1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

【7〜10歳】子供を最大限に輝かせるために。親ができるサポートの秘訣

パラサポWEB / 2022年2月14日 7時30分

語学力の発達がピークを迎え、自己肯定感が高まり、自立と自律が進む時期と言われている7歳から10歳。親は「子どもの才能を活かしてあげたい」「チャレンジする強い心を持ってほしい」「思いやりのある優しい子に育ってほしい」など、子どもの成長や育て方に関してさまざまな思いがあるはずだ。だが、日々の生活の中で親として実際に子どもとどんなコミュニケーションをとったらいいのか、どうサポートしていいのか、迷うことも多いだろう。

そこで今回は、パラリンピックに夏冬計5回出場した経歴を持ち、「あすチャレ!School(協賛:株式会社ブリヂストン、日本航空株式会社)」の講師として多くの子どもたちに講演やパラスポーツの体験授業を行っている加藤正講師に、親が子どもにできる【その子らしさを引き出すサポート】【諦めない心を育てるサポート】【思いやりを育てるサポート】についてお話を伺った。

【その子らしさを引き出すサポート】

夢を持つことの大切さと、親が道しるべになることの重要性

長野県伊那市出身。小学2年生の時「骨肉腫」により左脚大腿部から切断。長野1998冬季パラリンピックでは、アイススレッジスピードレース500mと1500mで銀メダル、1000mで銅メダルを獲得した加藤氏。現在は、パラサポが運営するパラスポーツ体験型出前授業「あすチャレ!School」で講師を務めている。

――小学校に入学してからの7~10歳は、語学力が総合的に伸びる時期と言われています。コミュニケーション能力が高まることから親子の会話もより重要になってくると思いますが、その時期の子どもに対して、本来の力を引き出したり、伸ばしてあげるために親としてどんなサポートができるでしょうか?

まず私自身の子どものころの話をすると、小学校2年生のときに骨肉腫で左脚大腿部から脚を切断するという大きな出来事がありまして。1年間入院生活をしていたのですが、自宅に戻ってから親が私にどういうことをしてくれたかというと、「これをやっちゃダメ」と縛りつけることが全くなかったんですね。自分がやってみたいなと思ったことは、なんでもやらせてくれました。本人がやりたいと思うことをやらせてあげるのが一番、というのが大切だと考えています。

――自由にさせてあげるのは良い反面、親としては、子どもが楽な方向を選んでしまうのではないか、という不安もあります。親として指導しなくてはいけない場面もやはりあると思いますが、子供たちへの言い方、伝え方をどのように工夫したら良いでしょうか?

勉強しなさいと言えば子どもは反発しますからね。かといって勉強しなくていいよと言えばしないですから。私もそうでした(笑)。当時を振り返ると、私自身、もう少し親として指導してもらってもよかったんじゃないか、と思うこともあります。今だと情報も多いですし、色々なツールもたくさんありますから、こういったものを与えたら将来いいだろうな、と親の立場で思うものは、どんどん伝えてあげたらいいと思います。

それに加えて、私は授業で子どもたちによく「夢を持とう」と言っています。ただ、夢というのは夢のままで終わってしまうことも多いですよね。なぜ夢が夢で終わってしまうかというと、夢を「目標」に変えていないからだと思うんです。

まずは子どもとちゃんとコミュニケーションをとって、将来どういった方向性に行きたいのかを話す。そのときに、夢に向けて段階的に、目の前にあることを一つずつクリアしていけるように親が目標設定してあげる、ということがとても大切だと思います。一つクリアできたら次の目標設定をする、ということをやっていくと、将来なりたい自分の像に近づいていくのではないでしょうか。

――漠然とした夢だと遠い存在になってしまいますが、一歩ずつ具体的な道筋を作ってあげると、実現可能な目標になってきますね。

夢を叶えるためには小さい目標が無数にあって、毎日やらなければいけないことも出てくる。といっても無理をする必要はなくて、できることからやっていくようにしてあげるのが重要かなと。でも7歳くらいだと絶対にこれになりたい!というのはまだ決まっていないことがほとんどですよね。僕の娘も小さい頃は、「キリンになりたい」とかそんな感じでしたから(笑)。

なので、このぐらいの年齢の時は、親として、この子はなんとなくこれに向いているんじゃないかな、と気付いてあげるのが重要なのではないでしょうか。僕の娘は身長は高かったけれど走ることが苦手だったので、スポーツではなく音楽を薦めたんです。それでブラスバンドを始めると、一生懸命やっていましたね。息子は走るのが早かったのでスポーツを薦めました。

何がこの子に向いているのか、いろいろチャレンジさせてみるのはすごくいい経験になります。ただ親自身が子どもとしっかり向き合い、協力しないと子どもが何が好きなのかが見えてこないですから、それをやるには親もエネルギーがすごく必要になってくる。

――たしかに、親としての気持ちはあっても体力がついていかないこともあります。無理なく行うにはどうしたらいいでしょうか?

おすすめは、親も一緒に楽しむ、というスタンスで取り組むこと。まずは自分が楽しめることを一緒に体験させてあげることからスタートしてみるといいと思います。親がスポーツ好きだったら、きっと子どもも好きになるだろうし。キャンプでも読書でもなんでもそうだと思います。親も一緒に楽しんで体験すれば会話も自然と増えますし、何が向いているのかも見つけやすくなると思います。

【諦めない心を育てるサポート】

ゴールへの道は一つではない

「あすチャレ!School」では、車いすバスケットボールの実演のほか、子どもたちへチャレンジする楽しさ、素晴らしさ、目標を持つ事の大切さなどを伝えている。(写真:2019年撮影写真)

――何かに挑戦していくと、思うようにならないことも出てきますよね。子どもが失敗したときやつまづいたときは、どんな風にサポートしてあげたらいいのでしょうか?

僕は、失敗したことは忘れればいいと思うんです。人生諦めが肝心と思っているので(笑)。ただ、子どもの場合は本人も親としてもそう簡単に割り切れるものじゃないですよね。なので諦めるタイミングは本人が決めればいいけれど、親のサポートとしては「方向性を変えてあげる」のがいいと思います。僕は若いころ登山をしていました。登山は登る前のルートを決める事が一番重要です。目標はその頂に立つ事。この目標に対して、厳しく険しいルートで時短を狙うのか、時間はかかるが緩やかで楽なルートを選択するのか。夢・目標に向かう時も同じだと思います。子どもの適性に合わせて選んであげるのが必要で、根性がある子なら厳しいルートを行かせてみるとか、この子は褒めたほうが伸びると思えばそちらのルートを薦める。つまづいても、違うルートもあるよ、と教えてあげるのも一つの手です。

――ご自身は競技をやる中でモチベーションをどのように保っていたのですか?

僕が現役で車いすバスケをやっていたときは、いかにカッコよく見せるか、モテるかを考えていましたね(笑)。それがモチベーションになっていた。あと先輩に新谷さんというすごいプレイヤーがいて、僕の憧れだったんです。彼みたいなプレーをしたくてやっていました。目標とする人物がいるとプレーを真似したくなりますよね。

――野球やバスケなど競技人口が多いスポーツだと憧れの選手を見つけやすいですし、スポーツ以外でも憧れの存在がいると、たしかにモチベーションを保ちながら「目標」を目指しやすいですね。

人の真似をするのが上達の一番の近道だと思うんです。プレーを頭の中でイメージすればできるんですよ。だから目標とする選手のプレーを見て、チャレンジすればいい。きっとできるはずです。子どもの憧れの選手がどういう練習をしているのか、一緒に調べて話したりするのもいいと思いますよ。

【思いやりを育てるサポート】

「相手の立場に立つこと」を親がどう伝えるか?

――子どもには相手のことを思いやれる人間になってほしいと思いますが、たとえば子どもと一緒に外出先で障がいのある方と出会ったときに、どのように接すればいいのでしょうか? 加藤さんのご経験はいかがですか?

みなさん車いすは病院などでも見かけたことがあると思いますが、僕の場合、義足を履かないですし、車いすも基本的には使わないんですね。片足ですし、身長も高くてスキンヘッドだからどうしても街中で目立つんですよ。すると子どもたちは素直だから、僕を見つけると「脚がない人がいた!」と親に教えたくなるんです。そのとき親は「見ちゃダメよ!静かに!」といったような、子どもを叱るパターンが多いのですが、それは絶対避けてほしいこと。せっかく子どもが興味を持ってくれたのに、親がダメだと言うと、子どもは僕のことを「関わってはいけない人」なんだと思い込んでしまう。そういう教育を無意識に行ってしまっているんです。

障がいのある人に出会った後に、ぜひ親御さんが子どもに伝えてほしいことが、その人のことを【想像する】こと。子どもと一緒に夕食をとるときやお風呂に入ったときに、「今日、脚がない人がいたよね。どう思った?」と、いろいろ問いかけてほしいんです。それによって、もし自分の脚がなくなったらどうしようとか、その子なりにいろいろと想像して考えると思うんです。そうすれば次に障がいのある人と会ったときに、率先して話しかけたり、何か手助けをしたいと思ってくれるかもしれない。アメリカに行くと、子どもたちが「なんで脚がないの?」と普通に聞いてくるんですよ。そうやってお互いにコミュニケーションが取れれば友達にもなれますよね。日本もそうなってほしいなと思います。

――お子さんは、加藤さんの障がいをどのように捉えていましたか?

うちの子は逆に自慢していました。子どもが小さい頃から僕はパラリンピックに出場していたし、うちの子からしたら自慢できるお父ちゃんでいることができたので。息子は「うちのお父さんは脚がないんだよ。だから見に来いよ!」と、家に友達を連れてきていましたから(笑)。それで息子の友達とも仲良くなったりして。そうすると行事で学校に行ったときも息子の友達がバーッと集まってきてくれたりして、僕のことを守ってくれたりしましたね。

――障がいのある方とコミュニケーションを取る機会があれば、相手のことも想像できるし、思いやることもできる。身近な存在になりますよね。

【その人の身になってみる】というのがすごく大事なことですね。それがうまく伝えられれば、子どもが思いやりのある人に近づくのはもちろん、私たちが目指している共生社会にも近づいていくと思います。僕は長野パラリンピックに選手として出場したときに目立った存在だったので、当時は色々と発信できている気でいたんですが、実際には障がいに対する世の中の視線はなかなか変わらなかった。それがとても悔しくて。「あすチャレ!School」で講師をはじめたのも、もっと子どもたちにこのことを伝えたい!と思ったからなんです。

東京2020パラリンピックはすごくいいチャンスでした。例えば開催前はCMに障がい者が出演していたりして見かける機会が増えましたよね。ただ、障がいのある人はパラリンピックが開催されている期間だけ注目される存在なのではなく、日常の中でみなさんと同じように生活しています。だからこそ、東京2020パラリンピックの後も引き続き、街中で障がいのある人に出会ったときは、ぜひお子さんと一緒に、その人の身になってみる、障がいについて話すきっかけにして欲しいと思います。

大人になってから意識を変えようとすると相当難しいけれど、子どもの頃から障がいのある人についての話をしていれば、成長したときに共生社会への意識が自然とある子になる。そういう子どもが増えていけば、きっと未来はもっと変わっていくのではないでしょうか。


身長も高く迫力のある見た目とは反対に柔和なキャラクターで、そのギャップが魅力的だった加藤講師。自身も2人の子どもを育てた経験を交え、夢を持つことの大切さや、親のサポートの取り組み方などを語ってくれた。決して一方的ではなく、親も子どもと一緒に物事を真剣に考え、共に向き合うことの大切さを教えてもらった。

PROFILE 加藤 正(かとう・ただし)

長野県伊那市出身。小学2年生の時に骨肉腫により左脚大腿部から切断する。1988年ソウルパラリンピックに競泳で出場したのを始め、1994年リレハンメル冬季パラリンピックで「アイススレッジスピードレース」に日本人初の選手として出場。1998年長野冬季パラリンピックでは500mと1500mで銀メダル、1000mで銅メダルを獲得。アイススレッジホッケー(現パラアイスホッケー)にも出場し、以後2大会連続出場。現在は「あすチャレ!School」講師として全国の学校へと赴き、授業を行っている。

text by Jun Nakazawa (Parasapo Lab)

photo by Takeshi Sasaki

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください