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NHKパラリンピック放送リポーターが紹介! パラアスリートの魅力と競技の見どころ

パラサポWEB / 2021年8月14日 8時3分

障がいのある当事者として、独自の視点でパラスポーツやパラアスリートを取材し、その魅力を伝え続けているNHKパラリンピック放送リポーターの3人。取材を通して感じた選手の魅力、競技の楽しみ方について聞いてみた!


後藤佑季リポーター

【主な取材競技】陸上競技車いすラグビー車いすテニスバドミントン

パラアスリートは、何度でも立ち上がる力「レジリエンス」の体現者。

パフォーマンスから「人はどんな状況でも立ち上がれる」と感じてほしい

私には生まれたときから重度の聴覚障がいがあり、人工内耳をつけています。人工内耳とは、マイクで集めた音を電気信号に変換する装置で、音を聞き分けられるようになるには、訓練が必要です。トレーニングを重ねて用具を体の一部のように扱えるようにするという点では、義肢も同じ。そのため、中西麻耶選手をはじめ義肢の選手たちが、わずかな違いにこだわって競技用義肢を調整する気持ちや、使いこなせるようになるまでの努力の一端がわかるような気がしますし、だからこそ応援したくもなります。陸上競技を観る際は、ぜひ選手と用具との一体感にも注目していただきたいです。とくに、陸上競技100mのヨハネス・フロアス選手が両脚義足で走る姿は、必見。鍛え上げられた肉体で、後半からぐいぐいと追い上げるあの走りを観たら、障がいの概念がくつがえるのではないでしょうか。

私たち障がいのある人たちは、その障がいゆえに、日々、大小さまざまな出来事に出会いますが、そのたびに立ち向かい、立ち上がり続けています。それができるのは、障がいを乗り越えたからではなく、あきらめつつも受け入れ、共に生きているからこそです。

昨年、この「何度でも立ち上がる力」を一言で表す言葉に出会いました。レジリエンスです。そして、この言葉を体現する最たる存在がパラアスリートであり、だからこそ、そのパフォーマンスに感じ入るものがあるのだと、すっと腹落ちしました。実際、ドイツの義足ジャンパー、マルクス・レームをはじめ、取材でお会いした何人ものパラアスリートたちも、「レジリエンスこそがパラアスリートが持つ力であり、価値の一つである」と言っていました。

現在のように制約の多い中では、レジリエンスは、だれにとっても必要な力かもしれません。東京パラリンピックでは、パラアスリートたちのレジリエンスを言葉で伝えていきたい。また、観る方には、彼らのパフォーマンスを通して「できることに目を向ければ、できることはいっぱいある」「人間には、どんな状況に陥っても立ち上がる強さがある」と感じていただけたらうれしいです。そして、障がいのある人たちが「助けてあげなくてはいけない人」「かわいそうな人」ではなく、もっと身近な存在になるといいなと思っています。

陸上競技用義足を体験する後藤リポーター(左)

この選手に注目:陸上競技 ヨハネス・フロアス(ドイツ/T62クラス)100mなど

写真はドバイ2019世界パラ陸上競技選手権 photo by Getty Images Sport

三上大進リポーター

【主な取材競技】水泳5人制サッカー車いすバスケットボール柔道

パラスポーツって、本当に自由! だから、楽しみ方も自由でいい。

観るうちに、私ももっと自由になっていいんだ、と気づけた

私はスポーツとは無縁なタイプ。パラスポーツを初めて観たのも、リポーターになってからです。正直、最初のころは「盛り上げなくちゃ」という温度感で。でも、今じゃすっかりその面白さにハマっていて、観戦に行けば大興奮しちゃうし、あの選手のカッコよさを今すぐあの子にLINEで教えたい!って思っちゃう。こんな自分の姿、3年前には想像していませんでした。(編集注:三上リポーターは2018年1月に取材開始)

 それも、取材を通してたくさんのパラアスリートの魅力に触れたからこそ。例えば、水泳・全盲クラスの富田宇宙選手は、眼光鋭い色黒マッチョで怖そう、なんて思っていたけど、実際はチームメイトのちょっとした変化にも気づける繊細さん。17歳で網膜色素変性症を発症し、できないことばかりが増えていく絶望の日々の中、水泳に出会って新しいページを開くことができたと話してくれたことも心に残っています。パラスポーツには、本人の人生はもちろん、家族や友人、同僚、そして社会までポジティブに変えうるパワーがある。これぞまさにバタフライ・エフェクトだなって思います。

 パラスポーツは、その自由さも魅力です。水泳の自由形といえば、オリンピックの場合はクロールですが、パラリンピックでは、バタフライも平泳ぎも背泳ぎもいて、本当に自由。柔道だって、袖のつかみ合いが見どころの一つなのに、パラリンピックでは、視覚障がい者同士で戦うため、組んだ状態から始まるんです。私は生まれたときから左の手指が欠損していて、パソコンのタイピングなど、決められたとおりにできないことがあります。そのため劣等感を抱いたこともあるのですが、パラスポーツを通して、どんなことでも自分が心地よいと思う方法でやっていいんだと思えるようになりましたし、何より自分を肯定できるようになりました。

 だから、パラリンピックの楽しみ方も自由でいいと思います。あの選手のインスタがおしゃれとか、ツイッターが面白いとか、ファッションが好きとか。どこから入っても、十分楽しめるし、ハマれますよ。だって、私がそうなんだから。

2019年の日本知的障害者選手権水泳競技大会を取材する三上リポーター

この選手に注目:水泳 富田宇宙(日本/S11クラス)400自由形など

写真は2021ジャパンパラ水泳競技大会 photo by Getty Images Sport

千葉絵里菜リポーター

【主な取材競技】ボッチャ卓球馬術ゴールボール

不可能をどう可能にするかを考え抜いているのが、パラアスリート。工夫次第で、人の可能性って無限大になるんですね

リポーターとして初めて取材した2018ジャパンパラボッチャ競技大会のことは、あまりに衝撃的で今でも鮮明に覚えています。選手はほぼ、私と同じ脳性まひなのですが、自分の障がいに合わせて、車いすの仕様や投球フォームを工夫していて。とくにタイのパタヤ選手は、よく車いすから落ちないなというぐらいの姿勢で投げていました。実は、私は車いすカーリングのクラブチームで7年間活動していたのですが、できないことがあっても仕方ないって、どこか脳性まひを言い訳にしていた部分があったんです。でも、ボッチャの選手たちを見たら、工夫が足りなかっただけだと気づかされました。パラアスリートって、できないからとあきらめるのではなく、できるようにするためにはどうしたらいいかを考え抜いている人たちなんですね。そんな選手たちに憧れを抱きましたし、人の可能性って無限大なんだって、感動しました。

ボッチャの日本代表・火ノ玉ジャパンをけん引する廣瀬隆喜選手は、私が親近感を抱いている選手の一人です。実はお会いするまでは、「パワー系のプレーヤーで、近寄りがたそう」なんて思っていました。でも、実際はタピオカミルクティーが好きというおちゃめな一面もある、優しいお兄ちゃんという感じの方で。競技についても、ボールの位置をミリ単位で投げ分けられるほどの技巧派だそう。イメージとは異なる素顔を知れたときは、わくわくしました。

ところで、取材時についチェックしてしまうものがあります。選手たちの車いすです。車いす本体はもちろん、背もたれやクッションといったパーツも様々で、どんなカスタマイズをしているかチェックするのが楽しいんです。私もかつて、ホイールに大好きなキャラクターのイラストを入れていたことがあるんですよ。今振り返ると、イタイなーと思うのですが(笑)、そんなこと一つでモチベーションが上がるのも事実。ちなみに、廣瀬選手のホイールの色は、ゴールド。金メダルに向けて気合十分というところでしょうか。試合を見る際は、ぜひ選手たちの車いすにも注目してみてください。

火ノ玉JAPAN SPECIAL GAMES~ONE BOCCIA~を取材する千葉リポーター

この選手に注目:ボッチャ 廣瀬隆喜(日本/BC2クラス)個人戦など

写真は火ノ玉JAPAN SPECIAL GAMES~ONE BOCCIA~ photo by Jun Tsukida

text by TEAM A

key visual by NHK, Jun Tsukida

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