トップアスリートが実践!目標達成メソッド「夢ノート」のやり方
パラサポWEB / 2021年11月22日 7時50分
今年私たちは、世界中のトップアスリートがメダル獲得に向けてしのぎを削るオリンピック・パラリンピックの興奮をより身近に感じることができた。そんなトップアスリートの類まれな活躍は、身体能力に恵まれているからだと考えがちだが、それだけでは夢を実現することはできない。キーワードは「こころの潜在能力=夢体力」。これが向上することによって心が強くなり、夢が実現する。そんなトップアスリートも実践する「夢体力」を身につけるメソッド「夢ノート」の使い方をご紹介しよう。
立ち止まって耐える時間が、人を強くする![](https://parasapo-wp-prd.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/wp/wp-content/uploads/2021/11/05150533/shutterstock_507031918.jpg)
夢を叶える、あるいは目標に到達するのは簡単ではない。多くの人がそう思っているのではないだろうか。自分が思うような成績を上げることができないと、「自分には才能がないから」と卑下したり、「叶わないのが夢だ」と開き直ったりしがちだ。もちろんトップアスリートにもスランプはある。しかし、そうなったときに簡単に諦めないのはもちろんだが、あえてすこし遠回りをしてみたり、一度立ち止まって我慢しながら耐える時間を持ったりすることで、夢を達成するケースがトップアスリートには多い。そう語るのが、夢を明確な目標に変えるメソッド「夢ノート」のノウハウを著書『こころを強くする「夢ノート」 トップアスリートが実践するルーティンワーク』(ブックマン社)で公開している早稲田大学スポーツ科学学術院教授・堀野博幸氏だ。
「私は日本サッカー協会(JFA)アカデミーで育成年代の選手の心理サポートなども行っているのですが、彼ら彼女らを見ていて感じるのは、順調に自分が成長していないと感じるときに、自分つまり内側に矢印を向けるか、それとも外側に矢印を向けてしまうかで、結果が変わってしまうということです。たとえば、自分が次の試合の出場選手に選ばれなかったとき、自分には何が足りなかったのか、どうすれば次には試合に出られるようになるのかを考えるのが内側への矢印。でも、自分以外のこと、例えば○○君はコーチに気に入られているから代表に選ばれたんだ、などと外に要因を求めてしまうのが外側への矢印です。自分の矢印がどっちに向いているかに気づくと気づかないとでは、その後の成長のスピードは大きく変わってくると思います」(堀野氏)
堀野氏自身、高校生の頃からサッカー選手として活躍していた。その後、大学でスポーツ心理学に出会い研究を行っていながら、「この理論は現場に近いな」とか「このケースはこの理論で説明できるな」などと研究と実際のスポーツの現場を行ったり来たりしているうちに、夢の実現には、粘り強く努力し続ける「こころの力」「夢体力」が必要になると感じたのだという。それらを身につけるのが「夢ノート」のメソッドなのだそうだ。
文字よりビジュアル化が夢達成のカギ![](https://parasapo-wp-prd.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/wp/wp-content/uploads/2021/11/05150541/a5e407aa0044d4609f6a5025a1fb65bb.jpg)
「夢ノート」とは、自分の夢を具体的にイメージすることを目的としている。「やってみたいこと」や「なりたい自分」、そして「将来の夢」と「夢に向かう方法」をイメージしながら、頭の中にあるものを次に紹介する3つのステップでそれぞれ1ヶ月かけてノートに書き出す。そうすることで頭の中を整理し、脳の働きを活性化することができるのだという。3つのステップは次の通り。
■第1ステージ 書き出すことで意識化・振り返ることで客観化する
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1週ごとに「その日あったうれしいこと」「その日あったポジティブなこと」などといった質問事項があり、それに3つの答えを書く形で進める。
頭の中にある事柄を書き出すことで、「消えゆく記憶を呼び覚まし、ポジティブな記憶の定着」を目指す。さらにそれを振り返ることで、自分を客観視できるようになる。
■第2ステージ イメージすることで具体化する
第1ステージでは言葉で表現した頭の中のことを、今度はイラストや漫画など「絵」で表現する。
これによって、いろいろな視点から考える習慣を身につけ、「ポジティブな思考変換」を目指す。論理的な思考だけでなく、イメージを膨らませることで右脳を刺激し、潜在能力を引き出す。
■第3ステージ ビジュアル化することで夢に近づく
![](https://parasapo-wp-prd.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/wp/wp-content/uploads/2021/11/05150530/006d3753f925666f26e1bef7fc76d1f6.jpg)
第2ステージからさらに一歩進んで、「夢マップ」を作る。ノートの中央の丸い円に自分の名前を書き、そこから線を延ばし、「自分ががんばったこと」「もっとがんばりたかったこと」などのほか、自分の気持ち、周囲の気持ちなど、頭の中に浮かんだことを自由に書いていく。
言葉だけでなく絵を使い始めると、左脳的な「論理」と右脳的な「創造」の思考変換がスムーズになる。それを定着させ「夢実現への具体的目標と行動の達成」を目指す。
詳細に興味を持った方は『こころを強くする「夢ノート」』」を参照していただきたいが、このメソッドのポイントは、第2、3ステージのイラスト化、ビジュアル化だろう。
「イラストなんか描けないとおっしゃる方もいますが、何も上手に描く必要はありません。簡単なニコちゃんマークでいいんです。文字に書くだけだと、どうしても思考がその中に狭まってしまいがち。それをイラストや漫画など絵にすることによって、発想が広がっていく効果があるので、是非自由に書いていただきたいと思います」(堀野氏)
「夢ノート」で周囲との関係性も変化する![](https://parasapo-wp-prd.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/wp/wp-content/uploads/2021/11/05150535/shutterstock_1343240522.jpg)
堀野氏によれば、この「夢ノート」のポイントは日々の生活をポジティブに振り返ることにあるのだという。
「私は心理学が専門なので、夢を叶えるにはまず具体的な目標を立て、そこから逆算しながら、細かい目標設定を行う…という方法は、理論的には正しいことはわかっています。でも、それだとなんだか窮屈だと思っていました。だから『夢ノート』では、もっと簡単に、今日あった楽しいこと、うれしいことなどを振り返ることに重点を置きました。それによって頭がリフレッシュされ、新しい気持ち、新しい考え方を取り入れやすくなるんです」
堀野氏は、周囲のアスリートたちにこの「夢ノート」を書いてもらうと、みなの表情が和らぎ、気分も大きく変わることに気づいたのだそうだ。
「自分のことをポジティブに振り返っていると、思わず笑ってしまったり、隣で書いている選手と会話が生まれたり、とても良い雰囲気になるんです。また、自分がうれしかったこと、楽しかったことには、周囲とのつながりも大きく関係します。自分がこうできたのは、誰かのおかげだとわかれば、感謝の気持ちが生まれますよね。最初は自分だけに向いていたエネルギーに、自分の大切な人との関わりの中から生まれたエネルギーが加わってくると、夢に向かうエネルギーもどんどん大きくなる。『夢ノート』によるポジティブな振り返りで、エネルギーが満ちあふれるということも、大きなメリットのひとつですね」
「夢ノート」は、まず3ヵ月で1つの区切りとなるが、それで終わりではない。堀野氏によれば、書く内容はとてもシンプルなので、1ヶ月分を1週間に縮めてやってもみても大丈夫なのだそう。時の流れとともに、目標はどんどん変わるし、自分を取り巻く環境もさまざまに変化する。さらに続けていくことによって書き込みはどんどん深くなり、「夢ノート」は自分の人生の縮図、財産となるのではないだろうか。堀野氏は「書くことより、むしろ書いて振り返る時間が一番大事だ」と語った。振り返ることによって、こころの体力が養われ、それがよりよい明日に繋がる。アスリートのみならずどんな人の日々も幸せにするメソッドと言えるだろう。
「今日うれしかったことは?」と聞かれて、即座に3つ答えるのは、最初は難しいかも知れない。コロナ禍で行動を制限されていれば、なおさらだろう。しかし、毎日毎日、振り返りを続けることによって視点が変わっていけば、うれしいと感じることは、意外に多いことに気づかされる。肩に力を入れず、よく眠れたとか、食事が美味しかったとか、なんでもない些細なことから始めてみると、3ヵ月後には大きな変化になるのではないだろうか。
<参考図書>『こころを強くする「夢ノート」 トップアスリートが実践するルーティンワーク』
(ブックマン社)
日々ノートにポジティブなことを文字や絵で書き(描き)続けることで、誰の心にも存在する大きな潜在能力を呼び起こす。気がつけば「夢体力」がぐんぐん高まり、あなたも「夢実現体質」へ! 漠然とした夢を明確な目標に変える「夢ノート」メソッドを詳細に紹介する1冊。
PROFILE 堀野博幸
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。人間科学博士。専門はスポーツ心理学・コーチング科学。1969年大阪生まれ。早稲田大学人間科学部卒、同人間科学研究科博士課程中退。2015年より現職。ユニバーシアード・サッカー日本女子代表監督、ロンドンオリンピック・なでしこジャパン・ゲーム分析スタッフを歴任。現在、日本サッカー協会(JFA)アカデミー・心理サポート(女子担当)、JFAインストラクター、アジアサッカー連盟テクニカルスタディボードメンバーとして活動中。著書に『トップ・パフォーマンスへの挑戦』『スポーツ精神生理学』『スポーツ心理学ハンドブック』(共著)などがある。
Text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
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