女子は2度目の金、男子は初のメダル獲得を狙う!ゴールボール日本代表
パラサポWEB / 2021年8月12日 11時6分
パラリンピック初出場の男子はメダル獲得を、5大会連続出場の女子は金メダル獲得を目標に掲げているゴールボール。
予選リーグは男女それぞれ出場10ヵ国を5チームずつの予選プールにわけ、総当たりで行われる。各プールの上位4ヵ国が決勝トーナメントの準々決勝に進む方式だ。
抽選の結果、男子日本代表はプールA、女子日本代表はプールDに入る。各プールの構成は下記の通りとなる(カッコ内は世界ランキング)。
(男子予選)
●予選プールA
ブラジル(1位)、アルジェリア(13位)、アメリカ(8位)、日本(10位)、リトアニア(2位)
●予選プールB
ドイツ(4位)、ベルギー(6位)、ウクライナ(12位)、中国(3位)、トルコ(9位)
(女子予選)
●予選プールC
RPC(ロシア・パラリンピック委員会)(7位)、イスラエル(8位)、中国(2位)、オーストラリア(10位)、カナダ(6位)
●予選プールD
トルコ(1位)、ブラジル(3位)、エジプト(29位)、アメリカ(4位)、日本(5位)
メダルへの期待が高いのは、2012年のロンドン大会で金メダルを獲得し、世界ランキングでも5位につけている女子の代表チーム。ただ、同じ予選プールDには、前回のリオ大会で金メダルを獲得している世界ランキング1位のトルコもいる。ほかにも同3位のブラジル、同4位でリオ大会銅メダルのアメリカと強豪が顔を揃えているため、厳しい戦いが予想される。
ロンドンパラリンピックの金メダルメンバーでは、浦田、若杉、欠端が東京大会のメンバーに photo by Getty Images Sport日本は初戦(8月25日)でいきなり世界ランキング1位のトルコと対戦する。女子日本代表は2018年のジャパンパラの決勝でトルコと対戦しているが、エースのセブダ・アルトノロクに3得点を挙げられ敗北している。今大会でもセンターの浦田理恵を中心に守備を固め、アルトノロクをいかに抑えられるかが最大のポイントとなるだろう。
2戦目(8月27日)の相手となるブラジルは、後ろを向いて足の間から両手を使って投げるなどパワフルなショットを特徴としたチームだ。日本はブラジルよりも世界ランキングが下位であるものの、今大会と同じ会場で行われた2019年のジャパンパラ大会でブラジルに勝利しており、決して苦手ではない相手。そのときの試合で2得点を挙げた若杉遥の活躍が期待される。
若手の高橋は日本が誇る守備における二枚看板のひとり(2019ジャパンパラゴールボール競技大会)3戦目(8月28日)はアメリカと対戦。2019年のジャパンパラ大会決勝で敗れている相手だ。このときは抜群の運動量を誇る攻守の要、センターのアマンダ・デニスを中心とした守備を崩せず、2対1で競り負けている。しかし、同大会の予選で日本はアメリカ相手に勝利を挙げており、この試合で得点を挙げている欠端瑛子のパワフルなショットがゴールネットを揺らせるかどうかがポイントとなりそう。パワーに加えて精密にコースを狙うショットに注目したい。おそらく、この試合の結果が決勝トーナメント進出のカギを握ることになるだろう。
4戦目(8月29日)は、世界ランキング29位のエジプトとの対戦となる。今大会予選では唯一のランキング下位国との対戦となるので、確実に勝利を挙げておきたいところ。日本の強みである堅守で、得点を許さないことが勝利へのキーとなりそうだ。
プールCからは、ロシアと中国が決勝に進出してくる可能性が高い。リオ大会で銀メダルを獲得している世界ランキング2位の中国はとくに警戒すべき相手だ。ただ、女子日本代表は2019年のアジア・パシフィック選手権の決勝で中国チームを2対1で破り、3連覇を達成している。ランキング上位国ではあるが、互角に戦える相手だろう。
「緊張するが、勝利に貢献できるよう頑張りたい」と意気込む萩原(2019ジャパンパラゴールボール競技大会)ロンドン大会で金メダルを獲得したメンバーを中心とする日本のチーム編成は、平均年齢が高いことが不安要素でもあるが、1年の延期を経て、若手選手の台頭も感じられる。期待したいのは今大会が初出場となる2人。守備の要となるセンターを務める23歳の高橋利恵子と、攻撃力に加えてディフェンス力もアップしている20歳の萩原紀佳だ。キャプテンの天摩由貴を中心に、ベテランと若手の力が融合したチームは、ロンドン大会以来の金メダルをもたらしてくれるはずだ。
成長著しい男子チームはダークホース的な位置からメダルを狙う現在、世界ランキング10位にランクされる男子日本代表チームは、同1位のブラジル、同2位でリオ大会金メダルのリトアニア、ランキングは8位だがリオ大会銀メダルのアメリカなどと同じ予選プールに入った。初出場となる日本は若手中心のチームで激戦区を戦い抜くこととなる。
初戦(8月25日)はアルジェリア戦。予選では唯一のランキング下位国との対戦となるので、ここで勝って勢いをつけたいところだが、アルジェリアはアフリカ地区のチャンピオン。一筋縄ではいかない一戦となりそうだ。そして2戦目(27日)アメリカ、3戦目(28日)リトアニア、4戦目(29日)ブラジルと、上位国との3連戦へと続く。ここで一つでも多く勝って、決勝トーナメントに向けて弾みをつけたいところだ。
攻撃のカギを握る宮食(写真は2021ジャパンパラゴールボール競技大会)フィジカルで勝る海外チームに対抗するためには、日本の強みである敏捷(びんしょう)性がポイントとなる。市川喬一総監督が「ここまでチョコチョコ動くチームは世界でもない」と語るように、体が小さいことを長所として活かした俊敏な動きと、守備から攻撃への切り返しが勝負のカギとなる。小柄でありながら守備の要となるセンターを担う田口侑治を中心に失点を抑え、左右ウイングからの素早いカウンター攻撃に期待したいところ。とくに相手にボールをサーチされにくくなる、ポジションを移動しながらの攻撃に注目だ。
攻撃のキーとなるのは183cmの長身を活かしたショットが武器の宮食行次と、小柄な体ながらパワーのある山口凌河。ライン際を狙うストレートと、対角へのクロスの投げわけが得点のチャンスを広げるだろう。移動攻撃やバウンドボールを磨いている金子和也と佐野優人にも期待したい。ボールを持っていない選手も同時に足音を立てて相手を撹乱する「フェイク」を用いた攻撃も、日本の持ち味だ。
センターであり、キャプテンの川嶋悠太は東京大会延期決定後に代表に追加された(写真は2021ジャパンパラゴールボール競技大会)近年のゴールボールは個々の選手だけでなく、相手攻撃パターンなど事前の情報収集が勝敗に関わる要素となっている。この1年、海外勢と試合をしていない男子日本代表は、海外のチームからすると情報が少ない嫌な相手でもある。その間に日本は、練習環境が充実するなどプラスの変化もあった。「世界で一番成長していると思う」と選手自身が語るほど、チームは急速に力を伸ばしている。市川総監督も「初出場だからこそ、怖いもの知らずの勢いのまま初戦を戦い、決勝の舞台に立ってほしい」と表情は明るい。ダークホース的な位置から決勝進出とメダル獲得を狙う男子チームの活躍にも期待したい。
text by TEAM A
photo by Getty Images Sport,X-1,Hideyuki Imai
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