売れ残る物件の特徴とは? 資産性が下がる「リノベーション」の落とし穴
PHPオンライン衆知 / 2024年8月1日 11時50分
マンションの価格高騰が止まらず、都心のマンションを中心にバブル期超えの最高値を更新している。しかしその中でも、資産性を維持できる「選ばれるマンション」と資産性を落とす「選ばれないマンション」の物件格差がかつてないほど広がっているという。本稿では、マンションをリノベーションする際の注意点について、書籍『マンションバブル41の落とし穴』より紹介する。
※本稿は、長嶋修著『マンションバブル41の落とし穴』(小学館)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
リノベーションをするときの6つのポイント
長く住んでいると家族構成が変わり、住んでいる人もだんだん年齢を重ねていきます。30歳から住み始めて30年経ったら60歳になるわけですから、子どもは巣立ち、自分たちのライフスタイルも変わっていくなかで、使い勝手を良くするためにリノベーションを考える機会は増えるはずです。
これから買うなら可変性が高く、リノベーションをしやすい物件を選ぶことをおすすめします。いつか物件を売るとしても、可変性の高さはセールスポイントになるでしょう。
逆に可変性が低く、リノベーションが難しい物件を選んでしまうと、後々「こんなはずじゃなかった」と後悔することになるかもしれません。あまり知られていませんが、世の中には意外とリノベーションが難しい物件が多いのです。リノベーションをするときには次のポイントをチェックしてください。
①階高が3m程度ある
階高とは、床スラブから上階の床スラブまでの距離のこと。スラブとはコンクリート製の構造床のことです。天井裏や床下には給排水管や電気配線などを通すためのスペースが設けられるため、階高は室内から見た天井高よりも高くなります。階高が3m未満だと、リノベーションで床を上げることになったときなどに圧迫感が出るため、思うように工事ができなくなるリスクがあります。
②二重床・二重天井になっている
コンクリートのスラブの上に、直接フローリングなどの仕上げをした床を「直床」と呼びます。これに対しスラブ面と仕上げをした床の間に空間が空いている床を「二重床」と呼びます。同様に、天井スラブに直接仕上げがしてあるのが「直天井」、空間が設けられているのが「二重天井」です。
直床や直天井だと空間がないので、最初に設置した照明器具の電気配線や給排水管を移動するのが難しくなります。その点、二重床や二重天井はこれらの移動が比較的簡単で、間取りの変更がしやすいと言えます。
③床に段差がなくフラット
段差がある場合、高いところは下に給排水管が通っていて、低いところは直床というパターンがあります。この場合も給排水管の移動は難しく、リノベーションで水回りの位置を移動するのが困難なことがあります。
水回りは移動しないとしても、子どもがつまずいたり、高齢になったときに使いづらくなったりすることも考えられるため、床はなるべく段差がなく、フラットなほうがベターです。
④室内に梁や柱型がない
天井に沿ってが突き出していたり、部屋の隅に柱が張り出していたりすると、家具を置く場所が限られてきます。最近では柱や梁を室外に出すアウトフレーム工法といった技術もよく採用されているため、このようなすっきりとした工法で作られている部屋が望ましいでしょう。
⑤排水管が床スラブの上を通っている
排水管は床スラブの上を通っている場合が多いのですが、古い建物だと床スラブを貫通し、床スラブと下の階の天井の間に排水管が通っていることがあります。この場合、下の階の天井裏を解体しないと配管が交換できない場合があり、非常にメンテナンスがしづらいため、極力避けたほうがいいでしょう。
⑥パイプスペース(PS)が部屋の隅にある
物件の間取り図によく書かれている「PS」の文字。これはパイプスペース(またはパイプシャフト)の略です。給排水管やガス管を収める場所で、基本的には移動できません。PSが部屋の外や端のほうの邪魔にならない場所に設置されているのが理想ですが、物件によっては微妙な場所に設置されていて、間取り変更が制限されるケースもあります。
さて、ここまで可変性という観点から見た主なチェックポイントを挙げてきました。新しいマンションは、基本的には可変性を考えた作りになっている場合が多いため、問題になりがちなのは築古の物件です。
通常のマンションは、管理規約に専有部の改修細則が定められていますが、古い物件になると、きちんと定められていないことも。リフォームはマンションの知識の乏しい業者が行う場合もあるため、規約など気にせず工事してしまい、後々騒音だの違反だのトラブルになりがち。せめて規約の細則がどうなっているかは事前に確認しておきましょう。
細部までこだわったリノベ物件は高く売れるのか?
資産性を極力落とさずにリノベーションするポイントも押さえておきましょう。基本的に、リノベーションは自分のライフスタイルに合わせて行えばいいのですが、こだわりを詰め込みすぎると、かえって市場流通性が低下する恐れがあります。
たとえば、人気のアイランドキッチン。こだわって作る人が多い一方で「アイランドキッチンは使いづらい」という意見も根強いもの。よって、アイランドキッチンにこだわると、市場流通性が大きく下がる可能性があります。
50㎡以上あるのにワンルームのような極端な間取りも敬遠されます。物件を探す際には物件情報サイトで検索条件を設定しますが、そのときに「専有面積50㎡以上」、間取りは「ワンルーム」で物件を絞り込む人はあまりいないでしょう。
そのため、多くの人の目に触れづらくなり、売れにくくなっていくのです。さくら事務所のグループ会社、らくだ不動産でもこのような物件の売却相談を受けましたが、妥当な価格だったにもかかわらず、なかなか売れなくて苦戦したことがあります。
過剰に広いワンルームのようにその場所で生活することを想像しにくい物件よりも、ここが寝室、ここがリビングでソファを置いてくつろぐ場所、ここが子ども部屋──などという具合に、わかりやすく生活風景が思い描けるような物件のほうが、売れるのは早くなります。
加えて、市場流通性が高くなるのは、やはり可変性のある物件です。仮に広いワンルームだったとしても、簡単に壁を取り付けて部屋を仕切れるスライディングウォールを付けられるようにしておき、必要に応じて二部屋に分けられるようにしておけば、引き合いは強くなるでしょう。
一方で、多くの人に刺さりそうなコンセプトがあることも売りになります。ちょっとしたスペースに書斎を作って「ワークスペース」のある物件であることを売りにする。狭くても書斎を持ちたいというニーズは多いので、目を付けられる可能性は高まります。
逆に、コンセプトを明確にせず、中途半端なサイズの部屋を物置代わりにしていて、何の説明もなく売り出すと、「これ、何の部屋?」「もったいない間取りなのでは?」という印象を与え、売れづらくなってしまいます。
昔は収納が少ないマンションも多くありましたが、今は収納が充実していることもマスト。自己流にリノベーションすると収納が少なくなることがままありますが、それだけで売れにくくなるのは必至です。
生活動線も重要です。たとえば、キッチンと脱衣所、洗面所がつながっていて回遊できるような間取りや、すべての水回りが一直線上にあり、移動がしやすい間取りだと、家事動線としては秀逸。逆に動線が複雑だと、微妙に毎日の暮らしが不便になることが容易に想像できるため、やはり敬遠されてしまいます。
意外と考えない人が多いのですが、リノベーションする際には周囲の住戸への配慮も忘れてはいけません。たとえば下の階の寝室の真上、もしくは隣の部屋の寝室に接する部屋に子どもがドタドタ走り回るような部屋を持ってきたら、騒音で苦情が来るリスクが高まります。基本的には下の階のことを考えるなら水回りの上に水回り、リビングの上にリビング、と揃えたほうが無用なトラブルを生みにくいでしょう。
また、今後増えてきそうなのがタワマンを買ってリノベーションするケースです。タワマンのリノベーションで気をつけたいのは、業者選びです。
タワマンには、普通のマンションとは異なる特性がいくつもあります。たとえば住戸間の壁には、軽量化のためにコンクリートではなく乾式壁が採用されています。石膏ボードの間にグラスウールを挟んだ壁で、防音性は一定保たれますが、どうにかして破壊しようと思えば、破壊できてしまう程度の強度です。
しかしタワマンに不慣れな業者だと、コンクリート壁と同じような感覚で作業をしてしまい、壁を破損したり、隣の住戸に被害を及ぼしたりした事例も。
加えてタワマンは搬入経路が複雑だったり、管理規約や使用細則で定められているルールが複雑だったりするケースもありがちです。高層階だと工事期間中エレベーターでの移動に手間がかかり、ずっとエレベーター一基をふさいで住民に苦情を言われることもあるかもしれません。
今後、タワマンのリノベーション案件は加速度的に増えると考えられます。慣れない業者が工事をするともめ事が頻発し、大きな問題になることも考えられるのです。
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