「運がよくない人」に多い、他責思考のクセ
PHPオンライン衆知 / 2024年6月18日 11時50分
望んだような結果が出なかったり、何かよくないことが起きた時に、「自分は運が悪い」「ついていない」と運のせいにしてしまったことがある方は多いと思います。そもそも世の中には、結果を出し続けるスーパーマンのような人と全く結果が出せずに嘆いてばかりの人がいますが、その違いはどこにあるのでしょうか?
株式会社新規開拓の代表で、人材教育のエキスパートである朝倉千恵子氏に話を聞きました。
※本稿は、朝倉千恵子著『運を整える。』(内外出版社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
状況が良くならないのは「行動していないから」
私は30代のころからこれまで、自己啓発セミナーをはじめ、多くの学びに自己投資をしてきました。セミナーに行くと、いろいろなタイプの人と出会うことができます。当時の私のような若い女性もいれば、経営者の方や個人事業主、これから起業を目指そうとする人もいました。
同じセミナーを受講しても、全員が同じような望む結果を手に入れられるわけではありません。受講してから何年経っても同じような状況で、いつもセミナーを受けてばかりの人もたくさんいました。
これは女性だから男性だから、サラリーマンだから経営者だから、といった属性で分かれているわけではありません。なぜ結果に違いが生まれるのか。
その理由はシンプルです。学んだことをちゃんと実行している人と、そうでない人がいるからです。どれだけ有益なことを学んでも、実行しなければ何も変わりません。「こうやったらいいよ」と言われたことを素直に受け止めて、実践行動に移すかどうか。それがすべてです。
「そんなの当たり前のことだろう」と思うかもしれません。しかし、驚くほど多くの人が、学ぶことに満足し、その後の行動を起こさないのです。あるいは行動を起こすつもりはあっても、日々の仕事に忙殺されて後回しになっていたり、「講師の言っていることはわかるけど、私には私の事情があって...」とやらない言い訳を探していたりすることもあるでしょう。
私が主宰する女性限定の営業塾「トップセールスレディ育成塾(TSL)」の受講生も同じです。私は彼女たちにやり方やあり方を教えることと、行動の大切さを伝えることはできますが、代わりにやってあげることはできません。私がどれだけ熱心に伝えても、その言葉に感銘をうけたとしても、やはり行動しなければ何も変わりません。最後の一歩は自分で踏み出すしかないのです。
以前にこんな言葉を教えていただきました。「他の誰もあなたの足を引っ張ってはいない」。自分の心が、自分の思いが、自分の足を引っ張っていることのほうが圧倒的に多いのだそうです。
私もこの言葉にとても共感しました。過去の自分を振り返って、私にも当てはまっているなと感じました。なんだかうまくいかない、一歩を踏み出せない。そう感じるときは、自分の心がブレーキを踏んでしまっているのかもしれません。
学んだらとにかく実践行動、そしてアウトプットが重要です。同じように学んでも加速的に成長する人は、自分が学んだことをアウトプットしています。家族や部下・後輩に伝えたり、ブログにまとめたり、SNSに書いたり...。
頭でわかっているつもりでも、実際にやってみたり、自分の言葉で説明をしたりしようとすると、「あれ? これってどういうことだっけ?」とわからなくなってしまうことがよくあります。人に教えようとすることで、自然と自分の中での理解が深まっていきます。人に教える人が一番成長できるのです。
実践行動に移せない人は「他責思考」である
自責か他責か―。この思考の差は、人生の方向性に大きな差を生みます。ハッキリと申し上げれば、他責思考の人は、永遠に自分の人生に満足することはできません。なぜならば、人生の舵取りを他者にまかせているからです。
自責思考とは、すべて自分の責任であると捉え、問題を解決しようとする姿勢です。逆に他責思考とは、問題の責任を自分以外の誰かや何かに求め、相手のせいにして物事を捉える考え方です。
同じ現象に遭遇しても、自責思考の人と、他責思考の人は見えている世界がまったく違います。私たちは現実をありのままに見ているのではなく、自分の考え方や思考をもとにつくられたフィルターを通して、世界を知覚しています。
自分の見たいように見て、聞きたいように聞いているため、根本的な思考を変えないことには、目の前の現実が変わる(変わって見える)ことはありません。
私は仕事柄、女性たちの人生相談も多く受けますが、驚くほど多くの人が他責思考です。上司が、夫が、姑が、地域が、日本の制度が...。そのせいで人生がうまくいかないと文句を言っても、状況はひとつも良くなりません。「それで、あなた自身はどうしたいんですか?」と尋ねると、黙り込んでしまう人もいます。
今、日本には他責思考がより深く蔓延しているのではないかという危機感を抱いています。2021年には「親ガチャ」という言葉が、ユーキャンの新語・流行語大賞のトップ10にノミネートされました。親は自分で選ぶことができず、当たりやハズレがあり、それ次第で人生が決まってしまうという認識が広がっているのです。
特に親や上司は選べないこそ、他責の温床になりやすい傾向があります。スタートラインが人によって異なることは事実です。
裕福で何不自由ない暮らしができ、家族は自分の挑戦を応援してくれるような家庭もあれば、お金もなく、なんの罪もない子どもが育児放棄やDVに苦しんでいるような家庭もあります。会社でも、あなたの成長を心底応援してくれるような上司がついてくれることもあれば、利己的で部下の足を引っ張ろうとするような上司の下に配属されることもあります。
それぞれ後者は、「ひどい」環境であることはその通りです。それであっても、やはり矛先は自分に向けてほしいのです。
成功は運の良さ、失敗は自分のせいだと捉える
物事がうまくいったとき、その成功は自分の力で引き起こしたのだとつい考えてしまうことがあります。反対に、うまくいかなかったときには「あの人が〇〇したから」「環境がダメだったから」と他人や周囲の環境のせいにしてしまうこともあります。
そんな気持ちは誰の心の中にもあるものですが、もっと強い運を引き寄せたいと願うのであれば「成功は運の良さ、失敗は自分のせい」と、いつも謙虚に捉えましょう。
まず、なにか物事がうまくいった場合のことを考えてみます。「自分の力でうまくやれた!」「私ってすごい!」そう思った瞬間に慢心や驕りが出てきます。そして、そこに油断や手抜きが生まれ、結果として、失敗を招くのです。
今の現実は過去の努力と運の結晶です。今の努力を怠れば、未来はどうなるでしょうか? 手を抜いたツケは必ず回ってきます。慢心や驕りは自分では気づきづらいからこそ、とても怖いものなのです。
私は父から「驕りたかぶったらあかん。今日お前があるのは、支えてくれた人のお陰や。感謝の心を忘れたらあかん」と言われ続けてきました。自分1人で大きくなったわけではありません。どんな成功も、必ず周囲で支えてくれた人の存在があります。自分自身は気づいていない、目に見えないところで必死に応援してくれている人もいます。
父の言葉を深く、深く、深く胸に刻んでいるはずなのに、それでも無意識に驕っていたことに気づかされることがいまだにあります。「絶対にこうに決まっている!」「こっちのほうが正しいに決まっている!」という善の押し付けも立派な驕りです。まだまだ私も反省することがたくさんあります。
成功にあぐらをかき、驕りたかぶった瞬間、人はあっという間に落ちていきます。「周囲の人たちのおかげで、運が良かったからうまくいった」そんな謙虚な心を忘れず、過去の成功体験に固執せずに、未来のために努力しましょう。
また、物事に失敗したときは、自分に原因があったのではないかと見つめ直すことで、次回へ向けた改善をすることができます。仮にどんな不測の事態が起こったとしても、どんな理不尽なことがあったとしても、「あのとき自分はこうすればよかったんじゃないか?」と反省すべき点がまったくないことはあり得ません。
自分が悪いと責める必要はありませんが、状況を冷静に踏まえたうえで、「じゃあ自分はどうすべきか?」を考えることが大切です。
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