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知ってる?炭水化物は「冷まして食べる」と健康・美容に良い理由

パラサポWEB / 2021年1月25日 17時8分

今までさまざまなダイエット法が提唱され、興味のある人はいろいろ試してみたに違いない。なかでも最近多くの人が注目しているのが「糖質制限ダイエット」。糖質は太るもと。だから糖質=炭水化物は制限すべきということで、その主たる食べ物「ご飯」がやり玉に挙げられている。しかし、長年ご飯を食べ続けてきた日本人こそ炭水化物を食べるべき。その摂り方さえ気をつければ健康体を手に入れられると主張しているのが文教大学教授、管理栄養士の笠岡誠一氏だ。その著書『炭水化物は冷まして食べなさい』から、炭水化物の隠れたパワー、その効果的な摂り方についてご紹介する。

炭水化物を悪者扱いしてはいけないその理由

日本人は長年ご飯を主食としてきた。3000年以上にわたって食べ続けてきた結果、遺伝子レベルで驚くべき進化を遂げているのだそうだ。

ダートマス大学のナサニエル・ドミニー博士は、世界のさまざまな民族の唾液を調査し、そこに含まれる「アミラーゼ遺伝子」を解析しました。

「アミラーゼ遺伝子」には、炭水化物(でんぷん)を甘い糖に分解する働きがあります。炭水化物を食べない民族はアミラーゼ遺伝子が4~5個だったのに対し、日本人は平均7個持っていることがわかったのです。(笠岡誠一著『炭水化物は冷まして食べなさい』から抜粋。以下同)

つまり、日本人は炭水化物を食べるのに適しているのだが、近年その摂取量がどんどん減っているのだという。それは前出の炭水化物を悪者とする風潮のせいもあるのかもしれないが、結果的に炭水化物から作り出されるエネルギーが不足してしまう。身体はその不足を補うために筋肉を分解してタンパク質を作り出したりするので、身体に悪影響を及ぼしている。炭水化物の摂取を極端に減らすと心臓病のリスクが50%も増えるという報告さえあるのだそうだ。

さらに、最近よく聞かれる「腸活」。第二の心臓と言われる腸の状態を健康に保つことによってさまざまな健康トラブルを改善するという考え方なのだが、これにも炭水化物が関係してくるという。

まず、腸活をするとなぜいいのか。

第1に、腸内環境が悪化すると、発がん性物質などのさまざまな有害物質が発生してしまいます。

第2に、全身の免疫細胞の約6割は腸に存在しています。

第3に万病のもとになり得る肥満も、腸活によって解消することができます。

第4に腸はメンタルトラブルとも密接に関わっています。

第5に腸は栄養素を取り込む場所なので、腸の機能が衰えていると、全身に栄養たっぷりの血液を送ることができなくなります。そのため、細胞の老化が加速します。

というわけで、腸活がいかに大事かがわかるかと思うが、その腸活のカギを握るのが食物繊維。食物繊維と言えば野菜と思う人は多いかもしれないが、実は穀類やイモ類、豆類にも食物繊維は多く含まれている。とくにご飯を主食とする日本人は食物繊維をお米から多く摂っているので、糖質制限は便秘を引き起こすことになりかねず、それは腸内環境の悪化を引き起こすことになるのだ。

炭水化物を冷ますと増えるレジスタントスターチは、ハイパー食物繊維

人の腸には種類にして1000以上、100兆個もの腸内細菌が住んでいるのだという。そんな腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、どちらでもない日和見菌(ひよりみきん)の3種類に分類されるのだそうだ。中でもビフィズス菌や乳酸菌などに代表される善玉菌によって優勢な状況を作るのが「腸活」なのだ。

そのためにできることが3つあります。

1つ目は、納豆やキムチなどの発酵食品に含まれる善玉菌そのものを、腸に送り届けること。これをプロバイオティクスと言います。

(中略)

2つ目は、善玉菌のエサとなる食物繊維を送り届けることです。食物繊維の中でも、水に溶ける性質のある水溶性食物繊維、ワカメやオクラ、春菊などを食べる必要があります。これはプレバイオティクスと呼ばれています。

そして3つ目に注目すべきなのが、炭水化物に含まれているレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)という成分。レジスタントスターチは、糖質(でんぷん)なのに、食物繊維と同じような働きをするのだという。

(レジスタントスターチは)小腸で消化吸収されず、大腸まで達することができ、そこで腸内細菌たちに分解されると、ブドウ糖になります。これが腸内細菌の格好の「エサ」になるのです。つまり、わざわざ食物繊維を摂取しなくても、炭水化物を食べれば、善玉菌たちに栄養を与えて、善玉菌優勢の腸内環境を築けることになります。

レジスタントスターチのさらにすごい点は、水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維の両方の役割を担っている「ハイパー食物繊維」であるということ。

不溶性食物繊維は、便のかさを増して腸のぜん動運動を促進する働きがある。つまり、排便には欠かせない役割を備えている。そして水溶性食物繊維は、善玉菌の「エサ」となって数を増やしその働きを活発化する。その両方の働きをするのがレジスタントスターチ。ハイパー食物繊維と言われる所以だ。

そして、ここからが大事な点。レジスタントスターチが優秀な成分であることはわかったが、炭水化物をある条件で摂取することにより、その量が増えるというのだ。それは、「炭水化物を冷まして食べる」こと。炭水化物に含まれるでんぷんの中には、加熱調理後に冷ますことによって性質が変わり、小腸では消化されずに大腸にまで届くものがある。それが腸活に多大なメリットをもたらすのだ。

炭水化物をたっぷり食べましょう。

レジスタントスターチをたっぷり摂りましょう。

最高の腸内環境を築けば、どんな不調や病気も、あなたから遠ざかっていくでしょう。

とはいえ、太ることが心配な人はご飯を食べた方よいと言われても、なかなか手を出しにくい。笠岡氏によれば、その人の体格や活動量にもよるが、できれば毎食お茶碗に軽く一杯のご飯を食べることがおすすめだそう。そうすれば食事の満足感も高く、腹持ちもよくなって結果的には太りにくくなるはずだ。ただし、外食やお弁当はお茶碗山盛りの量であることが多いので、その場合は食べ過ぎに注意を。

炭水化物はこうやって冷まして食べる。その効果的な摂り方とは?

ここからは炭水化物を加熱後に冷まして食べるというのはどういうことなのか、具体的に説明しよう。

日本人は、1日のうちに米から炭水化物を約112g摂取しています。炭水化物のほとんどがでんぷんですので、100gほどのでんぷんを食べていると仮定できます。

米を含めたいろいろなでんぷんの調理直後のレジスタントスターチ量は、平均するとでんぷん全体の約3%だという報告があります。また、それらを冷ますと、約12%にまでアップするという報告もあります。

計算すると、3食すべて温かいご飯の場合は1日に3g、全て冷ましたご飯の場合は1日に12gのレジスタントスターチが摂れることになります。

とはいえ、いきなり三食ご飯を冷まして食べるのはハードルが高いので、笠岡氏はまずは毎日の昼食をレジスタントスターチメニューに変えることを勧めている。

昼食にレジスタントスターチを食べると、血糖値が急に上がらないため、午後にダルさや眠気を感じにくくなり、快適に過ごすことができます。(中略)お昼ならば、朝にお弁当を作っておけば、お米のレジスタントスターチはお昼には増えているので特別な手間が必要ありません。

ちなみに、ご飯は炊いた後常温で1時間冷ますのがベスト。それ以上常温で置くと雑菌が繁殖する可能性があるので1時間程度にすること。また、余ったご飯を冷凍保存している人も多いだろうが、レジスタントスターチは炊きたてよりは増えるものの、冷蔵(常温)ご飯よりは少ないので、大きな効果を期待するのなら冷蔵の方がよさそうだ。ちなみに、冷凍ご飯を食べていることで話題になったのが、ダルビッシュ有選手だ。

2019年11月19日、メジャーリーガーのダルビッシュ有選手が、ユーチューブに「炭水化物はこれ以外食べない?ていうか食べられない男の炭水化物紹介。」という動画をアップしました。そこでダルビッシュ選手は、「冷凍の焼きおにぎり」しか炭水化物を食べていないと話しています。

その理由は、ホカホカの精白米やうどんなどを食べると、腕から首にかけて違和感が出るからだそうです。ダルビッシュ選手はそれを、「血糖値が急激に上がるためではないか」と話しています。

なるほど説得力のあるエピソードだ。

ご飯の他にも炭水化物はいろいろある。それらにもレジスタントスターチ効果はあるのだろうか。たとえばパスタなら、芯を残したアルデンテに茹でること。芯にはレジスタントスターチがたっぷり詰まっており、それを冷製メニューで食べることにより、さらにレジスタントスターチが増えて一石二鳥。うどんやそば、ラーメンも冷たいメニューにすることによってレジスタントスターチが増える。いずれも、生ではなく乾麺を選ぶのがおすすめだそう。

主食がパン派の人は、トーストせずにそのまま食べるのがベター。なぜなら、パンは既に小麦を加熱加工してできているものなので、冷まされている食品と考えられる。トーストするとレジスタントスターチが減ってしまうので、そのまま食べよう。

また、イモ類や豆類のレジスタントスターチ含有量も見逃すことはできない。イモ類の代表と言えばジャガイモ。ジャガイモを加熱後冷めた状態で食べるものといえばポテトサラダだ。

小鉢の量程度のポテトサラダでも、茶碗1杯分のご飯と同じぐらいのレジスタントスターチが摂れます。(中略)豆類は水煮して冷ましたり、ビーンズサラダにしたり、カレーの付け合わせにしたりと、ちょっとした工夫で食べる機会を増やしていきましょう。

笠岡誠一氏は『炭水化物は冷まして食べなさい』を執筆するに当たり、日本全国の郷土料理や、各都道府県の健康習慣を調査したのだという。結果、日本人は昔から炭水化物を食べていたのだということを思い知ることになったのだそうだ。昔からの食習慣を変えずに続けている人は健康長寿を実現しているという。冒頭で日本人は炭水化物を分解する酵素を多く持っていることを紹介したが、体に合ったものを食べることが健康に繋がるのは確実であるようだ。

<参考図書>『炭水化物は冷まして食べなさい。 腸活先生が教える病気を遠ざける食事術』笠岡誠一著/アスコム刊糖質を悪者扱いするのは間違い!? ご飯もパスタも冷ませば太らない。炭水化物は「すごい食物繊維」に生まれ変わり、病気を遠ざける。あのダルビッシュ選手も実践している炭水化物の効果的な摂取法を伝授。その健康効果を詳細に解説し、誰もが炭水化物のパワーに納得する1冊。


text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)

photo by Shutterstock

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