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パリ2024大会、メトロのバリアフリーが課題

パラサポWEB / 2024年8月7日 7時0分

セーヌ川での華麗なオリンピック開会式で幕を開けたパリ2024大会。紀元前、ケルト系民族パリシイ族によって定住が始まったパリの街は、開会式のアスリートたちと同じように、セーヌ川を使った船での移動と貿易で大きく栄えた。現在は人口約215万人を抱える大都市であり、地下鉄、鉄道、路面電車などの交通網が張りめぐらされている。この歴史ある街でオリンピック・パラリンピックの大勢の観客を迎えるため、公共交通ではどんな対策がとられ、どのようにバリアフリーが進められているのか、その一端をご紹介したい。

歴史ある街が抱えるバリアフリーの課題
紀元前から続く歴史あるパリはバリアフリーが大きな課題

1900年のパリオリンピックの年に誕生したメトロ(地下鉄)は、パリジャンの日常の足として毎日数百万人の乗客数を誇る。1〜14号線まで現在14路線が市内を東西南北くまなくカバーして本数も多く、渋滞で時間が読めない車移動よりも確実な市内交通の要だ。

しかしパリへ旅行に行ったことがある方ならわかるだろうが、歴史あるメトロは構内の雨漏りや壊れた改札など、設備に古さを感じさせる。そしてバリアフリーの大きな課題を抱えている。パリ大会開催が決定した2017年から問題解決が叫ばれていたものの、古く小さな駅にエレベーターやエスカレーターの設置は難しく、工事に長期間を要することから改善はゆっくりとしか進んでいない。視覚に障がいのある人のための点字案内板もほとんど見かけることはなく、車いすは幅の狭い改札は通ることができず、駅係員を呼び出して専用口を開けてもらう必要がある。

現在進行中の「グラン・パリ」計画は、パリと隣接県を含む地域イルドフランスの交通網再整備プロジェクト。その一環として近郊に続々と誕生しているメトロの新駅は、バリアフリーな施設として整備されている。今年6月にはメトロ14号線が延伸し、南のオルリー空港と、北のフランススタジアム(サンドニ・プレイエル駅)を結んだ。1998年に新設されたこの14号線は全ての駅がバリアフリー。こうした「グラン・パリ」計画に伴う新たな駅や新路線の工事と、既存の駅の大規模改修という二本柱で、今後もアクセシビリティの向上を目指す。

スロープ搭載のバス、エコ&バリアフリーの路面電車
パリをぐるりと囲むように走るトラム

RATP(パリの交通公団)が現状100%バリアフリーと推奨するのが、バスと路面電車。すべてのバスに車いすスロープが搭載されているという。故障や道路の段差の問題から全ての停留所でスロープが使えるわけではないというのが課題だが、実際に車いすユーザーの多くがバスを主な移動手段としている。大会期間中は交通規制のため一般のバスでの移動はやや難しくなるが、PSH/PFRチケット(障がいのある観客用のチケット)所持者のために、市内8つの主要駅や競技会場を結ぶ専用シャトルバスが用意されている(要事前予約)。

バスの車内には車いすとベビーカー用のスペースがある。ベビーカーはたたむ必要がなく1〜2台乗ることができる

エネルギー効率の良さが注目され、路線を増やしているのはフランスで「トラム」と呼ばれる路面電車だ。1855年に誕生しパリや近郊を走っていた路面電車は、メトロと車の台頭で1930年代には姿を消したが、90年代に入って大復活を遂げる。現在パリ市内と近郊合わせて8路線が走るトラムは、市内中心地ではなくパリ周縁の内側をぐるりと取り囲むように走り、駅の段差もほとんどないバリアフリー。今回のパリ大会でバレーボールや卓球の試合が行われるパリ南アリーナに行くには、このトラムの利用も便利だ。

パリ2024パラリンピックでは約4,400人の選手が参加するほか、パリ大会全体を通じておよそ28万人の障がいのある観客を迎え入れると言われる。課題はまだまだ残るものの、今大会がバリアフリー推進へのブースターとなり、パリの交通がさらに変わっていくのか、注目したい。

text by Yuka Miyakata(Parasapo Lab)

photo by Shutterstock

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