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視線や眉毛の動きで投球する球技ってナニ?

パラサポWEB / 2021年7月1日 18時30分

「ボッチャ」ってどんなスポーツ?

簡単に言うと…

①白い目標球に、自分たちの球をいかに近づけられるかを競う対戦型競技

②個人戦、団体戦(ペア戦とチーム戦)がある

③ボールは投げても、転がしても、相手のボールに当ててもOK

④障がいの程度によっては補助用具の使用やアシスタントによるサポートも認められている

ボッチャは、重度の脳性まひ、もしくは同程度の四肢重度機能障がいのある人のために、ヨーロッパで考案されたスポーツ。競技は二手に分かれて行い、赤と青それぞれ6つのボールを投げたり転がしたりして、的となる白い目標球(ジャックボール)に、どれだけ近づけられるかを競い合う。

先攻側はジャックボールを投げたあと、それに近づけるように赤いボールを投げる。そのあと、後攻側が青いボールを投げる。これ以降は、ジャックボールから遠い位置にボールを投げた側が次の投球を行っていく。赤も青も6つのボールを投げ終わった時点で1エンド終了。最終的にジャックボールに近いボールが多い方が勝ちとなる。カーリング同様、相手のボールに自分のボールを当てることができるほか、ジャックボールを弾いて移動させることも可能。

ボッチャはオリンピックにはない競技で、パラリンピックには1984年から正式競技として採用された。見た目の激しさはないが、戦略が重要となる知的なスポーツとして、近年では、障がいのある人だけでなく、企業内でボッチャ部ができたり、企業内スポーツ大会に採用されるなど、健常者でもボッチャをプレーする人が増えている。

ココに注目!観戦が面白くなるポイントは?
(写真はロンドン2012パラリンピック)ⓒGetty Images Sport ①用具の工夫に注目!

ランプ、リリーサー

基本はボールを手で投げたり、転がしたりするのだが、ボッチャは、障がいの程度によって、以下の4つのクラスに分かれており、最も障がいの重いBC3クラスの選手はボールを自分で投げられない。そのため、「ランプ」と呼ばれる滑り台のような勾配具や、口にくわえるなどしてボールを押し出す「リリーサー」という補助具の使用が認められている。

ボッチャのクラス分け

1:「BC1」(車いす操作不可/四肢・体幹に重度のまひがある/脳原性疾患のみのクラス)

2:「BC2」(上肢で車いすの操作がある程度可能/脳原性疾患のみのクラス)

3:「BC3」(最も障がいの重いクラス。自力で投球ができない/脳原性疾患、非脳原性疾患)

4:「BC4」(筋ジストロフィーなど、BC1・BC2と同等の重度四肢機能障がいがある)

(参考:日本ボッチャ協会WEBサイト)

(写真は2013年National Paralympic Day in London)ⓒGetty Images Sport

マイボール

また、ボッチャはマイボール制で、規定の大きさと重さの範囲内であれば、選手は障がいの特性やプレースタイルによって、自分好みの硬さや素材のボールを使うことができる。代表的なボールの素材と特徴は次の通り。

天然皮革製:凹凸が少なく、まっすぐに転がりやすい フェルト製:表面が毛羽だっているため、滑りやすく、相手のボールを弾く時などに使う 人工皮革製:表面がしっとりしていて滑りにくい

これらの素材の特徴を生かし、選手は手持ちの6球を組み合わせ、「転がるボール」「止まるボール」「弾くボール」などと、使い分けをしている選手もいるという。一見同じように見えるボールも、巧妙に工夫されているのだ。

②チェスや将棋のような高度な頭脳戦が面白い!
(写真はロンドン2012パラリンピック)ⓒGetty Images Sport

ボッチャのもうひとつの特徴は、的となるジャックボールの位置を選手が決められるということ。そのため、最初に投げるジャックボールの位置をどこにするかは、重要な駆け引きとなる。例えば、相手が長距離の投球を苦手とする場合は、相手から遠い位置にジャックボールを投げたり、あるいは自分の得意な場所に投げたりすることもある。選手は試合中でも、自分のボールをジャックボールに当てて位置を変えることができるので、一発逆転もあり得るから最後まで目が離せない。このように、単にボールをジャックボールに近づけるだけでなく、チェスや将棋のように、何手も先を読んで戦略を練る必要があるボッチャは「頭脳戦」とも言われている。

③視線や眉毛の動きでアシスタントに指示!?
(写真はリオ2016パラリンピック)ⓒGetty Images Sport

競技中、最も障がいの重いBC3クラスの選手、BC1クラスの補助が必要な選手、BC4クラスの脚蹴りで競技をする選手は1人につき1人のアシスタントをつけることができる。アシスタントの役割は、クラスごとに規定されているが、主に選手の指示を受けてランプの高さや位置を調整するといったことをする。ただし、競技をしている間、アシスタントはコートを見たり、アドバイスすることは禁止されている。あくまでも目で見て、頭で戦術を考えるのは選手であり、アシスタントは手や足となって選手をサポートする。

選手の中には、言葉でコミュニケーションがとれない人もいる。その場合は、視線や眉毛の動きなどで指示するため、アシスタントは正確にその指示を読み取る必要がある。勝利に向かって心をひとつにして、選手とアシスタントが協力し合う姿もまた、ボッチャの見どころのひとつだ。

東京パラリンピックもボッチャに注目!
(写真はロンドン2012パラリンピック)ⓒGetty Images Sport

ボッチャはもともとヨーロッパで生まれた競技だが、近年はアジア勢の活躍が目覚ましい。日本は、前回の2016年リオ大会で、初めて銀メダルを獲得(団体BC1/2)。自国開催となる東京2020パラリンピックでは、日本選手のさらなる活躍が期待される。障がいの有無に関係なくプレーできるボッチャは、東京大会を前に、大学や企業でもサークルができるなど、健常者の間でもブームの兆し。このムーブメントに乗り遅れないためにも、戦略と技を駆使した、トップ選手たちの熱い戦いは見逃せない!

ボッチャの種目、クラス分けが書かれたページはこちら https://www.parasapo.tokyo/sports/boccia


text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)

photo by Getty Images Sport

参考資料:

『かんたん! ボッチャガイド』(外部サイト:日本障がい者スポーツ協会)

https://www.jsad.or.jp/about/referenceroom_data/competition-guide_10.pdf

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