障がいの有無や違いを越えて競い合う「オール陸上競技」初開催
パラサポWEB / 2022年3月29日 11時44分
障がいのある人もない人も同じ舞台で競い合う「オール陸上競技フレンドリー&チャレンジ記録会」が21日、26日、27日の3日間に渡って開催された。
27日に駒沢陸上競技場で開かれたチャレンジ記録会には、東京2020パラリンピックの視覚障がいや身体障がいのあるメダリストから、5月にブラジルで開催される夏季デフリンピックに出場予定のメダル候補のほか、学生をはじめとする一般ランナーも出場した。
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今大会は、東京大会を終え、共生社会の認知も広がりを見せている中、障がいの有無に関わらず一緒に競技場に集い、陸上競技に親しみ、競技することでお互いを理解し認め合うことなどを目的としている。パラスポーツの認知度を上げる狙いもある、この大会が残したものは何か。選手たちのさまざまな声を紹介したい。
東京大会ではユニバーサルリレーで銅メダルを獲得した澤田優蘭は、パリに向けて再始動。走り幅跳びに出場し現在、取り組んでいる踏み切り動作などを確認した。
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「(参加者にとって)パラスポーツが身近に感じられる大会なのかなと思う。この先も続いてほしい」と話したのは、ガイドを務める塩川竜平だ。この2月に澤田の新しい所属先である、人材総合サービスのエントリーと契約。ガイドランナーはこれまでボランティアが多かったが、視覚障がいの選手の競技力が上がれば当然、ガイドランナーも高い能力を求められるようになる。ガイドランナーを仕事にしたことで、澤田のトレーニングはもちろんのこと、塩川自身の練習量も増えて「ふたりとも足が速くなるための時間ができた」(澤田)。
新たな大会の実施は、これまでルールが異なることで出場できる大会が限られていた視覚障がいのある選手たちにも朗報だが、ガイドランナーが個人種目にエントリーすることも可能だ。今後は同一大会でガイドが一人で走る姿と二人で走る姿の両方が見られるかもしれない。
リオパラリンピックの男子走り幅跳び銀メダリストで片大腿義足の山本篤は、21日の走り幅跳びに加えて27日に中長距離にも出場し、これまで設定のなかった800m(T63)で2分52秒06の世界新記録を樹立。数時間後に行われた5000mも完走した。
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このチャレンジには、一緒に走った中高生らへのメッセージも込めたという。
「公認大会でありながらも(障がいのある人や)中高生やいろんな選手が参加する大会はなかなかない。僕自身、他競技に取り組むなど、いろんなチャレンジをして成長してきた。みんなに見てもらうことで、チャレンジするきっかけになるといいなと思うし、一緒に走った人たちも刺激になったのではないか」と手ごたえを口にした。
昨年のアジアユースパラ競技大会で100mと200m(いずれもT47)で2冠を達成した18歳の中川もえも、今大会で収穫を得たひとりだ。普段は、地元宮崎で中高生や社会人が所属する陸上クラブでトレーニングに励んでいる。4月から地元の大学の看護科に進学することが決まっており、受験勉強期間が明けて久しぶりの試合だった。
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「普段の大会では同じくらいの速さの人と走ることが多かったが、今回はすごく速い選手と一緒に走ることができ、もっと自分もがんばらなきゃと思わされる大会になった」
シーズン初戦の経験を糧に、10月のアジアパラ競技大会では日本代表を目指す。
大会のフィナーレを飾った男子4×100mリレーには、デフリンピックブラジル大会の日本代表で構成された日本デフ陸上チームが登場。バトンパスが詰まる場面もあったものの43秒27で一着になった。
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リレーでアンカーを務めた100mの日本記録保持者(聴覚障がい)佐々木琢磨は、「皆さんにスタートランプというものを見ていただき、デフ陸上に興味を持ってもらえるいい機会になった。今回の企画は本当にありがたい」と話し、「今大会では200mでベストを出すことができた。5月のデフリンピックでは、100m、200m、4×100mリレーで3冠を獲れるように精いっぱい頑張っていきたい」と意気込んだ。
2017年のデフリンピックで200m金メダルを獲得した山田真樹は、上肢障がいのパラリンピックメダリストや知的障がいのアジアパラ日本代表と同じ組で走り、競い合った。
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「今回の大会でパラリンピックの選手たちと会うことができ、嬉しかったし、刺激をもらった。昨年夏にメダルをたくさん獲得した東京オリンピック・パラリンピックの熱を5月のデフリンピックにつなげていきたい」
ブラジル大会で活躍が期待される選手たちは「デフリンピック」という意味のサインでポーズをつくり、フォトセッションに応えてくれた。
大会実行委員長で日本知的障がい者陸上競技連盟の奥松美恵子理事長は、運営の苦労もにじませつつ「誰かがスターではなく、一人ひとりが役割を果たし、人が支えあって大会の成功につながった」と感慨深そうに総括した。
text&photo by Asuka Senaga
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