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スキーから格闘技へ!冬季パラのメダリスト太田渉子が挑んだテコンドーへの道

パラサポWEB / 2021年9月8日 16時56分

冬季パラリンピックに3回出場。2006年トリノ大会のバイアスロンで銅メダル、2010年バンクーバー大会のクロスカントリースキーで銀メダル。2つのメダルを獲得し、2014年にスキー競技を引退した太田渉子は、9月4日、初めて夏季パラリンピックの舞台に立っていた。それも、雪の上とは全く異なるテコンドーの競技場。一度は競技の世界から身を引いた彼女は、どう挑んだのか。

昔よりも短距離走が速くなった

最初は趣味で始めたテコンドーを、競技者として本格的に始めたのは2018年。自分と闘うクロスカントリースキーから、相手と激しく蹴り合うテコンドーへの転向は簡単なことではなかった。ブランクもある。初めて取り組む格闘系競技の技術も身につけなければならないし、求められる体力も持久系と瞬発系で大きく異なる。これまでとはフィジカル面でのトレーニングも一変した。持久走が中心だった陸上トレーニングは、インターバル走が中心に。義手を用いたウエイトトレーニングにも積極的に取り組むようになった。

やるべきことが山積みの挑戦だが「スポーツはできないことができるようになる時期が一番楽しい。スキーを引退したときは体力の限界だと思っていたのが、短距離走は今のほうが速くなっている。年齢は関係ないのだなと思います」と、太田はこともなげに話す。

代表選手に内定した直後に東京2020パラリンピックが1年延期になったことも「準備する時間が増えた」と、あくまでも前向きに捉えていたが、それは言葉の上だけのものではなかった。以前から、豊富なスタミナを活かして尻上がりに運動量が増えていく試合運びには定評があったが、今大会では瞬発的な蹴りのキレも明らかに増していた。

長身の相手に最後まで攻め続ける
準々決勝で蹴りを繰り出す太田

女子K44(上肢障がい)58kg超級に出場した太田の初戦は準々決勝。ウズベキスタンのグリョノイ・ナイモワと向き合った。国内では対戦相手がいないこともあって、実際の試合は1年半ぶり。それもあってか前半は動きが固く、ポイントで先行を許す。後半は持ち味の粘りを発揮し、連続蹴りや相手の体を押してからの蹴りなど技術的な成長を見せたものの12-37で敗れ、敗者復活戦から銅メダルを目指すこととなった。

敗者復活戦の1回戦は不戦勝となり、迎えた敗者復活2回戦。準々決勝の試合に比べるとステップが軽い。ステップを踏みながら「カット」と呼ばれる前足の蹴りで相手を止める。後ろ足の回し蹴りにつなぐ動きもスムーズだ。対戦相手のジャニン・ワトソン選手(オーストラリア)は長身で、リーチの差も大きかったが、太田はステップで自分の得意な距離に入り込み、互角にわたり合った。特に相手の回し蹴りに対して、背中側にステップしてディフェンスする動きが光る。前の試合では「ポイントをずらすディフェンスができていなかった」が、そこをしっかり修正してきたのが分かる。

後半になっても動きの落ちないスタミナは健在で、最後まで攻める姿勢を見せるものの、相手のガードに阻まれてポイント差を詰めることができない。12-32で敗れ、メダルへの道をつなぐことはできなかった。

パリ大会は未定も、新しい目標をまた見つける
東京大会での挑戦を終え、また次の目標を見つけるべく太田は歩き出す

新たな競技に挑戦した日々を振り返り「本当にゼロからのスタートで、一歩を踏み出すことの大切さを感じてもらえたら」と語った太田。今後の予定については「今大会を目標としていたので、今のところパリは考えていない」。所属企業でスポーツを通しての社会貢献に関わっている太田は、いろんな経験を積みながら次の目標を探していくようだ。

「パラアスリートは日頃から環境による障がいがあって、いろいろな制限がある中で、できることを工夫して強い意志で取り組んでいる。そのパフォーマンスを見てもらえたことは意義があったと思う」

今大会をそう振り返った太田。58kg超級という重量級で、体格・リーチで勝る海外勢を相手に闘う姿は、多くの人に勇気を与えたはずだ。

edited by TEAM A

text by Shigeki Masutani

photo by Jun Tsukida

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