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意外と少ない? 若返りに効果的な運動量とは

パラサポWEB / 2021年6月25日 9時40分

超高齢社会といわれる時代を生きる私たちにとって、できるだけ長く健康的に若々しくいること、つまり「アンチエイジング」は重要な課題のひとつだ。近年、科学の進歩により人の体内に存在する「テロメア」が老化防止のカギを握っていることがわかった。このテロメアに注目した治療医学を推奨する医学博士・古賀祥嗣氏の著書『「最近、若返ったね」と言われたければ、テロメアをのばしなさい』から、テロメアとは何か、そして最新科学に裏付けられた、日常生活の中で誰でもできる若返りの方法をご紹介する。

テロメアは人間の健康や寿命に大きな影響を与える「生命の回数券」

「テロメア」とは、私たちの体を作る細胞の中の染色体の末端にある構造で、大事な遺伝子情報を保護するキャップのようなもの。人間の体は生まれたときから細胞分裂を繰り返し、新しい細胞をつくることで生命を維持している。しかし、細胞が分裂する回数には限りがあり、その回数に関係するのがテロメアだ。

「細胞が分裂するときは、まずDNAがコピーされますが、実はこのとき、染色体の最末端部分を完全にコピーすることはできないのです。ですから細胞分裂を繰り返すごとに、末端は徐々に短くなっていきます。つまりテロメア配列が少しずつ失われていくわけです」 (『「最近、若返ったね」と言われたければ、テロメアをのばしなさい』より、以下同)

こうしてテロメアは年齢とともに短くなるが、それによって染色体が不安定になり最終的に細胞は分裂をやめてしまう。細胞が分裂しないということは、新しい細胞が生まれなくなるので、老化が進み、やがては生命を維持できなくなってしまう。このことからテロメアは「生命の回数券」とも呼ばれているそうだ。

テロメアを短くしてしまう4つの生活習慣

では、テロメアが短くなると具体的にどんなことが起きるのか。

老化が進むと、肌はたるみ、シミやくすみ、シワが目立ち、白髪、骨量の低下……といった現象が起こります。こうしたことはテロメアの短縮と深く関わっているのです。(中略)こうした見た目の変化だけではなく、すべての加齢関連疾患の事実上の原因となります。

加齢関連の疾患とは、がん、脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化、感染症、認知症など。どれも悪化すれば生命に大きな影響を与える疾患だ。人間が生きていく以上、細胞分裂が起きるのは自然なことで、それに伴いテロメアが短くなるのもやむを得ない、と諦めるのは早い。2009年にテロメアの役割を明らかにした研究で3人の科学者がノーベル賞を受賞した。その研究により、テロメアの短縮速度には個人差があることや、以下のような生活習慣がテロメアの短縮を加速させることが明らかになった。

<テロメアの短縮を加速させる生活習慣>

1.不規則な食生活や偏食

2.運動不足

3.喫煙、過度の飲酒

4.精神的なストレス

このような生活習慣は成人病の原因とも言われているが、実は老化にも悪影響を及ぼしているのだ。どれも誰もが1つや2つ心当たりのある項目だが、逆に考えれば、上記のような生活習慣を改めればテロメアの短縮速度を遅らせることができる、つまり老化や病気を予防できるかもしれないということだ。

意外と少ない? 若返りに効果的な運動量とは

【不規則な食生活や偏食】、【喫煙、過度の飲酒】といった悪習慣は、すでにある習慣を変えたり止めたりすることで改善される。最近は、喫煙できる場所が減ったこともあり、煙草を吸う機会も少なくなってきたり、またコロナ禍によって飲み会や会食の機会が減り、飲酒や夜更かしが減ったという人も多い。

一方で【運動不足】の解消は、これまでにない習慣をプラスすることなので、少しハードルが高く感じるかもしれない。だが、最近は在宅勤務が増えたことでますます運動不足が加速し、コロナの不安などによってストレスを感じやすいという声もよく聞く。ストレス解消にはもちろん、アンチエンジングのためにも、今こそ本格的に運動習慣を取り入れる時かもしれない。では、運動でテロメアの短縮を遅くするには、いったいどの程度の運動量が有効なのだろうか?

座ってばかりいる人のテロメアは、少しでも運動をする人に比べて短いことが確認されています。ただし、極限的な運動を行っている人の筋肉細胞のテロメアには短縮が認められたという調査報告があり、テロメアのためだけなら過酷な運動をする必要はまったくないということです。

健康のための運動というとハードなものを考え、それだけで難しいと感じてしまうが、テロメアの短縮速度を遅らせることだけを考えるなら、軽い運動で十分だということになる。

具体的にどんな運動が効果的かというと、

たとえば、「ウォーキング」「ジョギング」「水泳」などの運動習慣を取り入れることもその1つです。軽い有酸素運動を30分以上、できれば毎日、少なくとも週2~3回程度行うだけでも、効果があります。運動というと苦手意識を持つ人もいるかもしれませんが、30分以上の散歩をするのも立派な運動です。

30分以上のウォーキングを週3回というと一見多いように感じるが、たとえば朝30分の散歩を週に1回。片道15分のスーパーに週2回歩いて買い物にいく。それだけで30分以上のウォーキングを週3回行ったことになる。「運動するぞ!」と身構えると長続きしないが、生活の一部に運動を取り入れる、あるいはこの1歩が若返り、健康寿命に繋がると思えば、決して難しくないはずだ。また、適度な運動は気分転換になりストレスの発散にも役立つので、テロメアの短縮速度を抑えるのに一石二鳥というわけだ。


若さを保つことは、始皇帝をはじめ時の権力者が莫大な費用や人材をかけて追い求めてきた、人類の永遠の課題だった。しかし、科学技術が進んだ現代社会ではアンチエイジングは夢物語ではない。生活習慣の改善の中でも、運動は最も後回しにしやすい。でも、だからこそ運動習慣のない人は、運動を日常生活に取り入れることで「若返り」をより実感できるだろう。

<参考図書>『「最近、若返ったね」と言われたければ、テロメアをのばしなさい』

古賀祥嗣著/イースト・プレス

2009年、健康や寿命に大きな影響をあたえる「テロメア」の研究によって3人の科学者がノーベル賞を受賞した。肌のたるみやシワ、白髪などの見た目の老化や、成人病や認知症といった病など、加齢の悩みを解決する医学博士によるエイジングバイブル。


text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)

photo by Shutterstock

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