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パラスポーツにかかわる仕事、徹底解剖!競技に直接わる職業編

パラサポWEB / 2020年11月24日 19時30分

東京2020パラリンピックに向けて、メディアで競技が取り上げられる機会が増えたこともあり、パラスポーツに関わる仕事に興味が湧いた!という学生さんもいるのではないでしょうか。しかし、どんな役割や働き方があるのか、即戦力になるにはどんな知識・技術が必要かについては、広く知られていないかもしれません。そこで、実際にパラスポーツの現場で活躍している方々の仕事内容や、現在の職に就くまでの道のり、必要な資格などについてご紹介。今回は、競技の普及や選手のサポートなどに全力を傾ける団体職員の仕事を取り上げます。

競技団体の普及担当として、全国を巡回中!

新井大基さん

一般社団法人日本ボッチャ協会

事務局総務部兼普及局普及振興部

パラリンピック競技の中でもだれでも楽しめるパラスポーツとして人気が高いボッチャ。さらに多くの方に知ってほしいと、国内大会の運営や普及イベント・講習会の講師、メディアでの解説業務などを担当しているのが、日本ボッチャ協会の新井大基さんだ。

新井さんは大学まで野球に親しみ、卒業後は介護職に従事。その勤務先の利用者を通じてボッチャと出会い、もっとも障がいが重いクラスであるBC3の選手の競技アシスタントとなった。

「8月ごろから競技をはじめたのですが、翌9月には世界選手権、10月にはアジアパラ競技大会に帯同させていただきました。もともとスポーツに関する仕事をしたいと思っていたのですが、いろいろな選手たちと接し、その努力する姿を見たり勝負にかける想いを知るにつれて、個人だけではなく、もっと多くの選手たちもサポートしたいという想いが強くなり、転職を決断。日本ボッチャ協会の事務所が東京に設立されるのと同時にスタッフとして入りました。2015年4月のことです」

選手がメダルを獲るのはもちろん、イベントでの体験会や講習会を通じてボッチャが広がることにやりがいを感じるという。

「イベントの際、『ボッチャを知っている人?』と質問すると手を挙げる人が増えてきていて、広がりを実感できるのがうれしいですね。体が一つでは足りないほどイベント依頼が増えたため、大変ではあるのですが(笑)」

事務局で協会運営や普及などを担当したいのであれば、熱い気持ちと正確な知識さえあれば問題ないというが、国際大会に帯同する際はそうはいかない。パラリンピックの中でも最重度の障がいがあるといわれている選手と同じ部屋に泊まり、介助することも多いため、最低限、介護の資格を取得しておくとよいとアドバイスする。とはいえ、構える必要はない。

「ボッチャはとても楽しく、奥の深い競技です。私自身がそうだったのですが、まずは興味を持つことが大事です。興味を抱いたら勉強し体感したうえで、なお『ボッチャが好き』という気持ちがあれば、その『好き』を追求できる世界だと思います」

【所有している資格】

特になし

【おすすめの資格や学問など】

介護、障がいに関する知識

障がい者スポーツセンターのスポーツスタッフとして、地域に貢献

井黒比加里さん

東京都多摩障害者スポーツセンター

スポーツ支援課

東京都多摩障害者スポーツセンターの体育館、プール、トレーニング室、サウンドテーブルテニス室といったスポーツ施設でスポーツスタッフとして働いている井黒比加里さん。現在就職2年目だが、実は大学時代からこの施設でアルバイトとして働いてきたという。

「初めて訪れたのは、大学で受けていたボランティアの授業の実習がきっかけです。その際、利用者さんと一緒にスポーツをしているパートスタッフの姿を見て、共にスポーツをすることもサポート方法の一つなのだと知りました」

井黒さんはもともとスポーツが好きで、ソフトボールと陸上競技は3年間、フラダンスは7年間、取り組んだ経験があった。大好きなスポーツを通して障がいのある人たちに関われることに、ピンとくるものがあったのだろう。その後、パートスタッフとしてアルバイトを始めたという。

障害者スポーツセンターで実際に働き、障がいのある人たちが楽しみの一つとして、あるいは真剣にスポーツに取り組む姿を間近で見たことで、井黒さんは次第に障がい者スポーツの振興に携わりたいと感じるようになったという。そして、卒業後もここで働きたいと、就職を決めた。

「利用者さんそれぞれの障がいに合わせて運動内容を考え、コミュニケーションを図りながら様々な角度からアプローチをしていくのは、決して簡単なことではありません。でも障がいを理由に様々なことに取り組む機会が限られていた方が少しでも前向きになったり、何かに取り組むきっかけとなれたときにはやりがいを感じます。さらにスポーツをすることで利用者さんの身体に良い変化が感じられるとうれしいですね」

現在はコロナ禍により予定していた事業が実施できないため、代替事業としてオンライン配信動画の作成も担当しているという。

「新型コロナの影響で様々な制限を受けてはいますが、当施設の利用者さんたちは毎日いきいきと運動しています。学生のみなさんも、環境を言い訳にせず、まずは自分にできることから日々挑戦し、持っている力を無限大に成長させていきましょう」

【所有している資格】

初級障がい者スポーツ指導員、健康運動指導士、普通救命技能

【おすすめの資格や学問など】

障がい者スポーツ指導員、健康運動指導士、普通救命技能、介護予防運動指導員、スポーツプログラマー

サッカーの統括団体で、障がい者サッカーの普及に尽力

岩田朋之さん

公益財団法人日本サッカー協会

人事部

ブラインド(視覚障がい)やCP(脳性まひ)、アンプティ(切断)、デフ(聴覚障がい)など、パラスポーツの中でも多彩な活動が行われている障がい者サッカー。国内のサッカー競技団体を統括する公益財団法人日本サッカー協会(JFA)は、「誰もが、いつでも、どこでもサッカーを身近に楽しめる環境」を目指し、日本障がい者サッカー連盟とともに、障がい者サッカーの推進活動も行っている。

JFA内でその主要な担い手となっているのが、人事部の岩田朋之さんだ。岩田さんは小学生時代からサッカーや野球、水泳と広くスポーツに親しみ、社会人になってからも週に2~3回、フットサルを楽しんできた。26歳で難病のレーベル遺伝性視神経症を発症し弱視となってからも、伴走者と走ったり、ゴールボールをプレーしたりするなどさまざまなスポーツにチャレンジ。中でも社会復帰への足がかりにしたいと進学した筑波技術大学で出会ったロービジョンフットサルは、日本代表選手となり、現在に至るまでキャプテンを務めるほど熱中し、それが現在の仕事にもつながっていると語る。

「日本代表活動を通じて弱視の子どもたちと出会い、視覚障がいのある子どもたちのサッカー環境がまだまだ整っていないことを知りました。自分にできることはないか、と考えるようになったことをきっかけに、2017年4月に筑波大学大学院(修士)に進学。アダプテッドスポーツ・障がい者(パラ)スポーツを学ぶことで、障がいのある子どもたちを取り巻く環境を、サッカーを通して改善していきたいと思いが深まり、JFAで働くことに決めました」

現在所属の人事部では、障がい者のサッカー環境の基盤づくりをはじめ、日本障がい者サッカー連盟の教育プログラムの企画・提案・制作および講師役、JFA内のダイバーシティ推進に関する企画・提案、JFAハウス内のバリアフリー化へ向けた改善案提出など、幅広く活動。さらに、今後は障がい者を含めた多様な人たちがサッカーやスポーツを広く楽しめる環境や制度を作っていきたいと思い描いている。

現在の仕事をするうえで絶対に必要という資格はないそうだ。しかし、自身が取得した理学療法士の資格や教職員免許(中高/保健)が活きていると実感しているという。

「当事者でありながら理学療法士の資格を保持することで、病気や障がいについて医学的な観点・視点で理解できますし、教員免許は、障がいに関することを健常の人たちに伝えるうえで役に立っていると思います」

人生をあきらめることなく歩めているのは、サッカーのおかげという岩田さん。その恩返しの気持ちを、他の職員と協力しながらサッカーを通じて届ける、という使命を胸に日々の業務に取り組んでいる。やりがいもある反面、例えば、使用中の音声読み上げのPCの情報の処理が追いつかず業務に支障をきたしかねないこともあるなど、苦労もあるという。しかし、それも多様性への理解を広げるチャンスとして、岩田さんは、できることとできないことを自分から発信することを心がけているという。また、現時点でJFA唯一の視覚障がい者だからこそ、しっかりと足跡を残したい、そして子どもたちに道筋をつけられるような仕事をしていきたいと意気込む。

「サッカーをはじめスポーツは、あらゆる人に『生きる力』を届ける力があると思っています。そのスポーツの持つ力を一人でも多くの人に届けて、障がいのある人もない人も互いに認め合いリスペクトできる社会を作っていきたい。一緒にがんばりましょう!」

【所有している資格】

理学療法士、中学校・高等学校教諭一種免許状(保健)

【おすすめの資格や学問など】

特になし

パラスポーツの統括組織で、障がい者スポーツの環境整備に全力投球!

小島大樹さん

公益財団法人日本障がい者スポーツ協会

スポーツ推進部 スポーツ推進課

国内の障がい者スポーツの普及・振興を図る統括組織、日本障がい者スポーツ協会。小島大樹さんが所属するスポーツ推進部は、全国の障がい者スポーツの状況を把握し、情報発信を行ったり、地域の障がい者スポーツ振興を進めるための仕組みづくりや障がい者スポーツの指導者の養成・育成、全国障害者スポーツ大会の運営など、幅広い業務を担っている。

高校時代までは障がいのある人たちと接点がなかったというが、大学時代のバレーボール部での経験をきっかけに障がい者スポーツに関心を寄せるようになった。

「聴覚障がいのある方のバレーボール日本代表選手たちと練習試合を行う機会があったのですが、障がいのある方たちとスポーツを通じて交流ができることに驚きました」

もともとスポーツを指導する仕事に就きたいと、教職課程のある大学に進学していた小島さん。その大学は公認障がい者スポーツ指導員資格取得認定校でもあったため、障がい者スポーツに興味を抱いたことをきっかけに資格を取得。卒業後は東京都の障害者スポーツセンターに勤務し、さまざまな障がいのある人たちと一緒にスポーツをすることで、さらにその魅力に引き込まれていった。

「障がい者スポーツに全く興味関心のなかった自分が、ふとしたきっかけから熱中するようになったわけですが、同じように、今は知らなくても、実際に触れることでその魅力に気づく方がたくさんいるのではないか、と考えるようになっていきました。そして、もっと多くの方に障がい者スポーツを知っていただき、たくさんの仲間づくりをするための橋渡し役になりたいとの思いが募り、日本障がい者スポーツ協会に転職しました」

障がい者スポーツとの出会いで人生が変わったという小島さん。障がいのある人たちも、スポーツとの出会いで様々な可能性を広げていけると信じている、と熱く語る。

「東京パラリンピックの開催を控え、障がい者スポーツへの興味・関心が高まっています。その分、たくさんの方の支える力が必要となってくるということでもあります。みなさんも一緒に障がい者スポーツを盛り上げ、障がいのある方たちのスポーツ環境を支えていきましょう」

【所有している資格】

障がい者スポーツ指導員

【おすすめの資格や学問など】

障がいやスポーツに関する知識

広くパラスポーツに関わりたい場合は、今回ご紹介した統括組織や地域の障害者スポーツセンターなど、特定の競技に関心がある場合は競技団体などのホームページやSNSなどで情報収集してみてはいかがでしょうか?

次回は、「高度な知識や技術を活かして選手をサポートする専門スタッフ編」をお届けします。(11月30日公開予定)

text by TEAM A

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