見があったので、そのあたりを今後工夫していければと思いました」
貴重なチャレンジとなった今回の調査。サンプル数は少ないかもしれませんが、若い大学生たちの空気感が伝わる生の声に、大人も学ぶところがあったのではないでしょうか。学生の間にパラスポーツと出会った世代が社会で活躍していく年代になったとき、どのように社会が変わるのかが楽しみになりますね。
これからも続々と出てくるであろうパラスポデザインカレッジの新たな企画で、パラスポーツの楽しさ、面白さが若者世代にさらに広まっていくことを期待したいです!
パラスポーツとの出会いは「歯医者の待合室」だった⁈ 「もっと盛り上げたい!」情熱を注ぐ大学生たちのホンネから見えること https://www.parasapo.tokyo/topics/111856
text by Atsuhiro Morinaga(Adventurous)
photo by Karin Hirokawa, Parasapo
資料提供:パラスポデザインカレッジ
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