アイディアが浮かばないのは何故? 「柔軟に脳が働く」習慣
PHPオンライン衆知 / 2024年12月20日 12時0分
斬新なアイディアを生み出そうと、机に向かって頭を働かせるほど、考えは凝り固まってしまうものです。常識を取り払い、柔軟に思考する方法とは? お茶の水女子大学名誉教授の外山滋比古さんが紹介します。
※本稿は、外山滋比古著「やわらかく、考える。」(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
不幸なときは読書のチャンス
本とのつきあいがうまく行くには、読者はいくらか寂しいのがよいようだ。どこか心に満ち足りないものを感じているときにしみじみとした本との交流が起こる。病床がしばしば実り多き読書の場になるのは偶然ではあるまい。相当に頑固な人もかすかに不幸なときは心が柔らかくなって他を受け入れやすい。
『ことばの教養』
点をつなげて、線で見る
人間には、点をつなげて線として感じとる能力がだれにもそなわっているのである。したがって、点的論理が了解されるところでは線的論理の窮屈さは野暮なものとして嫌われるようになる。
なるべく省略の多い、言いかえると、解釈の余地の大きい表現が含蓄のあるおもしろい言葉として喜ばれる。点を線にするのは一種の言語的創造をともなうからであろう。
『日本語の論理』
木を見て森も見る
文学研究においても、細部の考証、吟味ははなはだ精緻であるけれども、どういう方向から見ているのか、というパースペクティヴはかなりあいまいなままにされている。一字一句の正確な理解がすべての基礎であるのはだれも否定しない。
ただ、細部をしっかりとらえるには、全体をどのように見ているかの方法論が、たとえ、表面には出ていなくても、無意識のうちには存在しなくてはならないだろう。
『俳句的』
退いて眺める
無季の句は現在時制である。それで切羽つまった感情をぶっつけるように投げ出すことはできても、より深い感動を表出することは難しい。
真のかなしみは、やはり"退いて眺め"たときの情緒となってはじめて普遍の相に達しうる。"退いて眺める"距離はとりもなおさず"静けさの中で回想される"時間の経過に通じる。
『俳句的』
あてもない旅をする
いつも同じところに住んで、他国を知らないと、見聞がせまくなるのはもちろん、心もかたくなりやすい。あてもないのに旅をするのは、不自然なことであるが、その非実用性が人間の精神形成に役立つものであることを見のがしてはならない。
『日本語の論理』
比べてみると見えてくる
旅行者が未知の土地について、すぐれた観察や発見をすることがすくなくない。旅行者の目が曇っていないからであるが、さらに、旅行者は土地の人とちがって、ほかとの比較ができるからである。
『日本語の論理』
おもしろいことは忘れられない
おもしろいことは、正しいことより、生命力がつよい。正しいことは、やがて忘れられる。しかも、急速に忘れられる。
対して、おもしろいことは忘れられにくい。忘れられるにしても、ゆっくり忘れられるから、こちらのほうが歴史の中核になりやすい。
『「マコトよりウソ」の法則』
ムダを目の敵にしない
芸術はムダの中から生れるぜいたくな花である。ムダはいけないものという考えがあるから、とかく道徳とか政治とかが干渉して問題を混乱させる。ムダが文化であることを、もう一度見なおすべきであろう。
『日本語の個性』
「ウソはいけない」と早まらない
ことばはウソが言えないといけない。ウソなど言えない方がいいにきまっている、と道徳家はいきまくかもしれないが、早まってはいけない。
他人に迷惑を及ぼすようなウソが反社会的でよろしくないのはもちろんである。ただ、ときとして、そういうよくないウソがあるからといって、言語の虚構性そのものまで否定するようなことがあっては大変である。
『読書の方法』
文学作品はウソの結晶
広く人間の文化は、いわば美しいウソである。もうすこし限定して言うならば、文学的フィクションとはまさに、美しいウソそのものである。
文芸が古来、くりかえし、社会から反道徳的、反良俗的という非難を受けてきたという歴史は、言語芸術がいわゆる困ったウソと同じ根をもっていることを暗示するように思われる。
『読書の方法』
雑談は発見のタネ
親しいもの同士が集まってお茶一杯飲むときの雑談でも本当に頭を働かせた話をすれば、思いがけない着想を得ることができる。科学史や思想史はそういう例をいくつも記録している。
発見、発明などは、きっかけを話し言葉にもっていることがすくなくない。雑談が学問思想のために案外、大きな役割を果すのである。
『日本語の感覚』
逆もまた真なり
"渡る世間に鬼はなし"も真なら、"人を見たら泥棒と思え"というのも、残念ながらやはり真である。
一見いかにも矛盾であるが、一方を立てて他を棄てるようなことがあれば、残った方の正当性も怪しくなってしまう。両方そろってはじめてそれぞれが生きる。
『俳句的』
あえて対象からはなれてみる
夜目、遠目、笠の内というのも不分明な、はなれたものが美、おもしろさを創り出すことをあらわしている。対象に密着していては、美は生まれない。興味の座標は、対象から隔絶したところにあるということである。認識の皮肉である。
『第四人称』
読むことの真の効用
わかることはわかる。わからないことはわからない。これでは読むことはまことにあわれな作業になる。読書が人間形成に不可欠であるのは、知らないことを自分のものにすることができるからではないか。
『読書の方法』
予期せぬ発見
探し求めているものは見つけられないのに、予期していなかった、思いがけないものを見つける。だれしも、そういう経験はときどきある。
ものではなく、頭で考えることでも似たことがおこる。目指していることはなかなか解決しないで苦労しているのに、まったく予想外のことを発見するのである。
『ちょっとした勉強のコツ』
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