【パリ2024パラリンピックPREVIEW】メダルラッシュに期待のバドミントン。梶原は連覇に自信
パラサポWEB / 2024年7月11日 7時55分
パラリンピックで初めて正式競技となった2021年東京大会で金メダル3個、銀メダル1個、銅メダル5個を獲得し、確かな存在感を示したバドミントン日本代表。
パリ2024パラリンピックでは、さらなる飛躍が期待されている。
7月8日、記者会見で意気込みを語った日本代表選手とコーチ陣 東京大会以降負けなしの金メダル候補男子シングルスWH2で連覇を狙うのは梶原大暉だ。3年前に19歳で世界の頂点に立った22歳は、東京大会以降の公式戦でも121連勝中と、さらに実力を上乗せしている。
持ち味はチェアワークとシャトルのコントロール。
「フィジカルや技術、ショットの引き出しなどが全体的に成長して、見違えるほど強くなっている」と堂々と語る。
東京大会以降は「頭を使ったバドミントン」に意識して取り組むようになった。
「試合の流れを考えながら自分のショットを選択することや、相手の状況、相手の動きを意識してプレーすること」。その結果、「3年前とは見違えるほど変わっている」と胸を張るほどの成長を実感している。
不敗記録に対するプレッシャーは「あまり感じていない」とも言う。心がけてきたのは、「目の前の選手に集中して自分の最高のパフォーマンスを出し切ろう」ということ。「フィジカル、技術面、すべてレベルアップしているし、ショットの引き出しも東京パラリンピックのときに比べるとすごく増えた」という自信が強気を支えている。
世界ランキング1位の梶原勝ちにこだわる姿勢は、福岡県の中学で野球部の投手だった頃、コーチから「やるからには勝つことを目指せ」と教えられてからずっと胸に抱き続けているという。
「目標はシングルスとダブルスの2冠。最高のパフォーマンスで競技の魅力を伝えてパラバドミントンのファンを増やせるような大会にしたい」と力強く語った。
そして、村山浩とペアを組んで出場する男子ダブルス(WH1-WH2)では、東京大会の銅メダルを超え、金メダルを目指す。残りの約1ヵ月半でダブルスの役割分担のところをもっと研ぎ澄ませていき、目標を勝ち取るつもりだ。
単複金メダルが目標の里見梶原が連勝を続けながら自己を高めているのに対し、東京大会で女子シングルスと女子ダブルスの2冠に輝いたWH1の里見紗李奈は、連勝が途絶えたことがきっかけで、より強くなるための手応えをつかんだと胸を張る。
「単複金メダルが目標」と里見今年2月の世界選手権。里見は中国選手の前に屈し、公式戦の連勝が59でストップした。相手は里見を徹底的に分析。自分が得意とするカットプレーを里見が苦にしないことを知ると、武器を封印してでも里見の弱点部分を突いてきた。その徹底ぶりはすさまじかった。しかし、この敗戦が里見の負けん気に火をつけた。
「そこから自分の中でどんどん気持ちが入っていった。自分をもっともっと見直そうというきっかけになった。それによる新たな発見もあった」
中国選手にはその後の対戦でしっかりと勝利を収めた。やはり、簡単には勝たせてくれなかったというが、里見はそこでも「最後はどれだけ勝ちたいと思えたかで決まってくる」という学びを得たと胸を張っていた。
元来の里見は「見られることが嫌いではない」というタイプ。「注目されていることに応えるように頑張ろうと思ってやっている。粘り強くシャトルを追いかける姿を見てもらえたら嬉しい」と笑顔で言う。
そして、「人生の目標」(里見)がある。「車いすであってよかったと思える人生で終わりたい」ということ。そこに向かって今は一歩一歩進んでいる最中だ。
山崎悠麻と組む女子ダブルス(WH1-WH2)では、東京大会に続く金メダルを目指している。山崎の持ち味は相手の動きを読みながらのプレーや、ラウンドからのカット。抜群のラリー力を持つ里見は、多彩なショットを持つ山崎とのコンビネーションに磨きをかけながら本番での活躍を見据えている。
初出場は2選手女子シングルス(SU5)の豊田まみ子はパラリンピック初出場の32歳。ケガの影響もあり、東京大会の出場が叶わずに悔しい思いを味わったが、それから3年で悲願のパラリンピック出場を決めた。
ケガから復帰してパリを射止めた豊田は元世界女王会見では「長い間目指してきた舞台にようやく立つことができることをうれしく思う。私のクラスは若い選手や勢いのある選手が多く、厳しい戦いになると思うが、その中でもメダル獲得という目標を忘れずに、ベストパフォーマンスを出し切りたい」と目を輝かせながら抱負を述べた。
持ち味は、強烈なスマッシュや相手を崩すような重いクリア。ここ数年はディフェンス力も磨いており、自信を持ってパリパラリンピックに向かっていける状態となっている。
同じくパラリンピック初出場となる男子シングルス(WH2)の松本卓巳は、クリアを得意とする。こちらも豊田と同じ32歳。会見ではやや緊張した面持ちで「パラリンピックは初めての出場。笑顔で楽しく、メダル、シングルス、ダブルスともに目指して頑張りたい」とコメントした。このクラスには連覇を狙う梶原もおり、まずは梶原と決勝で対戦することが目標だが、そのうえで、どうやって梶原を攻略していくか興味深い。
ベテランの長島(左)と初出場の松本また、男子ダブルス(WH1-WH2)ではこれまでペアを組んだことのない長島理と組んでの出場となる。パリパラリンピックはぶっつけ本番での試合になるが、「逆に言えば相手も我々のプレースタイルを知らない」と長島が指摘するように、未知数の魅力がある。
日本代表の草井篤監督はパリ大会の目標として「金3個、銀2個、銅3個。合計8個のメダル獲得」を掲げた。草井監督はパリパラリンピックの選考レースなどから「世界のレベルが上がっていると肌で感じている」と警戒するが、日本がそれを上回るための努力を重ねてきたのは間違いない。
パリ大会の代表選手は12人で、そのうち10人が2大会連続出場。経験も強みに、全員が本番で力を出し切ることで東京大会に続いてのメダルラッシュを演じるつもりだ。
editing by TEAM A
text by Yumiko Yanai
photo by Takamitsu Mifune
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