東京2020パラリンピックで躍動するアスリートたちの珠玉の言葉【後半戦まとめ】
パラサポWEB / 2021年9月8日 13時49分
12日間の競技日程を終え、金メダル13個を含む計51個のメダルを獲得する活躍を見せた日本代表選手たち。喜び、達成感、悔しさ……選手たちが発したそれぞれの言葉に込められた思いとは――。印象に残った言葉で振り返るパラリンピックの後半戦。
目標のメダルには届かなかったが、5位決定戦でスペインに勝利し、有終の美を飾った5人制(ブラインド)サッカー日本代表。決勝点を決めたのは日本のブラインドサッカー初代代表でもある黒田だ。雨が降り、ボールの音が聞こえづらい状況にもかかわらず、川村怜からの浮き球をダイレクトでボレーシュート! 軌道をはっきりイメージできたという驚きのプレーを見せた。「みんなの気持ちがひとつになった奇跡のような瞬間」にチームメートも喜んだ。
日本代表歴19年の黒田が新たな日本ブラインドサッカー界の歴史を作った photo by Kyodo決勝は7着でフィニッシュ。目指していたメダルに手が届かず、大粒の涙をこぼした。それでも、会場となった海の森水上競技場は生まれ育った江東区ということもあり、地元で戦えたことに感謝した瀬立。「たくさんの人たちの愛を感じながら漕ぐことができた」と最後は笑顔で前を向いた。
「メダルを獲るまではカヌーを終われない」とパリ大会を見据えたphoto by Takashi Okui金メダルなしに終わったリオから5年。苦しい時期も乗り越え、ついに金メダルを掴んだ。全盲の選手は国歌を聞いてこそ金メダルを実感すると聞くが、国歌が流れたとたん大粒の涙があふれ出し、顔をくしゃくしゃにした。「僕が唯一、金メダルを獲ったと認識した(時間)。もう(涙を)ガマンしなくていい」とは本人談。会場の視線を独占していた。
金メダル候補と言われ続けた木村がようやくつかんだ頂点photo by Takashi Okuiアーチェリー・リカーブ男子に出場した上山だったが、1本目こそ10点を射抜いたものの、その後は調子が出ず、悪い流れを断ち切ることができなかった。試合後、報道エリアで「なんだ、あの点数」と首を傾げた。上山は今大会、ともに東京パラリンピックの代表に内定していて今年2月に亡くなった仲喜嗣さんのクイーパー(矢を入れる筒)を持っていたが、「めちゃくちゃ心配していると思う」と嘆いた。
調子を取り戻せないまま終わってしまい、「何が起こったのか全く整理ができない」と頭が混乱したという上山 photo by Kyodo最後は気持ちの強いものが勝つ――日本代表選手団の主将も務めた国枝が9年ぶりにパラリンピック王者を奪還した。シングルスでメダルなしに終わったリオ大会後、自分のテニスに迷い、眠れない日もあり、今大会のメダルは「99.9%信じてなかった」と吐露。試合後、重圧があればあるほど勝利の味は特別と泣き崩れた。
「重圧があるからこそ勝利の瞬間に思いっきり泣ける」と試合後に一生分の涙を流したphoto by Takashi Okuiリオ大会では悔しい銀メダルとなった道下は、忘れ物(金メダル)を取りに行こうという気持ちでスタートライン立ったという。フィニッシュはほぼ独走のなかゴールテープを切り、幸せをかみしめた。
金メダルを手に満面の”みっちゃんスマイル”。忘れ物は無事に取り戻せた!photo by Jun Tsukida3位決定戦で勝利し、銅メダルを獲得したゴールボール女子の日本代表。「コートの中で私たちは見えないなかでプレーしますが、コートの外から見えるスタッフやコーチがフィードバックしてくれて、それをコートの中で実践して。見えている、見えていないが融合して1つの試合を作っている」と浦田。日本チームの活躍もあり、今大会で注目が集まったゴールボールは、まさに共生社会を体現しているといえるかもしれない。
目の見えない選手とそれを支えるスタッフたちの連携は、まさに小さな共生社会photo by Jun Tsukida(ゴールボール・市川喬一総監督)
準々決勝のトルコ戦に敗れ、涙にくれるゴールボール女子代表チームに対して、銅メダルをかけた3位決定戦に向けて市川監督がかけた言葉。5年間400日以上を合宿で一緒に過ごし、苦楽をともにしてきた監督の言葉だけに、この一言でチームの気持ちが切り替わったとのこと。その結果、翌日の3位決定戦では相手を圧倒するゲーム運びを見せた。
言葉で選手たちを鼓舞し、見事銅メダルに導いたphoto by Jun Tsukida今大会より正式競技となったテコンドー。男子75kg級に出場した工藤はこの日、日本選手として初めてパラリンピックで勝利を挙げた。惜しくも次の試合で敗れてしまうが、競い合っている時間が楽しくてこのように感じたそう。再びそんな時間を味わいたいとパリ大会を目指すことを誓った。
工藤は競い合うことができる喜びとともに、新たな目標を見出した photo by Kyodo新競技バドミントンは、車いすテニスのようにプロ化はしておらず、まだ競技人口も少ない。だからこそ、男子シングルス(WH1車いす)の初代王者に輝いた19歳の梶原は、「パラバドミントンの顔にならなければ」という。そのお手本ともいうべき存在が、車いすテニス男子シングルスで3度目の金メダルを獲得した国枝慎吾だ。「若い選手がいないと若い人も入りづらい。僕がずっと続けて結果を残し、普及活動を頑張ることが重要だと思う」と第一人者として競技を興隆させていくことを誓った。
初代王者に輝いた梶原。金メダリストとしての使命を語ったphoto by Jun Tsukida東京パラリンピックは幕を閉じたが、高みを目指す選手たちの戦いは続いていく。
text by TEAM A
key visual by Takashi Okui
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