世界一エコなサッカークラブが挑む、究極のサステナブルとは
パラサポWEB / 2021年5月20日 19時18分
環境に配慮した持続可能な社会を目指す「サステナブル」という新しい理念は、いまサッカー業界でも急速な広がりを見せている。マンチェスター・ユナイテッドやユヴェントスといった世界のトップチームもこぞってコンセプトに賛同し、地域社会への貢献といったさまざまな取り組みに努めているが、その先陣を切るのはイングランドの小さなサッカークラブ「フォレストグリーン・ローバーズ(FGR)」だ。
創設は1889年と古く、100年以上の歴史を持つが、長らく実質5部に該当するナショナルリーグに所属するなど、コートの上での特筆すべき実績は存在しない。それでも、世界各国のメディアに取り上げられ、のべ20億人もの人々から称賛の嵐が巻き起こった理由は、どこにあるのか。ここでは、そのストーリーを紐解いていきたい。
国連やFIFAも絶賛! サッカーを通じて環境問題に挑む、圧倒的な実践力FGRがどのようにして、オーガニックなやり方でピッチをヘルシーに保っているか、が説明された看板 ©︎Getty Images Sports
イギリス南西部の町、ネイルズワースに本拠地を構える「フォレストグリーン・ローバーズ」は、世界一エコなサッカークラブとして大きな注目を集めている。
そのすべての活動の中心に据える思想は、「サステナブル」だ。スタジアムの屋根にはソーラーパネルを設置して、使用する電力やガスはすべてグリーンエネルギーでまかなう徹底ぶり。グラウンドの芝も殺虫剤や除草剤を使うことなく、有機肥料と雨水だけで育て、整備用の芝刈り機さえも太陽発電による電動タイプを使うというこだわりようだ。
さらにはスタジアムで使用するプラスチックも最小限におさえ、トイレの手洗い石鹸もオーガニックのものを使っている。もちろん、たくさんの手間がかかる大変な仕事だが、サステナブルの実現のためなら、どんな地道な作業も厭わない。
こうした世界のどのサッカーチームも行なっていない、サッカーと環境問題を融合させた新しい取り組みは、CO2の排出削減やリサイクルといった分野で高い効果を上げ、2018年には世界初の「カーボンニュートラル(※)なスポーツクラブ」として国連が認証。FIFA(国際サッカー連盟)からも「世界で最もグリーンなサッカーチーム」として高い評価を受けている。
ちなみに、フォレストグリーン・ローバーズがエコ・ファーストへ舵を切ったきっかけは、2010年にクラブのメインスポンサーがイギリスで最も環境に優しいエネルギー企業として知られるエコトリシティへ変わったことにある。同企業で会長を務めるデイル・ビンス氏がクラブのオーナーとして運営に携わるようになったことで、サッカーをたくさんの観客に環境メッセージを届ける新しい手段としようという意識が芽生えたからなのだ。
※二酸化炭素の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロになるようなエネルギー利用のあり方を示す概念
ヴィーガン料理に、竹製のユニフォーム!? FGRが成し遂げた2つの「世界初」(写真はイメージです)©︎Shutterstock
先述の事例以外にも、フォレストグリーン・ローバーズには特筆すべきサステナブルな取り組みがまだまだある。
スタジアムで提供される食べ物は、驚くことにすべてヴィーガンだ。動物由来ではなく植物由来の食事をとることは、温室効果ガスや資源の削減の観点から地球への負荷を減らす手段となる。そのため、サッカー観戦の定番フードともいえるハンバーガーやフライドポテトを、代替肉を使ったヴィーガンバーガーやヴィーガンファヒータ、サラダやスイートポテトのフライに一新。ビールなどを含めた、すべてのメニューを地元の食材を使ったヴィーガン料理へと移行したのだ。
この方針は、選手を含むスタッフがとる食事にも徹底されている。アスリートが強い肉体を作るためには、動物性のたんぱく質が必要に感じるが、実はヘルシーで新鮮なヴィーガン料理は免疫力や抵抗力を高め、選手のパフォーマンスを向上させる効果があると言われている。事実、選手たちからも最高のコンディションで試合に臨めるようになったと好評を博しているという。
こうした取り組みが評価され、2017年にはヴィーガン協会よりヴィーガンマークの認証証を授与。世界初のヴィーガン・サッカークラブとして公式に認められることとなった。
グリーン × ブラックのボーダー柄から動物の迷彩柄(ゼブラ・ストライプ)になり、マテリアルも自然素材の竹へと進化したユニフォーム ©︎Getty Images Sportsまた、環境への配慮を重んじる姿勢は、選手の着るユニフォームに表れていることも見逃せない。なんと、彼らの愛用するシマウマの縦縞からデザインの着想を得た迷彩柄のサッカーシャツは、サステナブルな素材として知られる竹から作られているのだ。原材料の50%に、成長が速く再生可能な竹を使用することで、通常のサッカーユニフォームの生産に使われるプラスチックを大幅に削減することに成功した。
既成の枠にとらわれない、竹製のサッカーユニフォームという発想も、いうまでもなく世界初の試みだ。いまではチームの理念を象徴するアイコンとして、すっかりシーンに定着している。
次なる挑戦は、世界初の木製スタジアムの建設! 目指すは最高にグリーンな環境©︎Shutterstock
そんなサッカー界に真なるサステナブルを広めるフォレストグリーン・ローバーズが掲げる次なる目標は、世界で最もグリーンなスタジアム「エコパーク」の建設だ。
これまでも「ニューローン」と呼ばれる既存のスタジアムで数多くのサステナブルな施策を講じてきたが、新たに建設を予定しているスタジアムでは世界で初の挑戦となる「完全木製」を目指しており、世界中のどのスタジアムよりも二酸化炭素の排出量が少なくなる見込みだという。
このデザインを担当したのは、著名な女性建築家、故ザハ・ハディド氏。収容人数5000人の「エコパーク」は、自然豊かな公園用地内に建てられ、そこには500本もの樹木と1.8kmにもおよぶ生け垣が植栽される予定だ。
すでに建設許可申請書は提出済みで、あとは行政からの許可を待つだけ。もし、建設許可が下りれば、サッカー界において特別な意味をもつスタジアムになることは言うまでもない。
こうしたフォレストグリーン・ローバーズの先進的な取り組みには、理念だけにとどまらず、経済的にも賛同する声が多く集まってきている。地方の小さなサッカークラブでありながらも、チームの主要株主には名門アーセナルに所属するエクトル・ベジェリンが名を連ね、クリエイティブディレクターにマッシヴ・アタックの中心人物、ロバート・デル・ナジャが迎えられるなど、名実ともに備わった時代の大きなうねりへと発展しつつあるのだ。
コート上でのプレー以外にも、徹底した環境への配慮という取り組みからスポーツで世界を変えられることを証明したフォレストグリーン・ローバーズ。今後も、その斬新なアイデアで世界をさらにグリーンにしてくれることを期待したい。
text by Jun Takayanagi(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock,Getty Images Sports
参考資料:Forest Green Rovers https://www.fgr.co.uk/
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