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北京冬季パラリンピック開幕! スポーツの力を信じ、平和を願うアスリートたち

パラサポWEB / 2022年3月5日 11時42分

平和への祈りが込められたような深い青――。2022年3月4日20時(日本時間21時)、幻想的な雰囲気に包まれた北京の国家体育場(愛称「鳥の巣」)では、やがて氷の結晶が海になり、フィールドに地球が浮かび上がった。

すると、1976年から始まった冬季パラリンピックの歴史がつづられ、中央に「BEJING2022」という文字が現れる。13回目となる冬季パラリンピック、北京大会がついに幕を開けた。

開会式のスローガンは、「前向きに、共に乗り越えよう」。習近平国家主席による開会宣言のあと、披露されたパフォーマンスでは、目の見えない少年が「空を飛びたい」と願い、その思いに気づいた人々がやがて少年の翼になっていく様子が描かれた。一人では難しいことも、多くの人の力を合わせれば実現できるという「共生社会」への願いだ。

開会式のステージに聴覚障がい者も参加。手話を交えながら中国国歌を歌った

パフォーマンスの冒頭では、一組の家族の何気ない日常も映し出された。とりわけこの一幕が心に響くのは、世界の平和が脅かされている中でのパラリンピック開催となったからだろう。

パーソンズ会長が叫んだ「Peace!!」

北京冬季パラリンピックは、3月13日までの10日間で6競技78種目が行われ、46ヵ国・地域の564選手が熱戦を繰り広げるが、この参加予定国数は前日よりも減っていた。国際パラリンピック委員会(IPC)は、3月3日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、RPC(ロシアパラリンピック委員会)とロシア同盟国・ベラルーシの選手の大会参加を認めないことを決定していたのだ。

「戦争や憎しみの時代ではない」。力強い言葉で平和を訴えたアンドリュー・パーソンズ

IPCアンドリュー・パーソンズ会長はスピーチ冒頭で、「平和のメッセージから始めなければならない」と語り、「今は戦争や憎悪の時代ではない。世界は共生の場であって分断すべきではない」と訴えた。そして最後に「Peace!!(平和)」と叫び、両こぶしを力強く握った。

クロスカントリースキーとバイアスロンの2競技に出場するウクライナ代表選手団は、陸路で中国入りしていた。入場行進では硬い表情を崩さず、拳を天に突き上げる姿を見せる選手もいた。

4番目に入場したウクライナ選手団。拳を突き上げて入場する選手もいた 日本代表選手団は東京大会よりも「堂々としていた」

アイスホッケーと車いすカーリングを除く4競技に29選手が出場する日本代表選手団は、ベルギーに続く2番目に行進。旗手を務めたのは、クロスカントリースキーに出場する川除大輝。いつものように柔らかい笑顔を浮かべて国旗を振った21歳は「前回大会の結果を越えられるように楽しく全力で頑張ります」と決意を口にした。

国旗を大きく振って先導した川除大輝

この川除の姿に「堂々としていた」と感心していたのは、東京2020パラリンピックで日本代表選手団の旗手を務めた卓球の岩渕幸洋だ。

「すごく落ち着いて大役を全うし、すごいなと思いました。僕は舞い上がりすぎて、プラカードを持つ人より早く歩いてしまい、後ろの選手団を置き去りにしてしまったので」

苦笑しながらそう話す岩渕は、東京パラリンピック開催によってパラスポーツの認知度が飛躍的に上がったことを肌で感じているという。小学校を訪問した際に、子どもたちの反応や表情が大会前と全然違っていたのだとか。「日本代表選手団が素晴らしいパフォーマンスをすると思うので、多くの人にパラリンピックのよさを伝えられる大会になってくれたらいいですね」と北京大会の成功を願った。

聖火の炎を希望の光に

日本代表選手団の主将を務めるアルペンスキーの村岡桃佳は開会式に出席しなかったが、スノーボードは日本代表6人全員が参加。選手たちは、コメントに平和への願いを込めた。

視覚障がいの李端が雪の結晶を模したモニュメントにトーチを設置し聖火を灯した

初出場の大岩根正隆は、「いろいろな出来事が起きていますが、スポーツの力を持って、日本や世界にとって明るい話題になってくれれば」と語り、同じく初出場の田渕伸司も「僕たちの滑りで皆の心が少しでも平和になりますように」と、パラアスリートのパフォーマンスが世界の平穏につながることを願った。

東京パラリンピック陸上競技の金メダリスト、佐藤友祈も平和を願う気持ちで開会式を見守った。「東京大会もコロナがあり、選手はいろいろ思うところがあったが、今回は人間の可能性を広めていく平和の祭典で、戦争の問題が加わっている。選手たちはいろんな思いを背負っているはず」と慮り、「聖火の炎が希望の光になったら」と述べた。

今回の目標メダル数は?

今年2月に行われた北京冬季オリンピックで日本は、過去最多の18個のメダルを手にした。パラアスリートたちもこの勢いに続いて、2018年の平昌大会(金メダル3つを含む10個のメダルを獲得)を越えたいところだが、河合純一団長は、今回、日本の目標メダル数を掲げていない。コロナ禍で鍛錬してきた選手たちへの配慮からだ。

日本代表選手団の桜間裕子副団長と河合純一団長

「選手たちの可能性を信じ、チーム力と対応力で最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えていきます」

選手個々が自分の全力を出し切ること。それが日本代表選手団の最大のテーマだ。

text by TEAM A

photo by Getty Images Sport

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