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スポーツが苦手な人も観たくなる、優雅な「馬のバレエ」とは

パラサポWEB / 2021年7月17日 9時44分

「パラ馬術」ってどんなスポーツ?

簡単に言うと・・・

① 人馬一体となり、技の正確性、演技の美しさを競う

② オリンピックの馬術とは異なり、採用種目は馬場馬術のみ

③ パラリンピックの競技で唯一の採点方式

④ 音楽に合わせて行う自由演技は、「馬のバレエ」と評される

オリンピックやパラリンピックにはさまざまな競技があるが、人間と動物がパートナーを組んで参加する唯一のスポーツが馬術だ。馬術は理学療法の一環として、障がいをもつ人のリハビリを目的として導入された歴史があり、競技としても広がりを見せ、1996年のアトランタ大会からパラリンピックの正式競技となった。

競技は男女を区別せず行われるため、女性の上位入賞者も多く見られる。演技するのはあくまで馬であり、人に求められるのは身体能力以上に、馬とのコミュニケーション力。つまり、馬術は性別や年齢、身体的な障がいを超えて、多くの人が楽しめるユニバーサルスポーツなのだ。

一般の馬術と何が違うの?
(写真は北京2008パラリンピック)ⓒGetty Images Sport ① 障害馬術はなく、馬場馬術のみ

オリンピックの馬術では、障害物を飛び越えタイムを競う「障害馬術(ジャンピング)」が人気だが、パラ馬術では演技の正確さや美しさを競う「馬場馬術(ドレッサージュ)」のみが行われる。「馬場馬術」には3種類あり、個人規定と自由演技、そして団体だ。個人課目は障がいの内容や程度により、それぞれの中でグレードが5段階に分かれている。

② 馬具の改良が認められている

パラリンピックの馬術に参加できるのは、上下肢障がい、または視覚障がいのある選手だ。障がいの内容によっては、馬に適切な合図を送るために必要な特殊馬具の使用が認められている。たとえば、両手で手綱が握れない場合は片手で扱えるバー状に改良したり、指に欠損がある場合は片指に引っかけて使用できるループ状の手綱を使ったりする。中には両腕がなく、口を巧みに使って手綱を引く選手もいる。それぞれが試行錯誤し、障がいに応じた工夫をこらしているのだ。

③ 馬場には、最大13人の味方がいる!

視覚障がいのある選手は、ガイドを最大13人まで配置できる。自身で周囲を目視で確認するのが難しいため、ガイドがかけ声で位置を知らせ、決められたルートを正確に進む手助けをする。また、脳の障がいの影響で、演技の順番や経路が覚えることが難しい選手には、「コマンダー」が指示係となって演技の途中で選手に教えることが許されている。

ココに注目!観戦が面白くなるポイントは?
(写真はリオ2016パラリンピック)ⓒGetty Images Sport ①馬を意のままに操る騎手の技は魔法レベル!?

「もしや、この馬はテレパシーで指示を受けている?」そんなふうに思ってしまうほど、よく訓練された馬の動きは正確でとても美しい。規定演技では馬場内の定められた地点を移動したり、円などの図形を描いたりと、20~30もの課題が設けられている。常歩(なみあし)、速歩(はやあし)、駈歩(かけあし)など3つの速度、歩幅の指示などもあり、騎手はそれを馬に合図して実技する。正確性のほかに、馬の姿勢や活気よく歩いているかも採点に影響する。馬のテンションまでコントロールする騎手はまるで魔法使いのようなのだ。

②音楽に合わせて馬がダンス! たてがみにも注目

自由演技は、個人課目の成績上位者のみが参加でき、音楽に合わせて演技を行う。選手自身が演技構成に参加するケースもあり、技術の高さはもとより、リズムや動きに緩急をつけるなど、規定演技とは打って変わり表現力豊かなパフォーマンスは、観ていて心が躍るはず。

また、自由演技は、馬がリズムに合わせて優雅にステップを踏むように見えることから「馬のバレエ」とも呼ばれる。選手はいつも通り正装だが、このときばかりは馬もたてがみを三つ編みやお団子にセットし、ドレスアップして登場。心なしか誇らしげな馬の表情や動きにも注目してみよう。

③選手と馬の心の交流に癒される

動物は生き物。人間と同じく感情の起伏や体調の変化もあるため、選手は練習や練習後の世話を通して、常に馬の様子を観察しコンディションを把握することが大事だ。パラリンピックの本番までに長い時間をともに過ごし、信頼関係を築いてきたかけがえのない相棒。競技が終わったときに、選手が馬に感謝して愛撫するシーンも多く見られる。言葉を超えた人と馬の心の交流も馬術ならではの見どころだろう。

東京2020パラリンピックもパラ馬術に注目!
(写真はロンドン2012パラリンピック)ⓒGetty Images Sport

馬術競技における強豪国は、長い歴史と競技人口を誇るヨーロッパ勢だが、日本チームも東京パラリンピックに向けて大きく実力を伸ばしているという。東京大会に出場予定の日本代表選手は4人。リオ大会に続いての出場となる宮路満英選手、若手の稲葉将選手、吉越奏詞選手、元ジョッキーの高嶋活士選手が、上位進出を目標に士気を高めている。選手と馬が一心同体となり、正確にリズムよく走る姿を見届けるべく、東京大会も馬術に注目だ。

馬術の種目、クラス分けが書かれたページはこちら https://www.parasapo.tokyo/sports/equestrian

                                        


text by Makiko Yasui(Parasapo Lab)

photo by Getty Images Sport

参考資料

『かんたん!馬術ガイド』(外部サイト:日本障がい者スポーツ協会)https://www.jsad.or.jp/about/referenceroom_data/competition-guide_22.pdf

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