フランス人がマルシェで野菜を買う時に「値段よりも重視すること」
PHPオンライン衆知 / 2024年8月5日 12時0分
美食大国として知られるフランスにあって、「食通の街」として名高いリヨン。そのリヨンでフランス人の夫と3人の子どもたちと暮らすロッコさんに、食にうるさいフランスの人たちがマルシェで野菜を買う時に重視していることを聞きました。
※本稿は『主役はいつも"私自身"フランス人に学んだ「本当の感性」の磨き方』(大和出版)より一部抜粋・編集したものです。
日本とフランスの共通点は、食文化の豊かさ
フランスに住むメリットはいくつもありますが、なんといっても食事がおいしいことでしょう。外食だけでなく、国産の食材が充実していることも、私にとっては嬉しいです。
ある日、フランス人の友人が、日本出張から帰って来て、目を輝かせながら話しはじめました。観光名所の美しさはもちろんのこと、日本食には特に感動したと言うのです。確かに、日本とフランスのどちらも食にはこだわりがあり、食文化に誇りを持っています。
さらに、伝統行事やそれにまつわる食事を大切にしていることにも気づきます。日本はお正月のおせち料理、フランスはクリスマスの豪華な料理など、食は離れて暮らす家族を繋ぐ架け橋だともいえますね。
フランスでも日本でも、食文化を楽しむには、その料理の背景までも大切にしたいものです。
マルシェのディスプレイはアート。生産者はアーティスト
フランスに来たら、ぜひ注目していただきたいこと。それは、お店やマルシェのディスプレイです! 商品の陳列、野菜の積み上げ、ケーキの飾り方……どれも日本にはないような発想を感じることができるからです。
ある週末のマルシェでは、こんな言葉に出会いました。
「ディスプレイは、自己表現の練習だね」。
八百屋のお兄さんの言葉なのですが、アーティストのような言葉が素敵でした。また、彼が誇らしげに話す陳列は、山のように積み上げられたミカン、赤と黄色を交互に並べた格子模様のパプリカ、収穫したままの状態で鮮度を伝えるアーティチョーク……さながらアート作品のような光景なのです。
マルシェは、新鮮な野菜を購入するだけでなく、お店それぞれの世界観を感じることができる場所でもあるのです。
欲しいのはリンゴではなく、あの人がつくったリンゴ
パンデミックでご近所の家族が自宅隔離をしたとき、「子どもがまだ小さいのに買い物ができなくて大変だろうな……」と思い、「週末、マルシェに行くけど何か買おうか?」とメッセージで買い物代行を申し出ました。
返信は、「助かる! ジルのリンゴを1キロ買ってきて」でした。
ジルというのはリンゴを生産している男性の名前で、要は、彼が作ったリンゴを買ってほしいという意味なのです。
さらには、ジルがいなかったら、ほかのリンゴは買わなくていいとの追伸もあり。
このように、マルシェの買い物は、何を買うかより、誰から買うかという考え方が浸透しています。
買い物は投票とも言いますね。
リンゴひとつでも素材のおいしさを吟味する、そして信頼できる人から購入する。そんなこだわりを改めて感じた日でした。
本場のフランス料理は質素でシンプル
私は毎週土曜日にマルシェに行くことを楽しみにしています。マルシェの活気ある雰囲気が好きですし、なにより生産者のみなさんが愛情込めて育てた野菜は、どれも味わい深く、幸せを感じることができるからです。
そんなマルシェで毎週野菜を販売しに来るマダムに、「先週のニンジン、とてもおいしかった。今週も1キロください!」と頼むと、彼女は笑いながら「私の野菜で料理がラクになったでしょう」と答えました。
私が出会ったフランスの家庭料理はどれも質素です。義母は塩コショウもせずにテーブルに、「どーん!」と炒め野菜、蒸し野菜を並べます。それは、複雑な味付けをしなくても素材そのものを楽しむ食習慣があるからなのでしょう。
おいしい出汁やソースもいい。でも野菜そのものの味も忘れないように。たまには、凝った味付けをしないで食べてみるのもいいのではないでしょうか。
フランスの夏は、サラダを楽しむ季節です。特に大ぶりの真っ赤なトマトは、定番の夏野菜。
「Coeur de Boeuf 牛の心臓」という品種に出会ったら、ぜひ購入してください。生命力溢れる味わい深いトマトです。
今回は私の大好きなトマトサラダをひとつご紹介します。
■ギリシャ風サラダ■
・トマト(一口大に切る)
・黒オリーブ(種を取り、細かく刻む)
・フェタチーズ(手で小さく崩す)
・生バジル(食べる直前にふりかける)
オリーブオイルを回しかけて、粒々の塩と胡椒でいただきます。キュウリを加えたり、トマトの半量をスイカにしたり、お好みでアレンジしてみてください。このサラダと、キンキンに冷やしたロゼがあれば、気分は南仏です。
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