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彬子女王殿下が、京都の街で「好きな通り」は、寺町通

PHPオンライン衆知 / 2024年8月24日 7時50分

梨木神社

古都であり、現在では世界でも有数の観光都市となった京都。

ただ、京都の街には、観光客がよく訪れる建造物や飲食店だけでなく、京都人たちの日常の雰囲気が感じられる通りもたくさんあります。

京都にもお住まいがある彬子女王殿下にとって、京都は「散歩に適した街」で、「どこを歩いても楽しい」とのことで、なかでも、有名な寺町通がお好きだそうです。

では、その京都市内を南北に走る寺町通でも、一番お好きなのは、どのあたりなのでしょうか。

※本稿は、彬子女王著『新装版 京都 ものがたりの道』より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

京都人の日常が感じられる「寺町通」

歩くことが好きだ。平坦な道であれば、2時間でも3時間でも平気で歩く。電車一駅、二駅分歩くのは日常茶飯事。学生のころは、ときおり赤坂の宮邸から目白の大学まで歩いたりして、よく側衛さんを泣かせていた。

普段車で通っているよく知った道でも、歩いてみるといろいろなことに気付かされる。「あ、こんなお店ができている」「この道を通るとここに出るのか」そんな小さな発見が幸せな気分にしてくれる。そんな散歩が大好きである。

京都は散歩に適した街だと思う。道は東西南北碁盤の目で、基本的に真っすぐだし、たとえ間違えても軌道修正するのは簡単である。道が一本違うだけで、雰囲気ががらりと変わるのも楽しい。最近忙しくてなかなかできなくなってしまったけれど、お天気の良いお休みの日は、いろいろな通りをぷらぷらと行き先も決めずに歩いたりする。

京都で暮らし始めてずいぶんとたった今でも、意外な場所に「○○藩の藩邸跡」とか「△△の御墓」を見つけたりして、ふとした瞬間古の時代に思いを馳せ、時間旅行の気分を味わえるのである。

どこを歩いても楽しい京都の街の中で、私が好きな通りがある。寺町通。京都市内を南北に走る通りで、豊臣秀吉が京都の街の防衛のために、通りの東側に寺院を集めたことからこの名がついたと言われている。

今出川通より北は本当にお寺ばかり。住宅街の中にお寺や神社がさりげなく溶け込みながら点在しており、お祭りのお神輿の担ぎ手の集合時間を知らせるチラシなどがそこかしこに貼ってあったりする。

観光客がたくさん訪れるお寺ではなく、本当に京都に住む人たちのためのお寺。そんな「日常」の雰囲気がとても心地良い。今出川通を越えると、より京都人の日常に近づく。山紫水明の地として名高い京都。

「京の三名水」と言われる染井 、佐女牛井、縣井のうち、唯一現存する「染井」が境内にある梨木神社がある。1000年以上前から今も変わらずこんこんと水の湧き続ける染井。その水は、甘くまろやかでお茶を淹れるととてもおいしい。

京都御所に隣接し、木々が鬱蒼と茂る境内地に足を踏み入れると、夏でも少しひんやりとした風を感じる。参拝のついでに喉の渇きを癒していただくのもよいかもしれない。

梨木神社の向かいには紫式部の屋敷跡と伝えられる廬山寺や、同志社大学の創設者である新島襄の旧邸もある。平安時代から明治時代、そして現代と、さまざまな時代の流れが混然一体となって体感できるのも京都の街の魅力のひとつなのだろう。

 

ついふらりふらりとお店に吸い込まれて

寺町通をさらに下がる。この丸太町通から御池通までの区間が私は一番好きかもしれない。お茶屋さんや紙屋さん、お花屋さんやパン屋さんなど、京都の人たちが普段着で立ち寄るようなお店が並んでいる。

ついふらりふらりとお店に吸い込まれては店内を一周。買う予定のなかった品物を買って、でも何だかほくほくしながらお店を後にすることがしばしばである。背伸びをしなくてよい、その空気感は、せわしない毎日の中に、ほっと楽に呼吸ができる時間を取り戻させてくれるのである。

散歩の途中、お気に入りの喫茶店に入って、珈琲を飲みながら道行く人をぼんやり眺めるのが私にとっては最高の贅沢。ときにはゆっくり読みたい本を持っていき、2時間3時間と腰を落ち着けてしまうこともある。

御池通を過ぎると、寺町通はアーケードの商店街になる。ここに入ると一気ににぎやかになり、明るい電飾のお店が増える。若い人が訪れるファッションのお店や雑貨屋さん、ゲームセンターなどもあれば、仏具屋さん、画廊や古書店、伝統的な組紐や袱紗のお店などもある。なんだか雑然として少しせわしない。

でもたくさんの人たちがからからと笑いながら行きかう、ちょっとキッチュで明るい雰囲気が、いつのまにやら癖になる。アーケード街が終わると、また寺町通は雰囲気をがらりと変える。秋葉原のような小規模の電気街になるのである。大型量販店の台頭で姿を消しつつあるが、小売りの電気店もなかなかに味わいがあるものだ。

聖から俗へ。寺町通をひとことで表現するのにこんなに適した言葉はないかもしれない。お寺ばかりの北から電気街の南へ。歩いているうちに刻一刻と変わっていくその空気感。でもそこには一貫して、よそ行きでない京都人の素顔が見えるのである。

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