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「一生幸せでいられるように」下半身が動かない“殺処分寸前の猫”を保護した決意

PHPオンライン衆知 / 2024年8月8日 16時50分

らい

6匹の保護猫たちと暮らす晴さん。そのうちの一匹、"らい"は交通事故に遭い下半身が動かない状態で保護されました。下半身のハンデをものともせず明るく活発な性格のらいに、晴さんが抱く特別な想いとは。

また、SNSでも話題になった、認知症になった柴犬"しの"の介護をしていた猫の"くぅ"。しのが亡くなってから、寂しそうに過ごすようになったくぅを一番そばで支え、元気を取り戻すきっかけを作ったのはらいでした。

今年2月に『らい 下半身不随の猫』が出版され、らいとの出会いから現在に至るまでが綴られています。そんな晴さんに改めてらいとの出来事や、保護猫たちとの暮らしについてお話をお聞きしました。

 

交通事故に遭い、殺処分寸前だったらい

下半身不随の猫 らい

――らいちゃんとはどのように出会ったのでしょうか?

【晴】らいは、2018年2月、Instagramに届いたダイレクトメッセージが出会いのきっかけでした。一匹の猫が交通事故に遭って、保健所に収容され殺処分寸前の状況を拡散してほしいと。期限はあと2日。これから引き取り手を見つけるのは難しいと判断し、うちで預かると決めてメッセージを返しました。

その頃、しのの介護もあってすぐ迎えに行くことができなかったので、現地のボランティアさんが保健所から引き出してくれて病院で手術を受けることになりました。無事に抜糸まで終わり、らいが保護されている山口まで、広島から片道2時間の道を迷いながら4時間かけて迎えにいきました。

出会ったときは、とても人懐っこい子という印象でしたね。ケージの中で横になっていたらいを見て、下半身不随というハンデを負い不自由なこと、辛いこともあると思いますが、この子が一生幸せでいられるように頑張ろうと思いました。せっかくうちで引き取るので。うちの子になるからには、幸せに過ごしてほしいので。

 

3、4時間おきの圧迫排泄

圧迫排泄中のらい

――下半身が動かなくなってしまったらいちゃんですが、お世話はどのようなことが大変でしたか?

排泄が難しかったです。引き取りに行ったときに、一度だけ膀胱を押さえておしっことうんちの出し方を教えてもらったんですけど、すぐには難しくて。らいも嫌がって動きますし、慣れるまで時間がかかってしまいました。

感覚はなくても、やっぱり押される圧迫感があったんだと思うんです。毎日6時間おきの圧迫排泄で、最初はもう嫌がったんですけど、毎日続くことですから最終的には諦めてどうぞって感じでしたね。

おしっこの後にみんなのご飯を食べさせていたので「おしっこが終わったらご飯」というのを覚えたんでしょうね。だから今は、自分からベッドを出てスタンバイしてます笑

また、最初は自分でも体の動かし方がよくわかってなかったみたいで、よく後ろ足が交差したり、絡まったりしてたんです。それをほどくことも意識的にやっていました。

さらに同じ方向に足先がずっと向いたまま何時間もいたりすると、褥瘡(じょくそう)の恐れもあったので予防するために右左交互に足をずらしていました。

現在は、3,4時間おきに圧迫排泄をしています。ごはんに水を含ませているで、おしっこが溜まりやすいんですよね。なので膀胱がいっぱいにならないように気を付けています。その後、体位交換もしてあげていますね。

大変ではあるのですが、当たり前のことになっています。3歳の子どもが外出先で帰りたくないとぐずっても「らいちゃんのおしっこを出さないといけないから」と言うと素直に帰ってくれるようになりました。おしっこを出さないと病気になってしまうと教えたことを覚えてくれたんですね。

 

 

らいとくぅの出会い

らいとくぅ
らい(左)、くぅ(右)

――らいちゃんがお家に来たとき、先住猫たちはどのような反応でしたか?

【晴】最初はケージの中にいるらいを外から静かにじっと見ていました。そのときは多分新しい子が来たんだなっていう感じで、全然気にはしてなかったようなんですけど、ケージから出して前足だけで歩くらいを初めて見たときはびっくりして逃げていました。

くぅも驚いていたと思うんですが、2匹はすぐに仲良くなってよくおもちゃの取り合いをしてました笑

――Instagramを拝見すると、らいちゃんはとても表情豊かで、性格はくぅちゃんに似てるのではないかと思ったのですが...

【晴】らいは目力もすごくて、いつも何か言いたげな顔をしていますね。性格はちょっとくぅとは違うかもしれません。確かにフレンドリーで明るくて行動的で抱っこが大好きなのは一緒なんですけど。でもなんか違うんですよね。

らいの方が野良時代が長かったせいか分からないんですけど、自立してる感じで。くぅは甘えん坊の末っ子、らいは空気の読める長男というイメージです笑

元々賑やかではあったんですが、らいが来てもっと賑やかになりました。しのの介護で私もヘロヘロでしたが、らいがドタバタ面白いことをやって笑わせてくれるので癒しになりました。

らいは後ろ脚のハンデを感じさせない、前向きな頑張り屋さんです。私にとってらいは癒しであり、守るべき大切な存在ですね。

 

柴犬・しのの介護を見よう見まねで手伝ってくれた

らい くぅ しの
サークルから顔を出す柴犬のしの、寄り添うらいとくぅ

――本の中でらいちゃんも、しのちゃんの介護に参加していたのが印象的でした。

【晴】最初は、サークルの中を歩き回っているしのと触れ合いたい感じでずっと眺めていました。

ある時、しのがたまたまらいの前で立ち止まったんですね。らいは嬉しそうにしのにスリスリしていたんですけど、しのが段々体勢を崩してしまって。そうしたら、らいはそれ以上しのが倒れていかないように上半身でグーっと支えてくれていました。

くぅが介護しているのを観察して、やり方を覚えたんだと思います。自分も後ろ足が不自由なはずなのに、びっくりしました。前足だけでしのを支えていてムキムキでした。くぅもそれをサークルの中から見守っていました。

――他の猫たちは、しのちゃんの介護にはあまり関わってこなかったんですか?

そうですね。しののことが大好きなハチワレの子もいるんですが、サークルの中に入って様子を見るだけで。他の子たちも、くぅやらいみたいに支えたりすることはなかったですね。

 

しのが亡くなり、塞ぎこんでしまったくぅ

――2018年3月、しのちゃんを看取った当時のことを教えてください

【晴】しのは2018年3月7日に亡くなりました。動物病院から連れ帰り、いつも使っていたベッドに寝かせると、猫たちが代わるがわるそばにやって来ました。まるで、別れのあいさつをしているようでした。その中で、くぅだけは怯えたように遠くからしのを見ているだけで、どうしても近づけないようでした。でも、翌朝そっとしのに近づき、じっと顔を見つめた後、少しの間そばに寄り添いました。それが、くぅとしのの別れのあいさつになりました。

――その後のくぅちゃんの様子は...?

【晴】他の猫たちを遊びに誘ったり甘えたり、食事は1番に駆けつけたりと活発なくぅが、誰もいない場所でひとり静かに寝ていることが多くなりました。私にも甘えることをしなくなり、声をかけても撫でても反応はあまりなく、体を丸めて1日を寝て過ごしていました。

実はしのが亡くなる3ヶ月ほど前から、ひどい便秘と難治性口内炎を併発し、腎臓の数値も悪化し始めました。敏感なくぅは、匂いなどから大好きなしのの命の終わりを予感して、それが強いストレスとなって体調を崩したのだと思います。しのが亡くなった後も、ひとつの症状が治ったら次の病気を発症する...を繰り返し、通院と投薬が欠かせませんでした。

 

寂しそうなくぅに、真っ先に寄り添ったらい

くぅ らい

――ご著書では、塞ぎ込むくぅちゃんに対して、らいちゃんが寄り添ってケアをしていたとありますね。その時のらいちゃんや、他の猫たちはどんな様子でしたか?

【晴】しのがいない寂しさと体調不良で、いつも悲しそうな瞳でひとり過ごすようになったくぅを、猫たちはどうしたらいいのかわからず戸惑ったように遠巻きにしていました。

しかし、らいはそーっとくぅに近づいて後ろにさりげなく控えたり、くぅの顔や頭を優しく毛づくろいして慰めてあげていました。

そんならいのやさしさが通じたようで、少しずつ以前のようにらいの側でくつろぐくぅの姿が見られるようになっていきました。

――らいちゃんが率先して慰めてくれたんですね。

【晴】はい。それからは、くぅのお世話と見守りがらいの日課になりました。くぅが甘えてらいのベッドに入っていくと、場所を半分譲ってくぅが満足するまでせっせと毛づくろいし、その後くぅが寝るまで見つめながら添い寝をしたり、くぅがポツンとひとりでいると、心配そうに近づいて体調確認の匂いチェックをしたり。

そこに他の猫たちも加わって、くぅのまわりは賑やかになりました。

やさしい日々の中で、少しずつ悲しみが癒えていくと同時に、暗かった瞳に光が宿るようになりました。くぅはまたみんなと一緒に過ごすようになり、いつものまったりのんびりした日常が我が家に戻ってきました。

 

 

保護猫たちと暮らす工夫

らい

――晴さんは現在、6匹の猫たちと暮らしているのですよね。その生活などについて教えてください。いつ頃から保護猫、保護犬と暮らすようになったのですか?

【晴】30代前半くらいからですね。ちっちゃいときから動物は好きだったんですけど、実家では父は猫が苦手で、母は犬が苦手だったので、小動物だけ飼っていたんですね。20代後半で父が亡くなったあと、寂しいから猫が飼いたいと母に相談されました。その頃、たまたま職場に野良猫がやってきて、その子を引き取ったのが最初です。

1匹保護したら半年後くらいにまた職場に子猫を連れてくる人がいたり、家のまわりに猫が居つくようになったり、気づいたら数が増えていました。

――保護猫だと、やっぱりすぐ人に慣れてくれない子もいるのではないでしょうか?

【晴】中には家の中で息をひそめ近づくとシャーシャー言う子もいますね。そんなときはもう向き合い続けるしかないと思って、優しく穏やかな声でひたすら話しかけます。これからここで暮らすから、ずっと一緒にいようねって繰り返し繰り返し伝えるようにしています。

すると段々警戒心も薄れてきて、表情も緩んできてくれます。もう根気ですよね笑

――大勢の猫と暮らすうえで、何かコツはあるのでしょうか?

【晴】他の子と仲良くしたがらない子には、押し入れや高い場所にその子専用の居場所を作ってあげていますね。猫同士で場所の取り合いにならないように、沢山寝床は用意しています。

黒いメス猫がいるんですけど、オス猫が大嫌いなんですよ。でも、他の猫たちはその子のことが大好きで、よく追いかけ回されているんですね。それがあまりにしつこい時は止めに入ったり、撫でたり膝に乗せてブラッシングしたり、なるべく触れ合う時間を持ってストレスを溜めないようなケアを意識的にしています。

――お子さんは、生まれた頃からずっと猫と一緒なんですよね。いま3歳とのことで、少しずつ物事が分かるようになってくるお年頃だと思うのですが、どのような反応を示しているのでしょうか?

【晴】猫や犬、小さい子にも優しくできるようになりましたね。自分より小さい子どもが好きになってくれて、おもちゃとか順番を譲れるようになりました。あとは、外出から帰ってくると、らいや他の猫たちが出迎えてくれるのは嬉しいみたいです。

昨年も新しい猫を1匹迎えたのですが、その時も大喜びして構いすぎちゃって嫌がられていました笑 猫によっては子どもを見かけると逃げてしまったり、苦手意識のある子もいますね。にことうたという2匹の猫は、子猫の時から一緒に居るからか、子どものことが大好きみたいです。

(取材・執筆 PHPオンライン編集部 片平奈々子)

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