【パリ2024パラリンピックPREVIEW】自転車大国フランスでメダル獲得に挑むパラサイクリング日本代表
パラサポWEB / 2024年7月25日 9時0分
東京2020パラリンピックでは、杉浦佳子がロード2冠を達成して話題になった自転車競技。
パリ2024パラリンピックでは、4選手が日本代表チームとして挑み、「トラックとロードの両種目でのメダル獲得」と「出場全選手の8位入賞」を目指す。
23日の記者会見で抱負を語った沼部早紀子コーチ(左)と杉浦 前回ロード2冠の杉浦「トラックでのメダルが目標」東京パラリンピックで50歳だった杉浦は、「年齢的にも伸びるところはもうないなと思った」と東京大会後の心境を明かしつつ、その後も「私が頑張りたいと思う気持ちを汲んでくれた方たちに、手土産を持って帰りたい」と2大会連続のメダルへの強い思いを口にする。
ロードの女王というイメージがある杉浦だが、パリで喉から手が出るほど欲しいのはトラックのメダルだ。
競技初日の8月29日に行われる3000m個人パーシュート(C1-3)でいい結果を得られるかどうかは、自身のコンディションがカギになると言い、体調管理を徹底して勝負の日を迎える。
睡眠の質を高めるサプリメントや太陽光のようなライトを持ち込んで時差ぼけ対策をするというさらに杉浦は、ロードレースでも金メダルを狙える位置にいる。パリのコースも試走済で、「(石畳など)危険な場所もわかっているので大丈夫」と視界は良好。
「私が勾配のある場所で勝負をかけることはみんな警戒している。意表を突くところでかけられたらいいなと思っています」
パリでも、果敢にアタックする杉浦の姿を見られるに違いない。
悲願のメダルを目指す川本は「金メダルを」リオ、東京に続き3度目のパラリンピックを迎える川本翔大(C2)は、今やトラックにおける日本のエースだ。
川本を大きく成長させたひとつが東京パラリンピック。トラックの3000m個人パーシュート(C2)で好タイムを出し一時、世界記録保持者になったことだ。さらに、世界選手権では表彰台の常連に。とくに、2022年10月にパリ大会と同じヴェロドロームで開催された世界選手権では同種目で初めて決勝レースに進み、大きな自信を手にした。
「一度メダルを獲ったら、それ以降も獲らなきゃという気持ちになった。その経験があって練習もしっかり取り組めています」
片足ながら美しいフォームでペダルを漕ぐ川本は「軽いギアで走るのが得意。スタートからトップスピードまでを速く上げ、(そのスピードを)キープできるように頑張っているので、ぜひ見てほしい」東京大会以降に変えたバイクとも「息が合っている」といい、狙うは金メダルだ。
「リオ、東京と悔しい思いをしているので、パリでは金メダルを獲って帰りたいと思います」
好きな赤色のバイクで、いつも通りの走りを心がける川本は、レース後、ガッツポーズを見せてくれることだろう。
5度目パラの藤田はロードでメダルに挑戦観客の声援が戻ってくるパリ大会。自転車大国のフランスで戦う日本チームにとって、5度目のパラリンピック出場を迎える藤田征樹の存在は大きいだろう。
2008年に競技用義足で競技をするパラアスリートとして初めてパラリンピックのメダリストになった藤田は、パリでは9月4日の個人ロードタイムトライアル(C3)で表彰台を狙う。
「パラリンピックでは、さまざまな障がいがある選手たちが自転車から降りてどういうふうに振る舞っているのか。レース以外もぜひ注目して」39歳になった今も「まだまだ伸びている」と充実感をのぞかせる藤田。両足で義足を使って自転車を漕ぐと、藤田の場合は体がどう動いていて、どんなフォームが最適なのか。専門家と共に調査研究を重ね、時間をかけて体の使い方を変えていった。もちろん義足も調整し、その結果、重いギアを踏めるようになったり、力を発揮できる時間が長くなったりするなどの成果が数値に表れるようになったという。
世界のレベルが上がり、複数選手を揃えた国によるチーム戦も予想される中、積み上げてきた力をレースに活かせるか。
「仕掛け合いのレースは、後手になると(トップに)離されてしまう。苦しいところで力を発揮できるか。自分を信じて挑戦したいです」
ベテランならではのレース展開にも注目したい。
初出場の木村は自己ベスト更新で上位をうかがうそして、今大会で初出場の権利をつかんだのが、2人乗りのタンデム自転車に乗る木村和平だ。
タンデムは、前に晴眼のパイロットが乗り、後ろに視覚障がい選手が乗る。「三浦選手は体が大きくて(後ろに乗る僕の体が)隠れやすい。空気抵抗を減らすためのポジションが取りやすいですね」もともと中長距離で戦っていた木村は、パリ大会への挑戦を決めたタイミングで短距離に転向。それに伴い肉体改造に取り組んだ結果、3年間で体重を15㎏増量させるなどしてパワーをつけた。
夢だったパラリンピック出場が内定したときは「これまで携わってくれたパイロットに感謝の思いがあふれた」と言い、 東京大会を一緒に目指した当時のパイロットである倉林巧和さんには電話で感謝を伝えたという。
パリ大会では、競輪選手の卵である三浦生誠パイロットとともに、1000mタイムトライアル(B)で自己ベストを目指す。
左から、沼部ヘッドコーチ、杉浦、川本、藤田、木村自転車競技は、8月29日から9月1日までパリの西側に位置するヴェロドローム・ド・サン・カンタン・アン・イヴリーヌでトラック種目が行われた後、9月4日から9月7日にはパリ北部の郊外にあるクリシー・ス・ボワに場所を移し、ロード種目が行われる。
個性豊かで魅力的なパラサイクリング日本代表の走りに注目したい。
text by Asuka Senaga
photo by X-1
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