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【選手対談】車いすラグビー・乗松聖矢×倉橋香衣「大変な状況もチームで乗り越える」

パラサポWEB / 2021年1月1日 13時7分

2021年、新しい年が幕が明けた。車いすラグビー日本代表は、苦境を乗り越え、チーム一丸となって世界の頂点を目指す。今回は、ローポインター(障がいが重く持ち点が低い選手)髄一の運動量を誇る乗松聖矢、日本代表唯一の女性プレーヤーで笑顔がトレードマークの倉橋香衣のオンライン対談をお届け! 知られざるローポインターによるプレーの見どころ、日本代表チームの魅力をたっぷりと語ってもらった。

乗松聖矢 1990年生まれ/1.5クラス/熊本在住/Fukuoka Dandelion所属

2013年12月に車いすラグビーを始めて、2014年世界選手権で日本代表初選出。リオ2016パラリンピックでは主力として銅メダルを獲得。2018年の世界選手権で優勝。

倉橋香衣 1990年生まれ/0.5クラス/埼玉在住/BLITZ所属

2014年に車いすラグビーに出会い、2017年3月に女性初の日本代表として国際デビュー。2018年の世界選手権では決勝のオーストラリア戦で活躍し、日本の初優勝に貢献。

――2020年は激動の一年でした。二人にとってはどんな年でしたか?

乗松聖矢(以下、聖矢) 新型コロナウイルス感染症流行の影響もあり、とにかく「耐(たえる)」の一年でした。4月から2ヵ月間、体育館が使用できず、室内でローラーを使ってラグ車を漕いだり、公園などを走ったりしましたが、自宅でのトレーニングとなると自分との戦いになります。今日はどれだけ自分に厳しくできたか……いつもギリギリの状態だったので、いま振り返るとよく耐えられたなと思います。

倉橋香衣(以下、香衣) 聖矢はラグビーに対して本当にまじめに取り組んでいるよね。私はコンディション調整がうまくいっていなかったので、パラリンピックの延期もラッキーなことだと受け止めました。そして、ケビン(・オアー日本代表ヘッドコーチ)やトレーナーともじっくり話し合って、この際、思い切ってリハビリに集中しようと心を決めたんです。クラブチームの練習に行っても絶対に周りに流されず、自分のやるべきことに集中した一年でした。もちろん不安になることもあったけど、コートに復帰する日を思い描いてやるべきことをやり通せたから、私にとっての2020年の漢字は「貫(つらぬく)」かな。

――新たなパラリンピックイヤーを迎えました。パラリンピックと聞いてイメージすることは?

聖矢 4年前に初出場しましたが、やはり特別な舞台だと感じました。試合にはお客さんがたくさん来てくれて、とにかく歓声がすごかったです。もちろん勝負に挑むにあたってプレッシャーもありましたが本当に楽しくて。試合が終わるたびに「あと〇試合しかないのか」とカウントダウンしてさみしくなるほどでした。

香衣 リオに出場していた選手たちはみんな口をそろえて「声援がすごかった」と言います。ボールのバウンドも声も、何も聞こえないなんて……私はまだパラリンピックに出たことがないので、実際に体験してみたいです!

それから開会式も楽しみです。オリンピックなどの式典をテレビで見るのが好きだから、選手としてパラリンピックの開会式を生で見ることができたらうれしいですね。

――二人は同じ1990年生まれの30歳。代表チームの中でも仲がいい?

聖矢 仲いい……と思います。

香衣 なんか聖矢の眉間にシワよってるけど(笑)。同い年のメンバーで旅行に行ったこともあるんですよ。

聖矢 広島に行ったときは、大きな大会の後だったし、揚げもみじ饅頭とかクリームパンとかおいしいものをたくさん食べました。

香衣 穴子の刺身もおいしかった! 早くコロナが収束して旅行にも行きたいな~。あ、自粛期間中は同い年メンバーでリモート飲み会もやりました。

聖矢 そうそう、またやりたいね。でも、競技の話は全然してないかも(笑)

香衣 いや、練習できてる?みたいな話はしましたよ。コロナ禍で試合がないとみんなと会えないから近況報告をしたりとか。他愛もない話ができてうれしかったですね。

――7月から強化合宿も再開しました。

聖矢 九州から関東への移動を伴う自分は少し遅れて8月から合流しました。久しぶりにみんなと会えたうれしさはもちろんありましたが、みんなとの差を埋めなくてはいけないという気持ちでちょっと余裕がなかったかもしれません。

香衣 私はまだあまり参加できていないのですが、自宅からオンラインで合宿の様子を見ることもできます。戦術のパターンなどを頭に入れることができるし、コートに戻ったらしっかり自分の役目を果たしたい思いです。チームの副キャプテンを務める羽賀理之さんのように、普段から親身になって話を聞いてくれる選手の存在も大きいかもしれません。

聖矢 羽賀さんはいつも周りを見ているし、気配りが素晴らしい選手。コート内でも豊富な運動量で走り回っていてお手本にしたいと思わされるのですが、コート外でもチームの雰囲気を一言で変えられる存在感を持っていて尊敬します。

香衣 そうなんです、いつもフォローしてくれて本当にありがたいし、安心感がある。ほかの選手ともそういう関係性を築いて、プレーのコンビネーションに生かせるといいなと思います。

――試合が楽しみですね。改めて、ローポインターの役割を教えてください。

香衣 ローポインターは、ボーラーの道を作ったり、味方がボールを出せるスペース作ったり、相手を(競技用車いすの前方に取りつけられたバンパーで)引っかけて削るのも仕事です。

どうしても(障がいの軽いハイポインターに比べて)スピードは遅くなりがちなので、たとえばオフェンスからディフェンスの切り替え時に遅れないように、他の選手のポジションを意識しながら走ったりしています。

聖矢 自分はディフェンスが売りなので、自分より障がいが軽い選手を止めていくことです。たとえば、リオパラリンピック金メダルのオーストラリア戦なら、3.5クラスのライリー・バット選手を止めることがチームの勝利につながります。ローポインターがハイポインターを止めるのは決して簡単なことではないのですが、そこをなんとかして止めにいくので注目してもらえたらと思います。

――2021年はどんな年になりそうですか?

香衣 2020年は“個”でリハビリに励んだので、2021年はみんなとラグビーをする“チーム”の年にしたいです。チームでコロナ禍の大変な状況も乗り越えていけるよう突き進んでいけたら。もちろん、東京パラリンピックの日本代表に選ばれるようにがんばります。

聖矢 コロナ禍でほとんどの大会がなくなってしまい、それぞれが“個”と向き合ってトレーニングに励んできました。だからこそ、2021年は東京パラリンピックでみんなの努力が実り、“花を咲かせる一年”になればいいなと思います。自分としてもどれだけ成長できたのか。コロナ前後の変化を試合で確かめたいと思っています。

text by Asuka Senaga

key visual by X-1

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