医師が教える「熱中症になりやすい人」の特徴 高齢者に加えて注意すべきなのは?
PHPオンライン衆知 / 2024年6月27日 12時0分
熱中症で重症になる人がいちばん多いのは梅雨明け直後の時期。本格的な夏にそなえて、「熱中症予防」と「夏の冷え対策」を医師の山口順子さんが解説します。
※本稿は、月刊誌『PHP』2024年7月号より、一部編集・抜粋したものです。
「熱中症」になる人が増えている
2010年ごろから、熱中症になる人が急増しています。記録的猛暑だった2018年には、全国で約9万5千人が熱中症で救急搬送され、昨年2023年にも約9万1千人が救急搬送されています。また、近年は100人前後の人が熱中症で亡くなっています。
どういう人が熱中症になりやすい?
下記に当てはまらなくても、体調や環境しだいで誰もが熱中症になりえます。「自分は大丈夫」と油断せずに、気をつけましょう。
・高齢者...体の水分量が少なく、暑さやのどの渇きを感じづらい。
・子供...汗を出す汗腺が未発達で体に熱がこもりやすい。
・胃腸炎の人、睡眠不足の人...夏場に胃腸炎などで脱水状態になると熱中症になりやすい。睡眠不足の人も暑さに影響を受けやすくなる。
・肥満体質の人...脂肪によって熱が放散されにくい。
・心臓や腎臓に持病のある人...体の水分バランスの調整に関わる臓器に病気を持つ人は要注意。
・暑熱環境で仕事をする人...屋外はもちろん、屋内でも高温多湿の環境で長時間働く人は注意しましょう。
・心臓や腎臓に持病のある人...体の水分バランスの調整に関わる臓器に病気を持つ人は要注意。
・体に障害のある人...循環機能に影響がある場合は、熱中症にならないように、より注意が必要です。
熱中症予防のポイント
体がまだ暑さに慣れていない時期に急に気温が上がると熱中症が増える傾向があるので、特に注意が必要です。重症になる人も多くなります。
・衣服
汗を吸収し、首回りや袖の開きが大きく熱を逃がしやすい服装にしましょう。帽子をかぶったり、日傘をさしたりして直射日光を避けるのも効果があります。
・水分、塩分補給
のどが渇いてからではなく、こまめに水分をとりましょう。一つの目安として、尿の色がふだんより濃い場合は体の水分量が少なくなっている可能性があります。塩飴を舐めたり、経口補水液を飲んだりして、塩分や電解質などを補うことも大切です。
・エアコンの活用
室温が26~28℃くらいになるようにエアコンの設定温度を調整しましょう。カーテンなどで直射日光をさえぎると、室温の上昇を抑えることができます。室内の場所によって温度がちがうこともあるので、自分がいる場所の近くに室温計を置いて、室温を確認するとよいでしょう。
※室温計はデジタル表示で大きくて見やすいものがおすすめ。
・熱中症アラートをチェック
熱中症の危険性が高くなると予想される場合、環境省・気象庁から「熱中症警戒アラート」が発表されます。ニュースの天気予報などでこまめに確認しましょう。「熱中症警戒アラート」を通知してくれるスマートフォンの天気予報アプリなども活用しましょう。
・熱中症になりやすい人を注意して見守る
高齢者は暑さを感じづらいため、周囲の人が様子を観察し、室温を調整するなど援助してください。また、子供は身長が低く、地面の輻射熱の影響を受けやすいため、夏場の外出時には注意が必要です。大人は平気でも、ベビーカーに乗せた赤ちゃんの高さは高温になっていることも。
◎どうしても暑い屋外に出なければならない場合
睡眠をしっかりとり、体調に異変がないことが大前提です。涼しく、日差しを体に受けにくい服装で外出しましょう。屋外の活動では、あらかじめ休憩時間を決めて、体がつらくなる前に休むことが必要です。もし不調を感じた場合は作業を中断し、涼しい場所で安静にすること。そのまま問題がなかった場合でも、翌日は活動を控えるなど、注意深く体調管理をしましょう。
あれ、熱中症かも?と思ったら
熱中症の応急処置
①涼しい場所に移動する
エアコンの効いた室内や、屋外なら建物の陰や木陰など、なるべく涼しい場所に移動しましょう。
②体を冷やす
衣服のボタンを開けたりベルトをゆるめたりして、体の熱を逃がしましょう。氷や冷えたペットボトルなどで首の周りやわきの下、脚の付け根などを冷やすのも効果的です。霧吹きで体を濡らし、うちわであおぐなどして気化熱で熱を逃がす方法も効果があります。
③水分・塩分を補給する
水よりも、塩分などを含んだスポーツドリンクや経口補水液のほうが、体にすみやかに吸収されます。
※これらの対処で症状が改善しない場合は、ためらわずに救急車を呼び、救急隊員や医師など専門家の指示を仰ぎましょう。
「夏の冷え」にもご用心
人間の体は、自律神経のバランスによって血圧や体温が一定の範囲に保たれています。夏の暑さに加えて、エアコンや扇風機の風による冷えが自律神経を乱し、不調の原因になることも。体が冷えすぎないよう気をつけることが大切です。
【心がけたい、夏の冷え対策】
・エアコンで室温を一定に保つ
熱中症を防ぐためにもエアコンは適切に使用するべきですが、冷やしすぎはよくありません。急激な温度変化が体へのストレスになることもあります。熱中症予防のポイントでも述べたように、26~28℃を目安に室温を一定に保つようにしましょう。
・温度調整のしやすい服装を
一般的に女性は男性に比べて筋肉量が少なく、熱の生産量も少なくなるため、エアコンの効いた場所では冷えやすくなります。カーディガンやストールなど、冷えを感じた際に羽織るものを準備しておきましょう。
・消化によい食事をとる
暑いからといって冷たいものをとりすぎないようにしましょう。また、夏は気分が開放的になり、つい飲みすぎ食べすぎになりがちですが、暴飲暴食が体調を崩すきっかけになることも。食事は消化のよいものを中心にして、お酒はほろ酔い程度にしておけば、自律神経の安定にもプラスになります。
・ぬるめのお風呂で入浴
夏はシャワーだけですませる人もいますが、37~39℃くらいのぬるめのお風呂にゆっくりつかるのがおすすめです。リラックス効果があり、睡眠の改善にもつながります。
・夏こそしっかり睡眠を
日が長い夏は夜ふかしをしがちですが、睡眠時間をしっかりとりましょう。近年は熱帯夜になることも多いので、睡眠の質を保つためにも、エアコンは夜通しつけておくのがベターです。
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