モネの絵が動く?自宅で楽しめるオンライン美術館の美しさに感動!

パラサポWEB / 2020年7月8日 11時50分

もともと絵を見るのは好きで、時間を見つけてはよく美術館にも行っていた。それがいつの間にか、人気の美術展が入場まで1、2時間待ちなどと報道されるとうんざりするようになり、足が遠のいてしまった。そんな美術館好きに朗報! 24時間365日アートに接することのできる美術館があるのだ。しかも、オンラインだからできる「特殊な見せ方」も楽しめる。オープン以来約1年。多くのユーザーに喜ばれているオンライン美術館「HASARD(アザー)」がそれ。新時代のアート鑑賞について、代表の紺野さんにお話を伺った。

24時間365日、ネットに繋がっていさえすれば誰でも訪問できる美術館
©️Shutterstock

なかなか収束への道筋が見えない、新型コロナウイルスによるさまざまな弊害。美術館も大きな影響を被っている。多くの美術展が計画されていたのに、会期の途中で中止、あるいは開催そのものが中止となってしまった。

たとえば、東京都美術館で開催されていたデンマーク絵画の展覧会「ハンマースホイとデンマーク絵画」展は、1月下旬から3月下旬まで約2ヵ月間の開催予定だったが、会期途中で閉幕してしまった。抑えた色調で静寂な空間を描き、北欧のフェルメールとも呼ばれるハンマースホイ。見られなくなって残念に感じていた美術ファンも多かったと思う。しかし、そんな美術展もオンラインなら見ることができる(展示は10月20日まで)。24時間いつでも、ネットに繋がっているならどこにいても。面倒な会員登録や入場料、会費など一切不要。たとえば、好きな音楽を聴きながら、コーヒーなどを片手に楽しむことだってできる。

コロナ禍での自粛生活を経て家での時間が増えた人はもちろん、普段から外出が困難な人、重度の障がいのある人や、なかなかゆっくり美術館へ行く時間の取れない育児中のパパやママ、美術館が近くにない人なども、ネットに繋がってさえいればあらゆる人が自由にアートを楽しめる。まさに、最近注目のD&I(※)を実現できるアートサービスと言えそうだ。

※D&I(ダイバーシティ&インクルージョンの略)=ダイバーシティとは多様性、インクルージョンとは包括・包含の意。マジョリティ(多数派)やマイノリティ(少数派)を区別せず、あらゆる全ての人を含んだものの見方や考え方。

あの名画が動き出す!? ここでしか観られない特殊な展示は必見
写真提供/HASARD

オンライン美術館「HASARD」を訪れると、まず驚かされるのがバラエティ豊かな展示。かの有名なクロード・モネやクリムト、期間限定だがゴッホの名画さえ見ることができる。しかも、画像が圧倒的に美しい。高解像度の画像を掲載するとサーバーに負荷がかかるので、表示が遅くなることは避けられないのだが、ここではあえて画像を圧縮・リサイズすることなく掲載している。だから美しいアートを楽しむことができる。

そして、是非注目してほしいのが、常設展の「それは再び 動き始める」。なんとクロード・モネの絵が動くのだ。動く絵を前にしていると、まるで自分もその世界の中に入って一緒に呼吸をしているような気分になり、ずっと見ていたくなる。しかも、リアルな美術館じゃないので、後ろの人に急かされる心配もない。この素敵な展示は、一見の価値あり。こんなオンライン美術館ならではの見せ方は、美術鑑賞の新しい楽しみ方になりそうだ。

この「『誰でも・いつでも・無料で』アートを楽しめる」をコンセプトにするこのサイトを運営しているのは紺野真之介さん。賛同する仲間(現在は4人)とともに、企業などの協賛を得ながら、基本的には紺野さんの「持ち出し」でオンライン美術館を開館している。

「今、僕を含め、それぞれ他に本業を持っているメンバー5人で運営しています。どんな美術展をやるかは、メンバーが提案する形で。5人のうち過半数が賛成したらやろうという決まりになっています。ただ、先日、このコロナ禍で美術大学の卒業展覧会(卒展)が中止になってしまったというツイートを見た時は、それは是非オンライン美術館で開催したいと思って、僕の独断で決めましたが(笑)」(紺野さん。以下同)

美術と出会い、感動することは、人生すらも変える力がある
©️Shutterstock

紺野さんは、なぜこのような美術館を自費で立ち上げたのだろう。しかも、訪れるユーザーも、展覧会を開催するアーティストも、利用料金を支払う必要がない。てっきり、紺野さんはアーティスト、もしくはそれに関係する仕事をしている人なのではないかと思い込んでいたのだが、実はそうではないという。

「僕と美術との出会いは、小学生の頃です。青森の自営業を営んでいる普通の家庭に生まれました。県立美術館が新しくできて、連れて行ってもらったときに、シャガールの『アレコ』という巨大な3つの絵に出会い、衝撃を受けました。その絵の前で3時間ぐらい立ち尽くしていたと思います。それから美術館に行って、美術を見ることが好きになったんです」

その後、美術の道に進むことはなかったものの、いつも美術はそばにあったのだという。「美術と出会い、感動することは、人生すらも変える力がある」と考え、2019年4月、オンライン美術館「HASARD」を立ち上げた。

「僕は、本業はIT関係で、国や企業と今までにないサービスを作るような仕事をしています。そういうスポンサーが絡む仕事だと、世の中を楽しくすることにプラスして、収益を上げることも目標として挙げなければならなくなります。すると、どうしても自分が好きなようにはできないですよね。だから僕の考える“こうしたらもっと世の中が良くなるんじゃないか”、“もっとみんなが幸せになれるんじゃないか”、ということを実現したくてオンライン美術館を始めました」

オープン当初から美術好きの歓迎を受けた。中には、「料金を払うから、どんどん広げてほしい」などという声もあったのだという。しかし、紺野さんは、「アートを、もっと身近に」というこのサイトのコンセプトに合わないと、現在も企業などの協賛金と紺野さん自身の拠出によって運営を続けている。

オンライン美術館が目指すのは、“他者に優しい社会”
©️Shutterstock

紺野さんはサイトのコンセプトのたとえに「路上ライブ」をあげている。それはいったいどういうことなのだろうか?

「路上ライブが終わった後、ミュージシャンの置いた帽子にお金を入れる人は誰もいなくて、素敵な歌だったねと声をかける人もいない。これが悲しい現実です。お金の価値は人それぞれなので、仕方ないでしょう。でも、大事なのはお金を入れるかどうかではなくて、“ミュージシャンの歌に感動した自分の気持ちを何かで表すこと”なんだと思います」

だから紺野さんは、ここの展示を見て感動したら、帽子に投げ銭を入れるのではなく、その感動をたとえばSNSで呟いてもいいし、すぐそばにいる人に直接話してもいい。そんなふうに人と共有してほしいと思っているのだろう。

「アートのいいところは、共感能力を高めることだと思います。アートを見て、素晴らしいなと思うことで共感能力が高まる。共感能力の高い人は、周囲に困っている人がいたら発見しやすいんですよ。あ、この人、困っているんだなとすぐにわかって、手を差し伸べることができる。そういう意味で、アートが身近なものになれば、みんなもっと他人に優しくなれる。日本はもっと優しい国になれるんじゃないかと思っています」

時間や場所を超えて、さまざまな人がアートを楽しみに集まることができる場所。それがこのオンライン美術館だ。人種、国籍の別はもちろん、障がいのあるなし、収入の多少、その人の置かれている環境にかかわらずアートを楽しむ。感じたものを他者と共有する。そこから共感能力が高められる。そうすれば、もっと良い社会になるという紺野さんの展望は、コロナ禍でふさぎがちな私たちの心に、希望の明かりを灯してくれるように思う。

今後は展示するものも、たとえばユーザーの投票で決めるとか、クラウドファンド的な仕組みを取り入れるなど、ユーザーがみんなで運営してみんなで楽しめるような美術館づくりも視野にあるという。これからもずっとここでアートに触れていきたいと思う。よい社会になることを目指して。

オンライン美術館 HASARD(アザー) https://wam-hasard.com/

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)

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