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メダリストが自分の専属コーチ?一流のノウハウを学べる画期的な仕組み作りとは

パラサポWEB / 2021年12月10日 8時0分

コロナ禍によって変化を余儀なくされたことは少なくない。自粛期間は、スポーツジムやフィットネスクラブなど体力・健康作りのための施設に通うことが難しくなった。そこで注目されたのが、オンラインによる指導。YouTubeやアプリ、Web会議システムなどを利用したさまざまなサービスが登場した。中でも今年6月にリリースされたトータルフィットネスアプリ「SPORY」は、日本を代表する多くの競技の一流アスリートから直接指導が受けられると話題に。一流のトレーニングノウハウを本人から学べるとは、一体どんな仕組みになっているのか、運営会社代表の丸山和也氏にお話をうかがった。

アスリートが、アスリートのままセカンドキャリアを歩むには?

このアプリの一番の柱は、2021年12月現在約100本もあるトレーニング動画だ(細分化されたチャプター数としては500本)。この動画に登場し、トレーニングを行っているのが日本のメダリストなどトップアスリートであることがポイント。錚々たるメンバーがトレーナーに名を連ねているのだ。

「トレーニングというと、みなさんトレーナーが教えるものだという固定観念があります。でも、アスリートこそ長い時間自分の心と体を鍛えてきた一番のプロフェッショナルです。彼らが実際に日々やってきたこと、積み上げてきたことを再定義して、それを誰でも取り組めるように整理してお伝えするのがこのサービスの柱と捉えています」(丸山和也氏。以下同)

SPORYの契約アスリートには、水泳の銅メダリスト立石諒氏、水球の代表選手保田賢也氏、総合格闘技のホープ三浦彩佳氏、そして先日の東京2020オリンピック柔道で金メダルを獲得した髙藤直寿氏など、豪華なメンバーが名を連ね、プロチームの参加も控えている。丸山氏がそんなアスリートとともにサービスを始めようとしたのにはある理由がある。

「僕自身ずっとスポーツをやってきて、高校では柔道で全国大会にも出たほど。実は髙藤くんとは高校大学が同じだったんです。自分自身スポーツに打ち込む中で考えたのは、アスリートがずっと競技を続けてきて、現役を引退するとき、アスリートのままセカンドキャリアを歩む方法がなかなかないということなんです。アスリートが社会に対して自分の価値を還元する仕組みをつくらないと、本質的な意味でのアスリートのセカンドキャリアの問題の解決につながらないんじゃないかと思っていました」

アスリートとして華々しい活躍をしてきた選手のその後について、確かに私たちは普段あまり意識をしていない。トップアスリートなら後進の指導などなんとなくイメージできるが、全ての人にそんな門戸が十分にあるとも思えない。そこで、彼らの身に着けたノウハウや技術が何にも活かせないまま終わるとしたら、大変もったいないことだ。

「僕は大学卒業後、アシスタントコーチやメーカー勤務を経て、独立して人材紹介業、アスリートのセカンドキャリア支援やスポンサー活動をしていました。そこでアスリートから相談を受けたり、問題意識を共有する中でこのサービスのアイデアが生まれたんです」

一流のノウハウをパーソナライズすることで、これまでにない高品質な自宅トレーニングに

 

「そんな一流選手が普段行っているトレーニングなんて、自分にはとても無理!」と怖れる必要はない。アプリ内で提示されている動画には、たとえば「二の腕のプルプルを撃退」「足の運動で腰痛予防」「大きい筋肉を使用してカロリー大量消費」など、短いもので3分、長くても8分程度と、じゃあちょっと挑戦してみようかと思わせる親しみやすさがある。

しかも、動画はチャプター機能で細分化され、ひとつひとつの動きに関して、心肺機能、肩、胸、腹筋など9つの項目に関してどのぐらいの効果があるのかを数値化して紹介されているのだ。だからユーザーは、自分が気になるところに、その動きがどれぐらいの効果を及ぼすのかが明確に分かるというしくみ。

「データ分析はかなり細かくやっているので、たとえば高齢の方にはこんなメニュー・組み合わせでとか、モデル体型になりたい方はこのようなトレーニングをなどと、動画が増えれば増えるほど、よりパーソナルなトレーニングの提案ができるのが強みだと思っています」

「SPORY」は現在は無料公開中だが、近々月額の利用料が課金される。一方でネットにはさまざまなトレーニング動画があり、無料で閲覧できるものも多い。こうした動画は、無料だから気軽に利用できる反面、目的の動画を探す手間や、同じものをやっていると飽きてしまうなどといったデメリットもある。

「公開するための動画を撮っていると、アスリートでも筋肉痛になるレベルのトレーニングもあるので、そういう意味ではより高品質なコンテンツと言えるでしょう。その中から、今後はひとりひとりの体力や生活に合わせてさまざまな組み合わせを自動的に提案したり、オプションで食事管理やリアルタイムでレッスンが受けられるLiveストリーミング機能もサービスに入れていく予定です。これを利用することで、自宅トレーニングのクオリティは確実に上げられるのではないでしょうか」

アスリートの価値の拡大がもたらす大きな効果

サービスのコンセプトには3つの柱がある。

アスリートと共に世界中の人々の心と体の健康寿命を延ばす

アスリートの競技ノウハウを世界中の人々が学べる仕組みを作る

アスリートインフルエンサーに寄与し価値を最大化する

1つめで、体だけではなく「心」の健康にも言及されているのは、コロナ禍を持ち出すまでもなく、閉塞的な社会状況で心の健康を崩す人が増えていることがある。心だけ、体だけではなく、両方が健康ではじめて人は幸せな日々を送れる。サービスを通して、ユーザーの幸せを求めていきたいという丸山氏の願いが反映されているのだそうだ。

また、現在は日本語でのサービスになっているが、海外からでも検索などで見つけて視聴することは可能だ。今後は字幕をつける予定もあるそうなので、海外のアスリートのファンがサービスを利用することもできるようになるだろう。

「このサービスを通して、アスリートのファンコミュニティも盛り上がっていくといいなと思っています。アスリートのYouTuberなども話題になってはいますが、継続的にファンを惹きつけるというのはなかなか難しい。企画力がものを言う世界ですし、だからと言ってアスリートのイメージを振り切るような企画をする必要があるのかという疑問もあります。なので僕たちは、アスリートとファンとのつながりを、スポーツという1点だけではなく、フィットネスというもう1点の接着面をふやすことによってフォロワー数を増やすことにつなげていきたいと思っています。それが“アスリートインフルエンサーに寄与し価値を最大化”し、アスリートのやりがいに繋がればみんなが幸せになれますからね」

先にも述べたが、今後は食事管理やLiveストリーミング機能などのサービスの拡充に加えて、アスリート社員を擁する実業団や運営会社の従業員の健康支援に、このサービスが利用されることも丸山氏は視野に入れている。

「アスリートのスポンサーとなっている企業で働く人の中には、必ずしも彼らを心から応援したいと思っている人ばかりじゃないのは事実です。でも、身近なアスリートの動画を見て健康が確保できれば、アスリートの価値はあがるし、従業員が彼らを応援しようというモチベーションのアップにもつながると思います」

まさに丸山氏が元アスリートだからこそ目指すアスリートの価値の拡大が、世界中の人の心身の健康につながっていく。それは決して遠い夢ではないように思える、力強い言葉だった。

筆者が子どもの頃、野球選手になりたいとか、サッカー選手になりたいと夢を語る子どもたちは多かったように思う。しかし、現在、夢にスポーツ選手になることを挙げる子どもは明らかに減っているのだという。それはひょっとすると、丸山氏の言うとおり、アスリートのセカンドキャリアが夢と希望に満ちたものに見えないことも理由のひとつかもしれない。だからこそこう入ったサービスや仕組みによってアスリートもユーザーも健康で幸せな日々を送れるようになれば、以前のようにスポーツ選手になる夢を追い掛ける子どもたちも増えていくのかもしれない。

PROFILE 丸山和也

株式会社スポリー 代表取締役

栃木県栃木市で生まれ育ち、柔道の強豪校である東海大相模高校、東海大学柔道部で活躍。卒業後は、オーストラリアに渡り、ナショナルチームアシスタントコーチとして、現地の代表選手を指導。帰国後、スポリーを創業し、プロフェッショナル人材、アスリート、体育会系学生のキャリア支援を一貫して行うと同時に、スポンサー活動や東京都レスリング協会理事等を兼務。現在は、アスリートと共に世界中の人々の健康と自己実現をサポートする為に、トータルフィットネスアプリ『SPORY』に注力している。

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)

photo by Kazuhisa Yoshinaga

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