地元江東区で金メダルを目指したカヌー・瀬立モニカ。感謝と悔しさを胸にパリへ誓い
パラサポWEB / 2021年9月15日 17時41分
一生に一度の「地元開催」を終え、カヌー会場のある地元江東区で生まれ育った瀬立モニカは東京パラリンピックまでの道のりを振り返った。
「金メダルを目指して5年間進んできた。悔しい気持ちはすごくある。でも、今日はたくさんの人たちの愛を感じながら漕ぐことができた。7位という結果はリオ(8位)からちょっと上がっただけだけど、楽しいレースでした」
「泣かないと決めていた」。決勝を終え、笑顔を見せた photo by Kyodo 決勝レースで5年間の進化を証明!パラリンピック初出場だった5年前、決勝は1分9秒台でびりっけつだっだ。そこから奮起した瀬立は、一年のほとんどを水辺で過ごし、中盤以降のスピードや持久力を磨いた。2019年の世界選手権で5位に躍り出ると、現実的に見えてきたメダル獲得に照準を合わせた。そして、今大会の決勝で57秒台を記録。着順を競うカヌーにおいて単純にタイムで比較することはできないが、瀬立は200mスプリントをリオ大会の決勝より約11秒も早く漕ぎ、優勝タイム(58秒)を超えるタイムでフィニッシュし、成長を見せたのだ。
レースを終えた後、瀬立はしばらく艇に乗ったまま、水面からの景色を眺め、地元でのレースを終えた余韻に浸っていた。
高校1年生で車いす生活になってから、生きる希望が東京パラリンピックだった――。
「ここは自分が目指してきた夢の舞台。とにかく、海の森水上競技場に、そして江東区にありがとうという気持ちでした」
海の森水上競技場は瀬立の生まれ育った江東区に位置する photo by Takashi Okui前回のリオ大会。地鳴りのような歓声の中で、リオデジャネイロ出身のカイオ・リベイロ・デ・カルバリョ(ブラジル)がメダルを獲った。その熱狂に圧倒されながら、瀬立は「東京では私が主役」とイメージを膨らませたことだろう。しかし、新型コロナウイルス感染症流行の影響は大きく影を落とす。東京大会は1年延期を経て無事に開催されたものの、無観客で行われ、さらに区内の学校連携観戦も中止を余儀なくされた。地元の大声援のなかでフィニッシュする――そんな瀬立の夢はかなわなかった。
それでもライブ中継やメディアを通し、全力で世界と戦う自分の姿を多くの人に見てもらいたい。その一心でこの日まで突き進んできた。
地元に愛される選手だ。2015年に国際大会へ初出場し、2016年のリオ大会も地元の熱い応援で送り出された。江東区カヌー協会の選手として活動し、たびたび区報で紹介され、役所に写真が展示されるなど応援される存在になった。江東区の企業もスポンサーとして競技生活をバックアップした。
2019年8月、ハンガリーで行われた世界選⼿権で5位になり、東京パラリンピックの出場切符を手に帰国した際、江東区のカヌー関係者らは成田空港で瀬立を出迎えた。地元の愛を感じるとともに、瀬立はメダルへの思いを強めたことだろう。今大会に向けては「モニカ」の名前が入った応援団扇やタオルなどを後援会が販売。競技会場には、競技役員やメディアの中に瀬立の名前が入ったピンバッジやTシャツを身に着けている人もいた。
モットーは「笑顔は副作用のない薬」。その言葉を授けた母・キヌ子さん譲りの明るい笑顔で多くの人を惹きつけてやまない。そんな瀬立がぐんぐん強くなっていく姿を地元のカヌー関係者らは誇らしく見守った。
2年ぶりの世界大会に苦しんだそして迎えた地元のパラリンピックは苦しい始まりだった。競技初日の予選では、急な気温の低下で体が動かず、全体8番目のタイムに沈んだ。ショックを引きずり、眠れなかった。瀬立にとって約2年ぶりの国際大会であり、世界の強者たちと戦うことが怖かった。ようやく覚悟を決めたのは、準決勝の1時間前だった。「コーチたちが前向きな気持ちにしてくれました」。自身が「納得のレース」と振り返った準決勝を経て、前述のとおり決勝ではタイムを伸ばした。
「(東京大会開催に対して)いろんな意見がある中で、区民のみなさんが受け入れてくれてありがたかったです。ボランティアさんから『私も江東区民なんです、頑張ってください』と声をかけてもらって『これが地元で開催されるパラリンピックなんだ』と感じられることもできました」
試合後の報道エリアでは、地元の人たちへの感謝を口にした。
数日前までの30度を超える暑さとは打って変わって20度前後。今大会は苦しい滑り出しになった photo by Takashi Okuiまだ23歳。東京パラリンピックを集大成と位置づけて臨んだが、パラリンピックは、これが最後にはならないようだ。
「メダルを獲らないと終われない。(今年度)大学を卒業して(医者になるため)医学部の受験勉強と並行しながらパリを目指したい」
パラリンピックが閉幕した今も、練習拠点とする旧中川・川の駅には瀬立を応援するのぼりがはためいている。生まれ育った町は、これからも「江東区の星」瀬立モニカを応援し続ける。
「メダルを獲るまでは終われない」と前を向いた photo by Takashi Okuitext by TEAM A
photo by Getty Images Sport
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
妻はオリで金、夫はパラで金。LA28はアメリカ代表に注目!?
パラサポWEB / 2024年11月13日 6時32分
-
パリパラリンピックでメダル4個! 全日本視覚障害者柔道大会で見えた新階級の課題
パラサポWEB / 2024年11月7日 6時32分
-
当社従業員のパラスイマー鈴木孝幸が紫綬褒章を受章
PR TIMES / 2024年11月2日 15時15分
-
パリ後初の公式戦! フレッシュな選手が躍動した、日本開催のパラバドミントン国際大会
パラサポWEB / 2024年10月31日 6時32分
-
【PLAYBACK PARIS】パリで躍動した日本代表選手が語ったパラリンピックの可能性
パラサポWEB / 2024年10月25日 6時32分
ランキング
-
12連敗で崖っぷち…米国指揮官嘆き「非常に厳しい試合」 2戦17失点と投手陣が崩壊
Full-Count / 2024年11月22日 16時5分
-
2ベネズエラ国歌に「なぜか日本語の歌詞が浮かぶ」 侍J戦で“聞き馴染み”の日本人続出の理由とは
THE ANSWER / 2024年11月22日 19時52分
-
3【西武】GG賞二遊間コンビ解体へ…外崎修汰は三塁転向へ「レギュラー白紙は当たり前」
東スポWEB / 2024年11月22日 6時14分
-
4カットマン同士の“ひとほの”ペアがまたしても金星!中国勢に2連勝 決勝は日本勢対決
スポニチアネックス / 2024年11月22日 20時5分
-
5鷹・山川穂高が契約更改、年俸は「上がりました」 2冠で1.5億増…背番号は5に変更
Full-Count / 2024年11月22日 14時32分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください